- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896421354
作品紹介・あらすじ
大寺さんのさりげない日常生活のうちに、陰翳ゆたかに掬いあげられる深い愉悦と哀しみ。十七年にわたって書き継がれて、小沼文学の至宝と評されながら、これまで一本に纏められることのなかった大寺さんもの連作全十二篇を集成した。
感想・レビュー・書評
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大寺さんの日常。
短編集はやっぱりいいなと思った。
淡々と日常生活が語られるんだけど、まるで主人公のすぐ側で見ているような、こちらが話の中に溶け込んでいるような感覚がした。
「鳥打ち帽」の淋しがり屋な人の話が自分みたいで心に残った。胸が痛む。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前読んだ講談社文芸文庫の『懐中時計』に掲載され、気になっていた作者小沼丹の私小説風な「大寺さん」もの12篇を発表された順に1冊に編んだ本。大寺さんの細君の急死から始まり、以前飼っていた犬の話や友人や過去のエピソード、棲んでいた家や疎開や再婚についてが淡々と描かれ、其処彼処から真面目でちょっぴり不器用で、お酒が好きで意外と話を忘れっぽい、大寺さんの日常の姿が浮かび上がってくる。また、全編に「死」の影も漂っている。この本は旧仮名遣いなので、じっくりと慈しむような読書が出来た。
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図書館で借りた。作品全体に漂う少し寂しい雰囲気が好き。身近な人が少しずついなくなっていく時の流れはとても淡い光を持つように思う。
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お値段4,000円以上の値打ちあり
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佐々木敦が選ぶ 小説のことを考え始めるための10冊:文藝(2009冬)より
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妙な猫がゐて,無断で大寺さんの家に上り込むやうになつた。或る日,座敷の真中に見知らぬ猫が澄して坐つてゐるのを見て,大寺さんは吃驚した。それから,意外な気がした。それ迄も,不届な無断侵入を試みた猫は何匹かゐたが,その猫共は大寺さんの姿を見ると素早く逃亡した。それが当然のことである,と大寺さんは思つてゐた。ところが,その猫は逃出さなかつた。涼しい顔をして化粧なんかしてゐるから,大寺さんは面白くない。
(『黒と白の猫』本文p.7)
※ひとこと※
大寺さんものを1冊に集めた連作集。何気ない日常と思い出,それらの中に潜む生と死。(暗くはないです。ただ静かに過ぎていくだけ。) -
大寺さんシリーズがまとめて読めます。
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「大寺さんもの」を集めてみたらしい。いいじゃん。
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思いがけない本に出会えるのが図書館利用の効用だ。タイトルに惹かれて、小沼丹って誰だよとか思いながら読み始めたらとまらなくなってしまった。旧かなだし、漢字は難しいし…当たり前だ、後から調べたら大正の人だったわ。「大寺さん」の日常が、どちらかというと淡々とつづられているだけなのに、なぜにこんなに心地よいのだろ。茫っとしながら読みたい一冊。