亡命ロシア料理 新装版

  • 未知谷
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本棚登録 : 534
感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896424584

作品紹介・あらすじ

アメリカとロシア二つの文化の狭間に身を置いた亡命者のノスタルジアが、極度に政治化された20世紀末、イデオロギーを潜り抜け、食という人間の本音の視点から綴らせた-実践レシピ付料理エッセイ。機智に溢れた文明批評の45章。

感想・レビュー・書評

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  • ボルシチの作り方を知りたくてロシア料理の本を探していたら、アマゾンがこの本を推薦してくれた。30秒ほど表紙を見つめた後、「カートに入れる」をクリックした。そんなわけで、この世紀の奇書が今、私の手元にある。

    まずタイトルが凄い。亡命ロシア料理ーーこの破壊的なセンス。いったい誰が、誰に向けて、何を訴えたくて書いた本なのか、まるで見当がつかない。新書のタイトルだったら一発でボツだろう。

    この本は、旧ソ連から米国に亡命した2人のロシア人によって書かれたものだ。ロシア料理についてのレシピ付きエッセイ集だが、料理にとどまらず、広義の文化論ともいうべき内容になっている。

    本書がそこらの軟弱な本と異なるのは、自分たちに対する生ぬるい親近感を断固として拒絶しているところにある。試しに冒頭の一文を引いてみよう。「日本語版への序文」の書き出しはこうである。

    “ロシア料理には、日本料理との共通点はまったくない。”

    シベリアの永久凍土のようなクールさだ。普通、そこは社交辞令として、強引にでも何らかの接点を見いだす所じゃないだろうか。にべもないとはこのことだ。相互理解など不可能かもしれないという予感は、第2章の一文を読んだ時、確信に変わった。

    “お茶はウォッカじゃない、たくさんは飲めない”

    むろん当人たちはいたって真面目なのである。終始こんな調子で暴走トークが続く。

    “民主主義と同様、仔牛の肉は少々軟弱だ”
    “国際主義の理想がわれらの祖国で実現したのは、料理の分野だけだった”

    各方面をdisりつつも、英国人や現代日本人とは違い、不毛な冷笑主義には陥らないのがロシア人だ。食にかける彼らの思いは、おそらく地上のどの民族よりも熱い。平凡なキッチンも彼らにかかれば、たちどころに魂のブートキャンプと化す。

    “いい料理とは、不定形の自然力に対する体系の闘いである。おたま(必ず木製でなければならない!)を持って鍋の前に立つとき、自分が世界の無秩序と闘う兵士の一人だという考えに熱くなれ。料理とはある意味では最前線なのだ…”

    「冷凍作りおきでラクしてほめられご飯☆」とか言ってる場合じゃない。生半可なレシピ本では満足できない硬派な貴方へ、自信を持って本書をお薦めします。

    • 佐藤史緒さん
      vilureefさん、お久しぶりです~
      コメントありがとうございます!
      決して万人に薦められるタイプの書籍ではありませんが、ツボにハマる...
      vilureefさん、お久しぶりです~
      コメントありがとうございます!
      決して万人に薦められるタイプの書籍ではありませんが、ツボにハマる人はハマること請け合いです。
      ロシア人とは戦争しちゃいかん、としみじみ思います。ウォッカを水のように飲む人たちですからね(笑)
      2017/12/03
    • ちょぴん(しろくろ)さん
      佐藤史緒さん、こんにちは^_^
      佐藤さんのレビューに誘われて購入しちゃいました!とっても楽しい〜
      今噴き出しながら読んでます(笑)
      こ...
      佐藤史緒さん、こんにちは^_^
      佐藤さんのレビューに誘われて購入しちゃいました!とっても楽しい〜
      今噴き出しながら読んでます(笑)
      この本と出会えて良かったです。ありがとうございました♪
      2018/02/24
    • 佐藤史緒さん
      ちょぴんさん、こんにちは!
      コメントありがとうございますm(_ _)m
      うふふ、お仲間が増えて私もうれしい~
      カルチャーショックを楽し...
      ちょぴんさん、こんにちは!
      コメントありがとうございますm(_ _)m
      うふふ、お仲間が増えて私もうれしい~
      カルチャーショックを楽しんでくださいね!
      (^o^)/
      2018/02/25
  • 亡命×ロシア×料理。面白い組み合わせ!
    ぶくろぐで見かけた奇妙なギャップのある題名に惹かれて読んでみる。
    米国へ亡命したロシアの文学料理人が、ロシア料理にあるときは故郷への想いをのせて、あるときはジャンクフードへの怒りをこめてつづるエッセイ。
    ロシアって僕にとっては思想的にも文化的にも近そうで実は最も遠い国ではないか?
    ものすごい手間をかけて作る想像もつかないレシピ。魚は川魚が主流だということも改めて納得ですが、実にエキゾチックというかカルチャー・ショックな料理の数々。並みのSFなんかよりもよほど異世界感を感じます。

