学校英語教育は何のため? (ひつじ英語教育ブックレット 2)

  • ひつじ書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894767270

作品紹介・あらすじ

政府や経済界は「グローバル人材」という1割ほどのエリート育成を学校英語教育の目的とし、小学校英語の低年齢化と教科化、中学校英語での英語による授業実施、TOEFL等の外部検定試験の導入などの無謀な政策を進めている。このままでは9割が切り捨てられる…。内田樹、鳥飼玖美子による白熱した対談も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 私今、英語で授業をする学校に勤めているので、何とも耳の痛い話なんでした。

    勤め始めたからと言って、ここの教育システムに心底共感しているとは限らない。

    わたしは、母国語あってこその第2言語だと思う。母国語がしっかりしてないのに、第2言語を身につけようなんて、ハーフの子でもなければあり得ないだろうと思う。


    ただ、英語で授業をするのはともかく、日本にいながら国際的な雰囲気を学べるというアドバンテージは、とても大きいと思う。均質化されたクラスの中で、自分の能力を伸ばすのは、なかなか難しい。均質化されてるがゆえに、自分を伸ばすよりも相手を蹴落として優位に立つ方が、よほど簡単なことだからだ。
    それがないとは言えないけれど、「人は違うのだ」というところをベースに、日本の教育の良いところも取り入れながら学んでいける環境には、賛同するところも結構あったりする。

    わたしの「英語」の原点は、小学校2年生の時に、父が一人でアメリカ旅行に行った際に買ってきてくれた、「不思議の国のアリス」の塗り絵でした。

    スーパーに売ってるような、たぶんそんなに高くない塗り絵に、簡単なお話が英語で書かれていて、それを辞書を引きながら(国語辞典の引き方を習ったばかりだった。英語も同じだと思い、頑張って引いてみた。)その意味を紐解いた。

    最初の文の
    Alice is getting sleepy.
    「Alice:女性の名前」
    「is:です」
    「getting:?」
    「sleepy:眠くなって」

    文法構造がわかってないから、gettingがわからない。
    でも、アリスが眠いんだということは、わかった。

    わたしはそれが、うれしかった。

    この文字の羅列を、私がわかろうと歩み寄れば、文字が、意味が開けてくるんだとわかったことが、とてもうれしかった。

    そこがすべてな気がする。
    わたしは、グローバル化だとかそういうの、どうでもよくて、

    自分がわかろうと歩み寄れば、言語を理解することができる、人を分かってあげられるんだということが、うれしくて、言語を学ぶのが好きなんだと思う。

    そんな経験を、少しでも多く届けることができたら、
    少しは何か、変わるかもしれない。

  • (高校文化祭の図書委員会主催の古本市でみつけた。学校関係者(生徒、保護者、教員)からの提供書だろう。どこかに同志がいる学校なんだな、と思った。)

    心ある英語教育関係者からの発信。2013年以来再三再四シンポジウムを開いたりこのようなブックレットにまとめたりしているけれど、専門書のくくりにはいってしまうからあまり一般の人に読まれていなさそうなのが残念。

  • おすすめ資料 第256回 (2014.10.17)
     
    わたしたちは何のために英語を勉強するのか?
    この根本的な問いについて考えるための手がかりとなる本です。

    この紹介文を読んでくださる外大生のみなさんは、英語がすきで、得意な人ばかりでしょう。
    将来は英語の先生を目指しているという人もたくさんいると思います。
    そんな方に読んでいただきたい1冊です。

  • タイトル通り,学校英語教育の目的を論じつつ,グローバル化の旗印の下に十分な検討もされないまま進行している学校英語教育の改変について警鐘を鳴らす。
    英語だけではない話だな。英語が目立つだけで。

  • 学校で英語を教える目的を、決してクローバル人材を育成するといった矮小化した枠組みで捉えるべきではない、という話。いいです

  •  海外に住む「英語使い」で「小学校からの英語教育」に賛成する人ってほとんどいません。数少ない例外はうちの奥さん(元日本語教師)。僕も含めて「英語使い」は文法、文の構造把握、単語暗記、音読、英作文など、現行の英語教育で習う事柄がいかに重要か身に染みてます。
     会話なんて、こういう基礎があればすぐに覚えるし、逆に基礎が曖昧だと全く伸びないし、英語を学ぶのに「近道」なんてないし、「英語がうまい」のと話に中身があるのが全然違うことだってのも体験的に知ってます。 
     この本も同じ論調。小学校からの英語教育に真っ向から反対してます。「実用英語」は財界からの要請に答えるだけで、教育の独自性を放棄しており、英語嫌いが増える、英語帝国主義を助長するものであることがはっきり論述されてます。
     4人そろって英語学(言語学)の研究者なのに、「英語教育は母語教育と連動すべき」とか「英語一辺倒じゃだめだ」とか、「他田引水」なのが好感が持てます。何よりも、日本の英語教育がどんどんダメになってる(テストの点数で明らか)現状に対する危機感がすごい。
     内田樹と鳥飼久美子の対談に惹かれて買ってみたら、「英語教育4人組」の共著で、うち一人は大学の同級生だった(斎藤兆史)。斎藤、良い仕事してるじゃない。
     本としては、シリーズ第1作の「英語教育、迫り来る破綻」の方が(たぶん)完成度が高いです。これから読むのならこちらをお勧めします。ただし、僕のように内田樹の鋭い指摘を読みたい方はこちら。

  • グローバリスト共が自分らに都合の良い奴隷wを育成する目的で英語という教科を悪用している可能性まで含めて、とても広くかつ深い視点と論点で考察されているのは凄い。我が子らが社会に出る前にこういう優れた本と出逢えたのは幸運。

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著者プロフィール

江利川 春雄(えりかわ・はるお):1956年埼玉県生まれ。神戸大学大学院教育学研究科修士課程修了。広島大学で博士(教育学)取得。専攻は英語教育学、英語教育史。現在、和歌山大学名誉教授。著書に『英語教育論争史』(講談社選書メチエ)、『日本の外国語教育政策史』(ひつじ書房、日本英語教育史学会著作賞受賞)、『英語と日本軍』(NHKブックス)、『受験英語と日本人』、『英語教科書は<戦争>をどう教えてきたか』、『日本人は英語をどう学んできたか』(以上、研究社)、『英語教育のポリティクス』(三友社出版)、『近代日本の英語科教育史』(東信堂、日本英学史学会豊田實賞受賞)、監修・解題『英語教育史重要文献集成 全15巻』(ゆまに書房)など。

「2023年 『英語と日本人 挫折と希望の二〇〇年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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