私は臓器を提供しない (新書y)

  • 洋泉社
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本棚登録 : 108
感想 : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896914528

作品紹介・あらすじ

私たちが提供しない根拠はこれだ!「愛の行為」「いのちのリレー」という美名の下になされる脳死・臓器移植の実態はあまりに知られていない。賛否の論議を究めることなく闇雲に「ことを進める」のはいったいなぜか?ドナーカードに署名することで救命救急医療は本当に手抜きされないか?十名の論客がそれぞれの「私」からの発言で、脳死・移植への根本的な疑問を呈し、読者が「自分の立場」を選択するための材料を提供する。

感想・レビュー・書評

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  • 近藤誠、阿部知子、近藤孝、吉本隆明、小浜逸郎、宮崎哲弥、山折哲雄、平澤正夫、中野翠、橋本克彦の10人による、脳死移植反対の意見をまとめた本です。

    ドナー・カードを持っていたら救命措置が手抜きされる恐れがあるという問題や、脳死判定にまつわる諸問題など、現行の脳死移植制度にはまだ多くの問題が残されているらしいと分かります。

    また、仏教の立場から反対を表明している山折と宮崎の文章は、臓器提供が仏教の慈悲に当たるという梅原猛の立場に対する批判として興味深く読みました。

    思想家の吉本と小浜らは、脳死を人の死とすることの社会的合意がまだ成立していないということを指摘しながら、人の死をめぐる考察に踏み込んでいこうとしています。

  • この本を読んで、絶対私も臓器を提供しないと心に誓ったよ。
    臓器提供、この言葉になんか違和感が拭えなかったんだけど、ちょっと明確になった。
    あげたい人がいる、もらいたい人がいるなら成立するじゃないかという単純なものではない。
    人間の欲望とは恐ろしいもので、フレッシュな臓器欲しさにその提供者の死を望むということになってしまう。
    でも、多分それは自然な心理なのだろう。
    そうさせてしまう脳死判定に、どうしても疑問を感じてしまう。
    吉本隆明氏が、他人の臓器が体内に入ってくれば、おのずと精神や性格も変わってしまうのでは、と言ってたけど、そのまでは考えが及ばなかったな…。

  • 医師、宗教家、ジャーナリスト、宗教家。さまざまな立場の移植反対の立場の人が意見を述べた本。医師の証言の、脳死患者はメスを入れられると血圧があがったり、内出血があったりと、脳死といえども生命反応が見られるという意見がいちばん生々しかった。また、一部の意思と宗教家の、脳死を人の死と定義するから話がややこしくなるというのは、そうなのかもしれないと思った。ハッキリわかることは、臓器を提供すると意思表示したならば、積極的な救命措置が行われなくなる。人を資材としてみる。おぞましいことである。

  • 思うところあって再読。脳死について活発な議論が行われた頃から十年以上たち、すでに子どもについても脳死からの臓器提供が認められるようになった。ニュースで大きく取り上げられることもないので、実態が見えない。この新書が出たのは十三年も前だが、今でもここで述べられているいくつかの意見に共感するところが多々ある。

    心情的に最もよくわかるのが中野翠さん。「人の死を待ち受けるようなガツガツした空気」に対する「厭な気分」にこだわりたい、というところは同感だ。 「そうやって次から次へと人間の欲望のフタをあけていっていいんだろうか。人間は、果たして『運命』という言葉から逃げおおせるものなのだろうか」

    ノンフィクション作家の橋本克彦さんの意見にも納得した。橋本さんは、「『人類愛』、『生命の尊さ』などといった人類史のもっともおおざっぱな理念、誰にも文句のつけようのない、逆に言えばあってもなくてもいい日めくり標語のような理念」で、臓器移植という行為のナマの姿を隠蔽しようとすることに、欺瞞と危険を感じると書いている。長いけど、何箇所か引用する。

