- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896017557
作品紹介・あらすじ
もう消えてしまいたい-ローマで神父になるため学んでいた透真は、性的な虐めが横行する神学校に絶望していた。そんな時、偶然出逢った一人の刑事。「私なら逃げない」そう言う彼の強さに透真はどうしようもなく惹かれ、神への背徳だと知りながらも愛を教えられ淫らな逢瀬を重ねていく。だが突然マフィアの抗争に巻き込まれ、ようやく気付く…すべては彼の罠だったと。彼は刑事ではなく、組織の人間なのか?複雑に絡み合う愛憎の鎖に囚われた二人の運命は-。
感想・レビュー・書評
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設定とあらすじが気に入り、手を出しました。
ただ、私好みのねっとりとしたものがなくてサラッと一冊です。
感想としては「はいはい、よかったね」でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ローマで神父になる為に学ぶ透真はその美貌により性的虐待にあい、絶望して神学校を飛び出したのだが摺りにあい、持ち物全てを失ってしまう。展望台から死のうと思っていたところを一人の刑事に救われる。そしてもう一度神学校に戻った透真だったが彼が忘れられずに借りていたマフラーを口実にあの日連れられて行った店に行くと彼が危険な仕事をしている事を知る。加えて「抱かれてもいいという気持ちがなければ、私に声をかけるな」と言われて。
そんな時に夏休みを利用して彼の義理の弟になる壮平が突然尋ねてきて、透真を困惑させます。
刑事への気持ちに気付いて結局逃れられずに身体を重ねてしまった透真。それからは日を置かずに抱かれていたが、義弟に見つけられて男爵に写真を渡す手配をしたと言われて。
神学校を破門されるであろうという日、最後の逢瀬と覚悟を決めて抱かれたその晩、男爵の泊る神学校に火の手があがります。
愛したイタリア男がスパイであり、男爵を狙ったと知ると透真は火の手の上がった学校に飛び込んで自分を嫌う義弟を助け出します。
その時に負った火傷で視力も失い、果ては愛する人も失ってしまって。。。
失意の中彼は男爵の手の元、シチリア行きを決意し、再び愛した人に出会ってしまう。今度は敵として。
壮大なイタリアロマンでした。読んでいるとイタリアのあの青い空やオレンジの香りが漂う感じがしました。
紅いブラッドオレンジの香りがお話に散りばめられていて。
表紙のアルフィオが手で目を覆っている意味が読み終えて分かりました。
華藤先生の作品は片手間には決して読めない。
意を決して物語に向き合わないと話に入っていけないと、いつも思って読んでいます☆ -
回送先:町田市立鶴川図書館
系列会社であるフロンティアワークスにBL書籍(ダリアレーベル)の出版権を譲渡してから久しいムービックによる久しぶりのBL小説。フロンティアワークスのオーディエンス設定年齢が若干低年齢化している中で、ムービックによる大人向けのBLは果たしてどの地点に誘われるのであろうか。
本書を読む限りでは、華藤の指向が色濃く反映されているのだが、一方では昨今ブームになっているマイケル・サンデルの正義論(『これからの正義の話をしよう』)との奇妙な一致性も見て取れる。確かにマフィアと「共生(この共生は「共生共死」の共生である)」することは悪なのか、それに教会はどう付き合えばいいのか、といった具合に。評価すべき点としては、こうした答えを導き出すには難しい問題を真正面から描こうと努力した痕跡が読み取れることである。多くの作家ならば、「教会の聖壇で淫らな背徳的行為に耽る」という描き方でサーキットカットしてしまいがちなだけに(その意味では受けが新米の司祭/攻めがマフィアのおとり捜査官という設定は目くらましとして機能する)、華藤が「自分の趣味だから」と謙虚に示すその態度にこそ、評価を与える必要があるであろう。
しかし一方では(これは当然といえば当然なのだが)、バチカンの同性愛に対する保守的態度を援用して、自らの行為が背徳的であることを誇張した表現があることも見過ごせない。さらに、家族という構築されたシステムを本質主義的に捉えることによって、作品に奥行きを出していることはやむをえないとはいえ、女性(ここでは攻めの母親)を記憶喪失で死に間際という形で他者化しているのはいただけない。
また、なぜ受けの神父が「養子」なのかという設定についての説明が曖昧なことも気がかりだ。
そうした問題を含んではいるが、たまねぎの皮をむくような重層的かつ問題の営みを見せる上質のBLが登場したことは評価したい。一度BLを手放すことで発見したものもあることを願って今後のルナノベルスに期待したい。