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- 本 ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896422313
感想・レビュー・書評
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作品を読み進めるにも楽しむにもこうしてレビューを書くにも、
とても、とてもエネルギーが必要な1冊。
これは、凄い。
純然たる文学でありながら、透明で鋭い思索や、
はたまたアートに分類されるであろう蠱惑的な表現力や、
そうかと思えば読み手のノスタルジーやハートを揺さぶる、
「物語」としての魅力も持っている。
最初の一行目からぐん、と引き込まれて、
でもきちんとついていくには集中力や精神力が必要で、
でもでもその対価としての感性の充足感ははかり知れない。
この加藤幸子という作家は、
可愛らしい形のガラスでできた爆弾を持っているのだと思う。
小説という形を取って、あらゆるものを抽象的に鋭くえぐる。
その「えぐり」が、時に残酷で、時に心地良くて、
冷たい手で心をぎゅっと鷲掴みにされたみたいになってしまう。
久しぶりに、オーラの凄まじい小説を読んだ。
これが文学の力か、と唸った。
作品は温かさも冷たさも深さも甘さも怖さも内包しているが、
基本的に、すべての作品に「明確なハッピーエンド」は、無い。
無い、のに、雪のような明るさがあるのはなぜだろう。
和室で飲む日本茶のような安堵感があるのはなぜだろう。
「文学」というものが持つすごく根源的な力、
その原始的で野蛮ででも最高に艶っぽい魅力を、
絹糸に絡め取られ締められるようにして味わうことのできる傑作。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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著者プロフィール
加藤幸子の作品





