オイディプスの刃 (ハルキ文庫 あ 11-1)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894567023

感想・レビュー・書評

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  • 凄いお話を読んだ気がする。解説を読んだということもあるが、ものすごく考えて作り込まれているのだと思った。妖刀次吉、香水、家族構成などこれらが複雑に絡み合い、濃密なストーリーを産み出した。まさに圧巻といった感想、最後はページを捲る手が止まらなかった。

  • 表題にもあるとおり、エディプス神話がひとつのモチーフになっている。
    夫婦に対して、夫の連れ子である長男、妻の連れ子である次男主人公、ふたりの子である三男が、
    それぞれ重なり合いつつも異なる感情を抱いている、というのが前提。
    そこに父親から母親を獲ろうとする研ぎ師が現れて……。という話。

    話自体は非常に耽美的で、おもしろいが、文体が荒いという印象。
    やけに改行も多く繰り返しも多い。
    長編と短編で文体を使いわけるタイプの作家か。

  • 謎解き要素は希薄ですが、三兄弟が名刀と香水に翻弄される様子を描いた人間ドラマは完成度が高く、耽美的で読み応えがあります。
    最近こういった独特な雰囲気を楽しむ小説は少ないので貴重な一冊だと思います。

  • 濃密な兄弟ものグハッ(吐血)

    刀と香水とか、どんだけエロなフェティッシュかって話ですよ……
    そこに愛憎まみれる兄弟の話とか絡んだらアカーン!
    興奮するしかないですね。赤江瀑恐るべし。

  • 呪われた宿業の兄弟たち。

  • ある真夏日の美しい庭の真ん中。
    赤いハンモックの上で腹を割かれ息耐えた一人の青年と、その傍らで自害を遂げた一組の夫婦。
    彼らの死に纏わり付く「妖刀」と「香水」が
    残された三兄弟の人生を絡めとっていく様を描いたミステリ。


    始めて手に取った赤江瀑さんの本でした。
    「和」への造詣が深く、伝統芸能や古美術をモチーフに扱うのが特徴の作家さん、というぼんやりとした認識しかなかったのですが
    湿り気のある妖麗な日本語の選びがとても独特で
    徹底的に世界観の完成された文章を紡ぐ人だなあ、という印象。
    あと、直接的な描写こそ無いのだけれど、物語の川底にずっと男色の気が滲んで見えていて
    それが作者の何から湧き出たものなのかは判断しきれませんでした。
    字ヅラの美しさやブレの無い美意識はとても面白かったけれど
    ぬっとりねっとりとした言葉選びや、むせ返るような雰囲気の濃厚さが、ちょっと私は好みではなかった。
    ハマる人には堪らない個性だと思います。

    父の血を引く長男は、母に。
    母の血を引く次男は、父に。
    唯一両親の血を引く三男は、また母に。
    それぞれがフロイトのエディプス・コンプレックス的な情念を抱いている様だったり
    主人公の核にある捻じれた疎外感の描写だったり
    一応ミステリの体は取られているのですが、犯人探しよりも人間の情念の移り変わりの描写に重きが置かれているので
    読み心地はふわふわと浮遊感に包まれているようでした。

    終盤、ツトムはきっと現場へ駆け付けたのだと思います。
    そこにまた関わりが産まれ、刀もヒロシへと受け継がれて行くのだろうと考えると、結構やるせない。

  • 刀と香水の呪いに苦しむ家族のものがたり。斬って斬って斬って刺して刺して貫いて刀は輝く。光に反射する。生きがいを見つける。だからこそロマンであって、恐怖ではない。それ自身に概念はなく、人間視点に意味がある。オイディプスよろしく母犯し、父殺しってやつさ。エディプスコンプレックスなんだよ。フロイトなんだよ。精神分析ばんざーい。

  • ある穏やかな夏の午後、大迫家で事件が起こる。ハンモックで寝ていた刀研師泰邦が妖刀「次吉」で斬り殺され、それを知った母が自殺をする。その後、罪をかぶるために割腹自殺で果てた父。残された異母兄弟三人は散り散りに。彼らが再びまみえた時に口を開く真実は、愛憎渦巻く、情念に溢れる各々の物語。

    目眩めく酔いを誘う耽美な文章に、終始絶えること無い妖艶な雰囲気。
    世界観を形造っている散りばめられたメタファー。
    表題のオイディプス、個人的に著者が主軸として描きたかったのだろうと思えたこのギリシャ神話を念頭に読むとまた味わいも増すだろうかと。

  • 日本刀と香水と言う小道具が効いていると思う。
    猟奇殺人の域に入るであろう事件なのに妖しくて美しくて哀しい。
    久しぶりに本棚の奥から引っ張り出してきて読んだけれどこの人の長編小説の中では一番好きかも知れない。

  • 映画から入って読んだ本。だから79年版の映画が表紙の本を持っている。死装束で化粧を施した男たちの写真はなかなかの迫力です。

    ラベンダーの香気を主旋律として、3人の兄弟の確執と母の恋と、根底から響くは血濡れた日本刀をめぐる男たちの悲劇……。
    暗く、死がまつわる話だが、しかし裏返せば生きたい、いや、死にたくないという脈動があるように思える。
    ただでは死にたくない。足掻いてもがきながら、心突き詰めた時を生きた話ではないかと思う。

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著者プロフィール

1933年下関生。日本大学芸術学部中退。70年「ニジンスキーの手」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞。2012年没。

「2019年 『オイディプスの刃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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