- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896374650
作品紹介・あらすじ
VRMMO『アーク・アース オンライン』で、九賢者の一人という渋い召喚士「ダンブルフ」としてロールプレイしていた咲森鑑(さきもり・かがみ)は、プレイ中の寝落ちを境にゲームが現実となった世界へ飛ばされてしまう。しかも、老練な賢者の姿ではなく可憐な少女の姿となって…。このままでは築き上げてきた賢者の威厳が失墜してしまう!そう考えた咲森鑑ことダンブルフは、賢者の弟子「ミラ」と名乗るのだが-。美少女転生冒険ファンタジー、華麗に開幕!
感想・レビュー・書評
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ミラお爺/お嬢ちゃんの旅行記のはじまりはじまり。
現時点で発刊されている十巻まで、およびWEB版最新話まで通読した感想を述べます。性質上、一巻の筋について述べず、次巻以降各巻について述べていくという形になりますがご容赦ください。
導入は「異世界転移」というジャンルでもおなじみなVRMMORPG(仮想現実を用いたMMORPG)からはじまります。現実化したのか元からあったのかわかりませんが、使用していたアバターの姿で「異世界」に飛ばされます。
この辺はお約束として捉えられる様式美ですね。
結末が帰還か、永住か、どっちにでも転びそうな塩梅で、「この世界は何なのか?」って謎が早々に明かされる気配もなく、適度な緊張感を持ちつつ話は推移します。
現実を生き、今は異世界に生きる日本人は、現地のゲームシステムを熟知するほか、現実の物理法則と歴史と文化を知っているので、その辺を埋めるように技術の再発明などを行って、地歩を固めつつあるようです。
それはそうと主人公は時間を経ての来訪となるので、その恩恵のみを享受しつつ、自分が知っている時代との微妙なギャップを味わい「再発見」を行うために適度に無知、世界への案内人には申し分なしですね。
本筋はかつての自分と同様、国家の重鎮を成した友人たちを探し求めての各地の探訪、合間に風光明媚な名勝の観光、サブストーリーとして秘密結社の打倒など……、ホームポイントとなる王国の要人という身分を保持しつつちょくちょく帰還し、友人たちと交友を深めつつ現状を確認しつつ話は進みます。
よって、本筋は迷子になることなく安心感を持ったまま着実に進んでいきます。
ただし、物語の進捗は一人旅ということもあってゆったりペース、それでいて水面下で何者かの思惑を持った陰謀が現状対処できないままにじっくり進んでいる気配も感じ、その辺油断も出来ない感じが良いかなと。
大体の登場人物の価値観自体はシビアで、損得計算や貸し借りもしっかりしているので、友愛の中でぐだぐだな馴れ合いに堕ちない安心もあるとは思います。
ただ、複数の巻を跨いで結構ロングパスな伏線も多いように見受けられます。その上切りどころがわからないですね、この小説。まだ完結していないって事情を差し引いても長いお付き合いを覚悟した方がいいかもしれません。
一方、風景や物品の描写が要所で美麗ですし、旅先での選択肢の多さがまた世界観に彩りを添えている、そこもまた気に入りました。中近世~近代の欧州ベースの街並みに和風、中華風、洋風ファンタジー成分を振りかけて時々オーバーテクノロジー? みたいな、あるあるですが、表紙絵などで美麗にしっかり描いていただいているのでまさに未知への扉、とでもいいましょうか。
あと、主人公個人に降りかかる障害としては基本ストレスフリーですが、ストレスが無さ過ぎて逆にストレスということもなく、きちんと世界全体のパワーバランスは保たれており、上には上がいるというのが明示されているので早々インフレーションの青天井も無いと思われます。
戦闘面では、一目散に徹すればどんな仮想敵相手でも逃げ切れるレベルと言い切っている人間世界随一の強者、それでいて微妙に遺失気味な「召喚術」のエキスパートという設定が上手いですね。
素の実力でも中堅クラスの強者相手の自衛が可能なんですが、あくまで召喚先に頼り、信頼を寄せあうってスタンスが好ましい。
