カラス学のすすめ

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  • 緑書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784895313322

感想・レビュー・書評

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  • 「車でくるみ割り」とか、「他の鳥を遊び半分で追いかける」というような、他の鳥類では見られないような行動をするという特異性がカラスにはある。そういう「カラス特有の行動」というのを、解剖によって解き明かそうとする筆者による、研究発表本。
    カラスの解剖学的生態について知ることができるが、専門用語が多く、その反面図がちょっと少ないような気がするので一読だけで理解するのは難しい。ただ、詳細に書かれているからこそ、よりカラスを身近に感じられるかもしれない。

  • 日本には「カラス」という名の動物はいません。(略) 実は「カラス」はスズメ目カラス科の総称。

    日本でよく見られるハシブトガラスやハシボソガラスは、動物分類学的にいうと脊椎動物門鳥綱スズメ目カラス科に分類されます。このカラス属に分類される鳥は世界で四十六種、そのうち日本で見られるのは主に五種です。

    この二種のカラスはどちらも「留鳥(りゅうちょう)」と言って、四季を通していつも同じような場所に棲息し、渡りはしません。

    ハシブトガラス
    体重は六百~八百グラムで、体長は約五十六センチメートル。鳴き声は「カァ~カァ~」と比較的澄んでいます。食性は雑食ですが、どちらかというと肉を好みます。産む卵の数は二~五個です。

    ハシボソガラス
    体重は四百五十~六百グラムで、体長は約五十センチメートル。鳴き声は「ガァ~ガァ~」と濁った鳴き声をします。雑食性ですが、カエル、虫などの小動物、木の実、畑作物の種や芽などを好んで食べます。産む卵の数は二~五個です。

    ミヤマガラス
    ハシボソガラスより一回り小さく、体長は四十七センチメートルくらい、体重も三百グラム程度です。クチバシの根元の皮膚が露出しているため、白っぽく見えるのが特徴です。「カララララ」と細く小さく鳴く。穀類や昆虫をエサにする雑食性。

    コクマルガラス
    大きさは三十三センチメートルぐらいで小型のカラスです。黒一色のタイプと、白と黒のツートンカラータイプの二種類がいます。鳴き声は「キョン」「キョー」「キャー」と甲高くなくようです。冬鳥として大陸から九州地方にやってきます。

    ワタリガラス
    日本のハシブトガラスよりもさらに大きく、体重は千二百グラム以上もあり、ハシブトガラスの約一・五倍近い大型のカラスです。北極グマ、キツネ。コヨーテなど肉食獣のそばで生活して、ハンターのしとめた獲物のおこぼれを頂戴しているため、食性は肉食に近いようです。ワタリガラスは賢いカラスの仲間のうちでも特に賢い方で、昔から動物行動心理学の研究に使われています。鳴き声の種類はたいへん豊富なようです。

    一日の行動範囲は平均で五~六キロメートル。

    カラスは共食いをする

    どの動物でも、一生の心拍数はおよそ十五億回と決まっているようです。

    カラスのクチバシー恐るべきパワー
    このクチバシには、啄(ついば)む、突く、咬むなどの働きがあります。

    カラスには食料を貯めるそ囊はありませんが、その分、胃に貯めることができるようです。

    カラスにとって色彩はとても重要な情報

    カラスの色覚は四原色
    鳥ではさらに紫外線領域に感度の高い視物質をもち、赤、緑、青、紫外線を感知する四色型色覚を有します。
    人間に七色に見える虹は、カラスではより色彩豊かに見ていることが想像できます。

    カラスには特別好きな色も嫌いな色もなさそうでした。

    カラスはハムから反射する紫外線で、偽物と本物を見分けていると見当づけられました。

    カラスの嗅覚は鈍感

    カラスのクチバシは無骨な外観には似付かず、五徳ナイフのように多機能性を発揮する繊細な期間・・・(略)考えてみれば道具を自作して使うなど、カラスは高い知能で注目されますが、頭で考えたことを実行するには、知能だけではなく、すぐれた道具とそれを制御する感覚が必要です。カラスの知能の発現に、クチバシありですね。

    まれに十キロメートル飛ぶものもいましたが、ほとんどのカラスは四~五キロメートル以内と、基本的に狭い範囲で活動していることがわかりました。

    (GPSロガー)
    記録されたカラスの最高飛翔速度は時速七十三キロメートルでした。平均およそ時速三十四キロメートルで、原付バイク並みの速度です。

    夜に行動するカラスも結構いることがわかりました。(略)鳥目ではないようです。

    カラスを食べる
    ハシブトガラス、ハシボソガラスの深胸筋浅胸筋から三十二種類の遊離アミノ酸と、二種類のジペプチドが同定されたのです。なかでも、タウリンという遊離アミノ酸が四十~五十パーセントも含まれていることがわかりました。これはニワトリの七パーセント、カモの六パーセントと比べて非常に高いのです。タウリンは滋養強壮剤や栄養ドリンクのなかにたくさん配合されていて、消化や神経伝達、活性酸素の抑制などに大きく貢献する物質としても知られています。要するにカラス肉は健康にとても良いということです。
    「本当に美味しいカラス料理の本」GH社













著者プロフィール

宇都宮大学農学部教授 医学博士・博士(農学)
 第13章執筆


「2010年 『カラスの自然史 系統から遊び行動まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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