    「『死んだのなら心臓はいらないでしょ。うまいことやるとまだ使えるんだから、死にそうな誰かにやろうよ』このわかりのいい話を直視して徹頭徹尾人体各部位の廃物利用、まるでゴミのリサイクルみたいな考え、といった基本理念が掲げられ、大多数が了解したとしたら、まいった、あげるよ、もってけよ、と俺は答えるかもしれない」
    「事態を冷静沈着に正直に見据えるということが前提されずに、人道的精神に依拠しているからこの行為はおごそかで立派である、という欺瞞がかゆくてならない」
    「システムとしての臓器移植が、生きたい、生に執着するという人間のエゴをかゆい大理念におとしめて露出するようなことになるのではないか」
    「こういうふうな、なかなか文句をつけさせない観念はときどき悪さをやらかす。おしなべて人間のすることの価値を言い換える。意味内容を逆転させ、人道の旗の下に殺戮だってやりかねない」
    「人道主義などという大ざっぱな旗を振るような場面では具体的に何が行われているかを見きわめなければならない。このような旗の下で過去大量の血が流され、人を脅迫し、自由を奪った歴史があるのだから」
    「臓器提供者と臓器受領者の両者を社会から隔離し、隠しているのはその関係の重さを人道主義にあずけて棚上げしている証拠だと俺は断定する」
    「いわずもがなだが肉体には自我がある。その臓器が人格とともに唯一無二のものであることを主張するのが免疫反応である。この他者との境界をごまかすシクロスポリンがどれほど効いたとしても、唯一のものは唯一のものだ」

    他に、「臓器移植を進めたいがために、脳死を人の死として法律で定めた」ことの愚を批判した小浜逸郎氏の意見にも説得力があった。小浜氏はまた、ドナーカードを普及させようとする動きにも異を唱えている。
    「自由な自己決定というと聞こえはいいが、『決定を迫られる』ということは必ずしも『個人の自由の伸長』を意味しない。それは、考え方によっては、人々を緊張した決断の場にたえず追い込むことでもある」「『あなたは自分の臓器を提供する意思がありますか、ありませんか』という問いには、そうした『いらざる自己決定』を迫る脅迫的なニュアンスが含まれている。そのことを、私たちはそのまま見逃してはならないと思う」

    宮崎哲弥氏が、宗教上の理念を脳死・移植問題に直接持ち込むことは控えるべきだとして、「自己の信念をいったん『棚上げ』にして事に臨むというのが、それがリベラルな社会の共生のルールだからです」と述べているのも傾聴に値する。

    以上は皆後半の内容で、前半にはやや不満。

    Ⅰ章「医師の立場から」の三編は、わかりにくいところが目につく。ただ、ちょっと驚くのは、臓器移植を推進する人たちへの不信感があまりにもあらわに述べられていることだ。自分などは結構無邪気に「お医者さんは私にとって一番いいようにしてくれる」とどこかで思い込んでいるところがあるので、その「お医者さん」から「ドナーカードを持っていると救命を手抜きされる」とか「移植成功という実績のために、余命が長く比較的元気なレシピエントが選ばれる」などと言われると、うーん、困ってしまう。やはりそうなのかという気がするから。

    Ⅱ章「思想者の立場から」の吉本隆明はおそらく談話だろう。説明不足の感じがする。

  • 下記のバックグラウンドの人々から、「臓器を提供しない」理由が述べられている。
    本書でも「個人が了解していて、適切に医師が対応していたら、移植はあってもいいのでは」という意見もあったが、もっと大きく生命とは?を考えると、自分の命を個人のもの(家族の生命を自分たちのもの)と考えて移植を承諾すること自体はどうなのかとも考えさせられる。
    自分も含め、家族にはカードを持たないでと言った。が、自分や家族が移植するしかない場合、臓器がいただける時に、断ってまで短い余命のほうをあえて選択するのだろうか。
    今後、副作用の程度や移植手術の複雑さがより下がっていくと思うが、自分はどう考えていくか。
    読んでいて、本当に考えさせられたが、正直気持ち悪くもなった。

