- Amazon.co.jp ・本 (63ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896422931
作品紹介・あらすじ
転地療養中の文学修士コヴリン。彼の頭にはいつ頃からか奇妙な伝説が-。黒衣の修道僧が蜃気楼のように別々の場所に出現し、果ては宇宙にまで広がる永遠の連鎖。幻影が千年目に再び地球に戻る、それが今だ!ある日、黒い竜巻に遭遇した…彼は黒衣の修道僧を見た!「おまえは神の選ばれし者と呼ばれる数少ない人間たちの一人じゃ。おまえは永遠の真理に任えている」家族愛、狂気、破滅、チェーホフ異色の幻想的中篇。
感想・レビュー・書評
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情景が一貫してどこか薄気味悪い。主人公が病んでいるから、その視点から見える風景が薄気味悪いのか? 危なっかしそうな雰囲気を漂わせながら話が進み、そのままぽろぽろ状況が壊れていくような感じの話だった。
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人間であるおまえたちには偉大なる輝かしい将来がある。おまえのような人間が地上に多ければ多いほど、その未来は早く実現する。至高の大義に奉仕し、意識を持って自由に生活しているおまえたちがいなければ人間なんてつまらない存在だ。自然の秩序にしたがって発展していき、長いこと地上の歴史の終わりを待つだけじゃろう。おまえたちは人間が永遠の真理の王国に入るのを数千年も早めることができるのだ。ここにこそ、大きな功績があるのじゃよ。お前たちは人間の中に眠ってしまった神の祝福を具現化しているのじゃ。
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「チェーホフとしては珍しいタイプの作品群」(訳者あとがきより)のひとつであるこの中編、別の訳でも読みたい。あるいは「文字だけ」で読み直したい。とても凝った、美しい造りの本です。本体はきれいな布装ですし。挿画が不要、とは言いません。それでもやはり「文字だけ」から想像できるもののほうが豊かなのではないか、正直、そう感じました。「世紀末」だから、というだけで片づけてはいけないものが、ここからは感じられます、チェーホフ自身が正気だったか狂気だったかなどという別は無意味だとしても。「六号室」なども読み返してみようか、と。以上のような理由にて☆3つですが、おそらく「本作」は☆5つではないかと思われます。複数の版を読み比べていないので「おそらく」としか言えませんが、どうぞご容赦を。ここで言うのは筋違い(ほとんどゴマメの歯軋り)かもしれませんが、せめて、ちくま文庫、復刊してくださ〜い(『1Q84』が売れている間なら、チェーホフ復刊も、アリでしょう?)!!