三国志〈13の巻〉極北の星 (ハルキ文庫―時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894569782

作品紹介・あらすじ

志を継ぐ者の炎は消えず。曹真を大将軍とする三十万の魏軍の進攻に対し、諸葛亮孔明率いる蜀軍は、迎撃の陣を南鄭に構えた。先鋒を退け、緒戦を制した蜀軍だったが、長雨に両軍撤退を余儀なくされる。蜀の存亡を賭け、魏への侵攻に『漢』の旗を掲げる孔明。長安を死守すべく、魏の運命を背負う司馬懿。そして、時代を生き抜いた馬超、爰京は、戦いの果てに何を見るのか。壮大な叙事詩の幕が厳かに降りる。北方「三国志」堂々の完結。

感想・レビュー・書評

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  • 孔明が死んでのちのことは描かれない。
    なんだかちょっと尻切れとんぼのような気もするが、オープンエンドでこれからの時代を生きていく者たちに焦点を当てているという意味で、清々しさも感じた。

  • 馬謖や趙雲の死を経て悟ったような孔明と、いよいよ表に出てきた司馬懿との対決が始まる。
    諸葛亮は司馬懿を上回っている印象だが、兵力、国力の差でこれを破るまではいかない。
    鄧艾が出てきた。大きな役ではなかったが、名乗った瞬間に「あぁ・・」となった。この後の史実を知っているので次世代の名前が出てくると感慨がある。曹操に近侍した史実はないようだが、物語の中では曹操の影響を受ける人物(姜維は諸葛亮の影響を色濃く受けた後継)として、次世代にも初期の英雄達の残照があることを描きたいのだと思う。
    馬超や爰京が三国志の外側から世界を見ている(山中の村は別世界のようだ)描写は劇中の人物の目線とは異なる角度から物語を見せてくれる。

    後半からは孔明の老いや病の描写が様々に表現されるようになる。死期が迫る天才の最期の輝きなのか、最後の遠征では再び消極策を採り守りを固める司馬懿を手玉に取り圧倒するが・・。
    クライマックスの有名な五丈原の撤退戦を敢えて描かず、しかし、それでいて司馬懿のこれまでの様子から追撃しないであろう事が読み取れる。

    最終盤で劉備の声が孔明に聞き取れないのはなぜであろうか。単純に孔明の命が燃え尽きようとしている(すでに肉体は死しているのに尋常ではない精神力で事後のことを書き残すためだけに身体と思考が動いている)ためか、心の中にいた劉備も孔明の命と共に燃え尽きようとしていた(人は死しても彼を知る人の心に生き続け、知る人が死ぬときに本当に死んで(=消えて)いく)ということなのか。
    また、作中の天才はだれだったのか。一人は孔明で間違いないのだが、他にも居たのだろうか。
    司馬懿や周瑜、陸遜は自分の才能を限界まで出し切った(やつれるほどに考え抜いた)非天才。他に趙雲が挙げていたのはだれだったか。
    曹操にはこれほど苦しんだ描写はあっただろうか?孫策には苦しんでいる描写はあまりないが、周瑜の回想にある「舟の舳先で一人耐えていたのだろうか」や暗殺された経緯からも天才ではなかったか。
    曹操と孔明という二人の天才が火花を散らした物語が三国志であったのだろうか。
    考え抜いた司馬懿が一度は出し抜いたが次には孔明に翻弄されるあたり、天才と凡才の根本的な違いを感じてしまう。

  • 三国志ものはゲームから入り、そちらでは魏軍が好きだったので冷酷な曹操にドキドキしながら読み進めました。
    いやぁ、泣いた泣いた。すげぇ泣いた。
    呂布、周瑜、関羽、張飛、曹操、劉備、そして諸葛亮、熱い漢たちの死に泣き、馬謖や張衛ら熱く生きられなかった漢たちの切なさにも泣いた。
    憧れたようには生きられなかった曹丕も虚しくて悲しくて、司馬懿と同じような状態になってましたw
    夏侯惇と許褚に弱さを託す曹操、脆くてなんてかっこいいんでしょう。
    自分の弱さ、不明に打ちのめされる諸葛亮。
    天才諸葛亮の恐怖にただ耐える司馬懿。
    弱さを併せ持った英雄たちがものすごくかっこよく描かれていました。
    お気に入りは司馬懿と徐庶。オリキャラの爰京もいいキャラでした。
    癖の強いキャラの性格描写、オリジナルキャラクターは人によっては受け入れがたいと思います。そして人によってはこれ以上の三国志はないと思うほどハマると思います。自分は後者でした。
    いやぁー、もっと早く読めばよかったなぁ(笑)

    諸葛亮が、帝の血筋の尊さについて語るシーンが、天皇家を想起させるなぁと思っていたら、本当にそういう意図で書かれていたのだとあとから知りました。
    革新者を長く続いたものに対する畏敬を否定するものと考えると、曹操ばかりを持ち上げる気にもならないし、かと言って、かってに漢を背負って立つ気になっている諸葛亮もなんとなく怖い。民が一番と言って保守的で日和見主義な呉がなかなか魅力的に見えてくるので不思議です。

  • オチが思ったとおりなので、ちょっと笑ってしまいました。

    後半、魅力的な人が少なくなっていくにも関わらず、かなり読ませる「三国志」でした。

    まあ、これは、最初に読むと、他の「三国志」が読めなくなってしまうかも知れませんが……。

  • 長いこと読んできた北方版三国志、とうとうフィナーレ。と言いつつこの巻はかなり惰性というかだれを感じた。五丈原の戦いも描き切れておらず、肝心の「死せる孔明〜」の場面がなかったのが残念。最後の最後のシーンが馬超、というのは北方らしい終わり方なのだろう。

  • とうとう読み終えてしまった。長編を読み終えた時にはいつも感じるのだが、この三国志も終わり方が何かしっくりこない。長い時間作品と付き合うことで、作者から離れて自分自身の物語になっていくからなのかもしれない。司馬懿や陸遜、姜維、劉禅などのその後も見届けないと、物語を読み終えたという気持ちにはなれない。
    なにがともあれ、充実した読書だった。三国志は吉川版、横山版、村上訳版と読んだが、これが一番面白かった。

  • ゲームから三國志が好きになって、いろんな三國志を読み漁っているときに出会ったシリーズでした。

    とにかく人間臭い。人間らしくて、かっこいいだけではなくて、葛藤とか苦悩とか、恐怖とか、そういうものもしっかり描かれていて。今まで読んだ三國志の中で断トツに好きなシリーズです。

  • 馬超のシーンで終わると思ってなかった。
    爽やかな終わり方だったな。

  • ついに北方三国志読了。蜀の北伐における孔明と司馬懿の戦いは他の作品でもそうだけど、切ないものがある。死せる孔明〜も魏延の裏切りもなく(伏線はあったのに)途中で終わった感じだけど別に良いかな。栄枯盛衰、人の意思、儚さ、老い…いろいろ考えさせられる。とにかく面白かった。終わってしまって少し寂しい。

  • 終わってしまったー‼︎

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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