一人旅の孤独さが軽減されるほか、旅先でのお悩み解決にも用途に合わせて呼び出せるので一人旅でも完結できるっていうのは、旅のコンセプトに合い、戦闘の見栄えの幅も相当広がっているので見た目も楽しい。
ほか、知名度が低めなのでその辺を上げていくっていう強さの向上とは別の達成感が生まれているのも、まぁよくある目標ですがいいですね。逆に言えば、そこがカウンターストップになった時が物語の終わりの指標になるのかなと予測しています。
その都合上、時折連れ立つ旅の同行者を意識した行動が多くなるのも、主人公という華に向ける反応を見る上ではいいのかも。
ただし、中途で知り合ったある方のコネクションが強力過ぎて、謎解きを早くしている反面、試行錯誤をなくしているのでその辺は痛し痒しかなー。テンポは良くなっているので一概には悪いとは言えないんですが。
あと、なんだかんだで一部召喚が強すぎなきらいがあります。全体が強いのでバランスが取れてるったら取れていますし、ちゃんと社会的な事情などで制約もかかっているのですが。
で、この物語の一番のポイントが主人公ミラが「TS(後天的性転換)キャラ」というところですね。
それも一般的な日本人青年がシブい老賢者のキャラを貫きすぎて地になったところを可憐な美少女に転じる――というわけのわからないところに着地の仕方ということ。
……ご老公が身分を隠して世直しの旅という往年の王道を想像するもいいですが、本当の爺様が美少女ってのも生々しすぎるし、一般的な青年男子でもありきたりだし何よりギャップがない。
と、いうわけでいいとこどりでナイス! なキャラメイキングだと私は思っています。
問題は全くの素の青年の部分が見えづらい、というかほぼ設定に見えてしまうとか、時々脳が混乱するところなんですが、見た目が変わったことによる社会的評価の変化とか女性陣にするりと潜り込めるとか、あざといサービスシーンを出しても違和感がないところとか……同ジャンルが求める商業的ニーズにはしっかり応えているのでまぁ、些細な問題なんですよね。
藤ちょこさんの輪郭を感じつつ、感じさせない幻想的で美しいキャラデザインがしっかり嵌っているというのも大きいですし、下品と思わせない格がありますから。
まとめるところ。なんというか、驚くほどそつがないんです。
少々雑に話を展開しているところもなくはないんですが、旅を楽しむというコンセプトにそぐわない、要らないえぐみは削ぎ落としているので、不快感を感じることもない。
成長している感覚は薄いかもしれないけれど、コレクションやコネクションを築いていく喜びはしっかりと用意されているし、ちゃんと周囲は成長しているのでその辺で補っているとも言えます。
欲を言えば、あと一手、パンチの効いた要素が欲しいんですが、これを言い出すとこのようにバランスのいい良作「小説家になろう」作品のバランスが崩れそうでなんとも怖いというか。
とりあえずTSF作品のファンなら買って損はなしと思います。本人の葛藤はともかく、周囲との触れ合いに目を向ければ、先に言った通りしっかりと要素は拾っていますので。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
こういう系統の本にしてはきちんと物語してたし主人公最強設定にしても珍しくバランスが取れていたと思う。でも主人公の正体はずっと隠し続けていたほうが面白い展開になったんじゃないのかなあ。
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理想の爺姿で賢者としてゲームしていた崎森鑑は、理想の女の子アバターを出来心で作った後寝落ちしてしまう。目覚めたらゲーム世界の30年後、ロリな姿で爺口調”賢者の弟子”として、仲間を探して世界を歩き始める。
イラスト可愛い。爺口調とロリなギャップが楽しい。
続巻も楽しみだがネットで続きを読みに行ってしまいそう。 -
VRでMMOなRPGで爺キャラを使って賢者やってたある日,
ふとキャラクターの外見を再設定する課金アイテムで
理想の少女的なキャラにして遊んでたら
よくわからない謎のパゥワーでそっちの世界へ.
つまり
ロリジジイ爆誕ですか?
せっかく美少女な外見になったのに
ジジイ口調なのはどうなんだろう?
まぁ,だからこそのロリジジイなんだけども.