自然連祷: 加藤幸子短篇集

著者 :
  • 未知谷
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896422313

作品紹介・あらすじ

自然の保護活動も実践されそれに関する著作も物され、勿論小説家として人間に関する作品も数多く著されている著者が、特に自然と人間との間に通い路をつけるという目的で書き継がれた連作短篇集。初期作だけにテーマがシャープに顕現。

感想・レビュー・書評

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  • 作品を読み進めるにも楽しむにもこうしてレビューを書くにも、
    とても、とてもエネルギーが必要な1冊。
    これは、凄い。
    純然たる文学でありながら、透明で鋭い思索や、
    はたまたアートに分類されるであろう蠱惑的な表現力や、
    そうかと思えば読み手のノスタルジーやハートを揺さぶる、
    「物語」としての魅力も持っている。
    最初の一行目からぐん、と引き込まれて、
    でもきちんとついていくには集中力や精神力が必要で、
    でもでもその対価としての感性の充足感ははかり知れない。

    この加藤幸子という作家は、
    可愛らしい形のガラスでできた爆弾を持っているのだと思う。
    小説という形を取って、あらゆるものを抽象的に鋭くえぐる。
    その「えぐり」が、時に残酷で、時に心地良くて、
    冷たい手で心をぎゅっと鷲掴みにされたみたいになってしまう。

    久しぶりに、オーラの凄まじい小説を読んだ。
    これが文学の力か、と唸った。

    作品は温かさも冷たさも深さも甘さも怖さも内包しているが、
    基本的に、すべての作品に「明確なハッピーエンド」は、無い。
    無い、のに、雪のような明るさがあるのはなぜだろう。
    和室で飲む日本茶のような安堵感があるのはなぜだろう。

    「文学」というものが持つすごく根源的な力、
    その原始的で野蛮ででも最高に艶っぽい魅力を、
    絹糸に絡め取られ締められるようにして味わうことのできる傑作。

  • 短編集。

    蜻蛉秘画
    海辺暮らし
    カモメの落ちた日
    シビルになりたい
    ダイバ紀行
    ヒマラヤン メイル
    亀の島の亀の石
    コアセルベートの海
    雪売り屋

    海辺暮らしが,平成23年のセンター試験の国語で出題。

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著者プロフィール

1936年札幌生まれ。41年両親とともに北京に渡り、47年引揚船に乗り帰国。北海道大学農学部卒業。農林省農業技術研究所に勤める傍ら、「三田文学」に作品を発表。72~89年自然観察会代表。82年「野餓鬼のいた村」で第14回新潮新人賞、83年「夢の壁」で第88回芥川賞、91年『尾崎翠の感覚世界』で芸術選奨文部大臣賞、2002年『長江』で毎日芸術賞を受賞。08年から財団法人北海道文学館顧問。日本野鳥の会会員。

「2015年 『尾崎翠の感覚世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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