「毒親」の子どもたちへ

著者 :
  • メタモル出版
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784895958745

感想・レビュー・書評

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  • 帯に「毒親論を手放し、その先へ進むために!」とあるので、毒親から逃れたその先の話なのかと勝手に思ってしまいました。

    本書の実に3分の2以上のページを割いて、「自分の人生がうまくいかないのを親のせいにしていないか」「毒親毒親と言っている人は反抗期に乳離れできずに親を責めている人と同じ」「すべての親も見方を変えれば毒親になりうる。逆に毒親じゃない親なんているのか。」と、「自称毒親持ち」の人を断罪しています。

    読んでいるだけで悔しくて吐き気がして著者に対する怒りすら湧いてしまいました。


    私は、自分の人生がうまくいかなかったとき、人とのコミュニケーションの取り方で悩んだとき、その原因の一端が親にあると気付いた。アダルトチルドレン関係の本を読んで慰められ、「毒になる親」を読んで親と戦ったこともある。それでも親は変わらない。変えるなら自分自身しかないと思い、親と絶縁して(距離を置いて)自分の人生を取り戻した。今は幸せな生活を送っている。

    それでも、親の言動が時々フラッシュバックしてつらい時がある。幸せなはずなのに誰かに責められているような気持ちになる時がある。絶対にああはならないと誓った自分の親とそっくりな口調で子供を叱りつけてしまい、そんな自分に気付いて愕然としてしまう時がある。このまま一生自分の親とは絶縁したままなのかと瞬間的なさみしさや不安や絶望に襲われることがある。

    そんな状態を何とかするヒントになるのかもしれない、そう期待してしまった。毒親論の「先」にある生活についての本かと思った。

    しかし全然違った。

    この本は、「毒親論」の「先」ではなく「前」に、まずは毒親毒親と決めつけようとするのではなく、そうじゃない可能性を考えてみるのに良いかもしれない。そして自分自身が変わってみる。もしその時点で救われる人がいるのなら、毒親論に進む必要はないですね。

    ただ、多くの人はそれができないから「自分の親は毒親だ」と認定することによって、人生の推進力を得るのだと思う。「毒になる親」を読んですでに親と対決し、現在は自分の安定した生活が(とりあえず)送れている私には全く必要のない本でした。


    最後の一段落、「毒親についての話はいくらでも聞くけれど、そんなことをしても何にもならない。自分自身のパーソナリティの発達の可能性を信じ、今できることから始めてください。方法がわからないなら、直接私に聞いてください。みなさんたちと関わってきたおかげで分かったことをお伝えします。」って、その方法が知りたくてこの本を買った人も多いのではないかと思われるのに、具体的な方法やヒントは見つけられませんでした。

  • 身近で元気で生きている親は「毒親」にされることが多い。特に強烈な個性を持っている親はみんな毒親。以前岡田尊司著の『母という病』で感じた矛盾がまさにそれであること、本書を通して言語化され明瞭になった。毒親、ACなどの概念はそもそも過去からの独立宣言の目的で確立された概念であったはず。罪悪感や自罰感情からは良い方向への変化は生まれない。現在の自分というかけがえない存在をあくまでもサバイバーである本人にスポットを当て自分自身を取り戻すための人生を生きるべく叫びとして昇華させていけるのが最終的な理想なのだが。

  • とてもいい本。昔の私の紐解きができたし、私の知ってるあの子もきっとソレに当たる。あの子にもこの本を読んでもらって自分の人生を生きて欲しいなと思った。
    親がどう接してきたかは、もう関係ないよね。
    って、これはもう完全に抜け出せたから言えるセリフみたいですね。
    まだその世界から抜け切ってない人にはただ責められるだけのツライ本になるかもしれない。

  • 借りたもの。
    昨今、取り上げられ認知度が高まった「毒親」
    機能不全家族の問題に取り組んてきた著者の元には、「自分は『毒親』に育てられたため、苦しい」と自己申告してくるクライアントが多くなったという。その事に警鐘を鳴らしている本。
    本来の「毒親」問題とは、“犯人探し”が問題ではなく、それと向き合い自身を成長させていくことが認識されていない事を著者は懸念している。
    また、「毒親」の定義が曖昧な事から“普通の親”をそう見てしまうことを指摘。
    その根本的な問題に、現代日本人の「私」ノイローゼ、“承認欲求”の過剰反応があるという。(普通の親を毒親と見なすのは、自分のことを認めてくれない親、というスタンスがあるのかも知れない。)それを明治維新以降夏目漱石とその作品『明暗』を取り上げ、分かりやすく解説してくれる。
    別に親を敬えとか、訓戒を述べている本ではない。(自身も親も、敬われるのは死んで美化された時だろう。)
    原因が自分の親、それが毒親で結構。
    それから自分をどうしたいかを考えるための、人によってはちょっと厳しく感じるだろうが、その力の一撃を受けてバランスを取ろうと思う本。

