日はまた昇る

  • 角川春樹事務所
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894569133

感想・レビュー・書評

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  • 「酔っ払っちゃいないさ。ちょっとワインを飲んでるだけだ。ワインが好きなんだよ、おれは」
    「とにかく、酔っ払わないで。ね、酔っ払わないで、ジェイク」


     物語の最後の方で交わされる登場人物の会話。
     酔っ払ってる人間に限って「酔っ払っていない」というのは、よくある光景。そして、そんな酔っ払いに付きそう仲間も大概酔っ払ってる。口では「酔っ払わないで」と仲間に頼みながらも。
     
     “ロスト・ジェネレーション”の代表ともいえる名作。巻末の解説でも言及しているが、これは“失われた世代”ではなく、“自堕落な世代”と訳すべきなのだろう。時代の雰囲気に流される、過去から現在へと続く価値観から外れた生き方をする世代の物語。

     だからこそ、今読むべき小説なのかもしれない。
     社会、経済、文化……色々な括り方をしてみても、未来が見えない時代の流れを泳ぐためのヒントになるような気がした。
     一見自堕落なようで、そのくせ自分の足で国境を飛び越え、自由に生きる一世紀近く前の彼らの姿は、今を生きる読者の心をとらえて離さないような気がする。
     たまには酔っ払って、今歩いてる道を外れてみるのもいいかもしれない。そうしたら自分の立ち位置が改めてわかるかも。

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著者プロフィール

Ernest Hemingway
1899年、シカゴ近郊オークパークで生まれる。高校で執筆活動に勤しみ、学内新聞に多くの記事を書き、学内文芸誌には3本の短編小説が掲載された。卒業後に職を得た新聞社を退職し、傷病兵運搬車の運転手として赴いたイタリア戦線で被弾し、肉体だけでなく精神にも深い傷を負って、生の向こうに常に死を意識するようになる。新聞記者として文章鍛錬を受けたため、文体は基本的には単文で短く簡潔なのを特徴とする。希土戦争、スペインでの闘牛見物、アフリカでのサファリ体験、スペイン内戦、第二次世界大戦、彼が好んで出かけたところには絶えず激烈な死があった。長編小説、『日はまた昇る』、『武器よさらば』、『誰がために鐘は鳴る』といった傑作も、背後に不穏な死の気配が漂っている。彼の才能は、長編より短編小説でこそ発揮されたと評価する向きがある。とくにアフリカとスペイン内戦を舞台にした1930年代に発表した中・短編小説は、死を扱う短編作家として円熟の域にまで達しており、読み応えがある。1945年度のノーベル文学賞の受賞対象になった『老人と海』では死は遠ざけられ、人間の究極的な生き方そのものに焦点が当てられ、ヘミングウェイの作品群のなかでは異色の作品といえる。1961年7月2日、ケチャムの自宅で猟銃による非業の最期を遂げた。

「2023年 『挿し絵入り版 老人と海』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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