    本物のボルシチ食べたい。北海道にいるうちにサハリンに行ってみよう。

  • アメリカへ移住した食いしんぼうなユダヤ系ロシア人文芸批評家コンビによる、ロシア料理を啓蒙し、アメリカ人の健康志向を茶化しまくる小気味良いエッセイ。


    タイトルと表紙の印象で真面目な内容なのかと思っていたら、軽口だらけのコラムを集めた楽しい本だった。
    80年代のダイエットブームが吹き荒れるアメリカで書かれ、著者たちはそれがいかに愚かかと何度も腐しまくる。そんなふうに舌鋒鋭いなかにも、「神聖なものを何も持たない人々のことなど、相手にする意味がいったいあるだろうか」とロシア料理への郷愁を擁護したり、「料理というのは才能よりも熱意を必要とするユニークな芸術だ」という気の利いた言い回しがあったりする。
    レシピは実用的というよりも、同胞には故郷の味を思い起こさせ、それ以外には未知の味わいへ挑発的に誘うかのように書かれている。ロシアでクレソンがよく使われるというのは中国料理との関連を感じたし、チーズを使う料理が少ないのは全部スメタナ(サワークリーム)が代用しているのではと思ったり。ロシアは「川の国」だという分類学も面白かった(著者たちが祖国でシーフードを食べなかったのはユダヤの戒律のせいらしいけど)。伝統の味を称揚しながら、その味を守ってきた主婦たちへの敬意が感じられず、ジェンダーロールから抜けだしていこうとする女性を安直な揶揄でおちょくっているのは残念だけど。
    そして大事なのは、ひたすら保守的に故郷の味を懐かしむだけではないということだ。最後には大食漢の詩が朗々と歌い上げられ、「そしてきっといつの日か、全能の美食家の指揮の下/整列し行進するのは、ハリコフのステーキ、アボカドの白い果汁/マサチューセッツ・ボルシチ、そしてアストラハンのバナナ/僕たちが心待ちにしているのは、こんな楽しいパレードだ」と締められる。〈亡命ロシア料理〉とは、アメリカだからこそ実現する新しい食文化の名前だったのだ。

  • にんにく文化がある地域は平和。なぜなら料理が美味しいから!!
    っていう盛大な話とかがあったりするんだけど、とにかく食へのこだわりと食文化の崇高さを感じさせる本。
    超面白い。おすすめ。ご飯好きなひとは特に。そしてロシア料理を始め欧州、中央アジア系の好きな人はマストで。

    とりあえず食べる順番とか、食材への敬意を払うことから始めようと思う。お腹空いちゃったじゃーーん!!

  • いずれ読みたいと思っていたら、全て察した顔の夫に、「買ったけど読む?」と聞かれた。
    ああ好きさ!こういうの好きさ!
    文化と歴史をぐつぐつ煮込んで、皮肉を混ぜ込み、悲哀もそっと添えて完成。
    美味しゅうございました。

  • 料理の正解が分からなくなっているので、このメニューはこうでなくちゃと確固とした正解を自分の中に持っているのはかっこいい。頑固でふっくらした、肝っ玉母ちゃんのイメージで読んでたけど、著者は男性なのね。

  • すごい面白かった。
    40ぐらいのロシア料理のレシピや薀蓄が書いてあるんだけど、
    「お茶はウォッカじゃない、たくさんは飲めない」
    「民主主義と同様、仔牛の肉は少々軟弱だ」
    とかソ連ギャグをちょいちょいはさんでくるし、ボルシチやビーフストロガノフの材料も全部5人前50皿分だ(笑)。

    著者は70年代にラトヴィアからアメリカに亡命した二人組みの文筆家だが、ハンバーガーやダイエットとかのアメリカの文物のこき下ろしっぷりも気持ちいい。亡命者の愛国心には特有も悲哀がある。旧ソ連がどんなだったとしても、文化の多様性が失われるのは悲しいことだ。

  • 亡命ロシアとロシア料理。
    何ともいえないテイスト、おもしろい。

  • なんの役にもたたないグルメ本。故郷を捨てた人間であれば著者の皮肉がよくわかると思う。

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