  • 毒親、最近かなり浸透してきた言葉です。
    でも、われわれにとって大事なのは、
    自分たちがそれをどうやって乗り越えていくか。

    毒親のせいにしても仕方がない。
    自分がどうするかが大事だと。

  • 【書誌情報】
    「毒親」の子どもたちへ
    著者:斎藤 学
    発行:メタモル
    縦190mm 183ページ
    ISBN 978-4-89595-874-5
    初版年月日 2015年2月
    ※メタモル出版は2017年に倒産。サイトも消滅。


    【メモ】
    ・著者へのインタビュー記事。本書の概要も。
    https://synodos.jp/newbook/14516
    ・少し抜き書きする。ブクログで本書を酷評してる方にこそ読んでほしいので。
    斎藤 “……私は「毒親論」を批判しているのであって、「毒親」と呼ばれる親たちを擁護しているのではありません。また、この本を単純な「反毒親論」にはしなかったつもりです。”



    【簡易目次】
    第1章 「毒親論」の限界 
    「毒親論」という宿命論
    ACの原点と共依存 ほか

    第2章 全ての親は「毒親」? 
    「毒親」と非難される4タイプ
    いい親は死んだ親 ほか

    第3章 「毒親論」を手放してどこへ向かうのか 
    対人関係の改善がひとつのゴール
    その先にある親子関係の再構築 ほか

    第4章 他人とともに現実を生きる
    心のことを考えすぎない
    症状を趣味に変えていく ほか

    第5章 あなたの人格、あなたの運命は変えられる
    パーソナリティは変えられる
    戒飭される理由 ほか

  • 「毒親の元で育った子ども」へのメッセージ。
    「毒親」という言葉が定着したことにより、加害の実態が見えやすくなったというメリットがある一方で
    簡単に「毒親」の一言で片付け、思考停止してしまうことへの注意を促す。
    「あなたが毒親の元で育ったのはわかった。で、これからどうするの?親をこれから変えるのは無理だよ、あなたが変わらないと」
    「毒親」以外でも、過剰な自責論が時代遅れと認識されつつある一方、反動で過剰な他責論に移行する論調が増えつつあるように思える今、こういった切り口の本をもっと読んでバランスを取りたいなと考えさせられました。

  • 家族

  •  AC概念を輸入した筆者が昨今の毒親論に物申す的な内容。毒親論は運命論で、「毒親だからしょうがない」という使われ方を批判している。それはそれでもっともなんだけど、先生が救いたかったのは毒親論に安住する人じゃなくて、人知れず毒親に苦しんできた人じゃなかったの?という。そういう毒親論を踏み台にして生きていける人達ではなく、毒親論のはるか辺縁の(言葉は悪いけど)甘ったれ達相手にシャドウボクシングしている感じで、読んでてちょっと辟易。
     結局、毒親を定義的に議論しないから概念が拡散してしまっているよね。

  • 私は親を毒親と思ったことはないが、友達にそういう人がいるので読んでみた。特に前半、勉強になることがたくさんあった。

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著者プロフィール

精神科医、家族機能研究所代表。
1941年東京都生まれ。1967年慶應義塾大学医学部卒。同大助手、WHOサイエンティフィック・アドバイザー(1995年まで)、フランス政府給費留学生、国立療養所久里浜病院精神科医長、東京都精神医学総合研究所副参事研究員(社会病理研究部門主任)などを経て、医療法人社団學風会さいとうクリニック理事長、家族機能研究所代表。
医学部卒業後、母校の神経科学教室で精神分析のトレーニングに入る。同時期より、国立アルコール症センターとして発足した久里浜療養所(当時)で臨床にあたりつつ、アルコール依存症など「依存症」という用語を提唱し定着させ、依存症の家族に代表される、温かさや安心感などが提供できない機能不全家族で育った「アダルト・チルドレン」という概念を日本に広めた。著書に『すべての罪悪感は無用です』『「愛」という名のやさしい暴力』(ともに小社刊)など多数。

「2022年 『毒親って言うな!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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