    ■医師、近藤誠
    ・ドナーとレシピエントは絶対的にドナーが足りないという需要を満たせない図がある。医療機関はそのギャップを埋めたい、となる。アメリカでは遺族に「脳死」と言わず「死んだ」と言う医療機関がある。レシピエントは自分より優先度が高い人々を恨みながら、ひたすら自分の順番が来るまで待ち続けることになる。これは本当の医療ではない。レシピエントの優先順位も人が決めることになるので、恣意的な部分が入る。
    ・ドナーカードを持っていた為に助かる可能性があったにもかかわらず、脳死を待つ方向に切り替えられた。杜撰な救命措置になっていた。
    脳死か心臓死か医師の対応にゆだれられており、それはメディアさえも知らないところでのみ行われている。
    ■小児科医、阿部知子
    ・脳死を確かめるために何度も検査をする。脳死を判定されても内蔵にメスが入った時に血圧が急に変動し、麻酔が必要だった。
    ・黄色の臓器提供カードも簡素すぎる。本人が本当に書いたものかもわからない。
    ・小川市立病院の青年はカードを持っていて、一番見えやすいところにカードがおかれていた。運ばれてから11時間以上脳外科医の診察がないままに脳死へ悪化していった。
    ・千里救命センターではカードを持っていたか詳細は不明で様々な臓器摘出後に移植には不適切とされた。脳死判定の際にミスもあった。
    ・脳死といっても幅があり、生き返る例も実際にあった。
    ・臓器摘出の際に涙が出る事はよく知られている

    ■脳外科医、近藤考
    ・脳死判定された人の臓器を探して見つからない時もある。肝臓移植先が見つからなかった時、膵臓を移植することになったが、この時この患者は本当に膵臓の移植が必要だったのだろうか。肝臓移植先が見つかっていたら、膵臓の移植はされてなかっただろう。
    膵臓移植された患者は一年後に移植部の出血で死亡した。
    ・脳死と判定されたあとでも、摘出される時は激しい痛みを伴う、事実麻酔科医がついた。
    ・「脳死に近い」として蘇生措置をしない扱いをされ、家族に臓器提供を求め、承諾すると、脳波が平坦でないために昇圧剤を止めて移植の準備がなされた例がある。翌年十分に蘇生措置が行われなかったと家族が提訴した。
    ・実際に「脳死」でなくても脳死から移植を先取りする形で治療を打ち切るようなことが現場では行われていた。
    ・全脳死は判定できない、検査をしようがない。
    ■評論家、吉本隆明
    ・自分の肉親が余命半年で、移植をすれば生き延びれるということであれば、したほうがいいと思うかもしれない。
    なので簡単に賛成・反対と言えない。
    ■評論家、小浜逸郎
    ・本当に脳死だったかどうかの論議はおいて置いて、脳死は脳死であって死ではない。呼吸器で生かされているにせよ、暖かい体は家族にとって死体と思うことは不自然である。
    ・移植をすれば永らえる人と提供したい人がいて技術があれば、臓器移植はあって良いと思う。「如何にしても生き延びようとする人間のエゴ」というふうに問題を一般化する人は明日をもしれない患者と向き合っていない。
    ・「自分の場合には脳死をもって死としてよいと個人が思うことと、それを法として定めることとは全く別次元の問題である」(『「脳死」と臓器移植』)
    ・オーストラリアでは運転免許に臓器提供の諾否を記入しなければならず、スウェーデンではノン・ドナーカードを持っていなければありとあらゆる身体部分を提供させられる。
    ・子供のための提供ならしたい。
    ■評論家、宮崎哲弥
    ・アメリカでは移植を待つのは白人よりマイノリティエスニシティが、男性より女性が長いという結果がでている
    ・あるアメリカの麻酔科医が、手術の時に麻酔をかけるのと、脳死提供前に麻酔をかけるのではいちじるしく違って気持ちが悪いと説明した。
    ・アメリカでは生前に本人の体にとっては悪影響でも臓器を新鮮に保つ薬が投与されている。

  • 深く考えたことが無い臓器移植について考えるきっかけになった。自分ならどうするか。その時になってからでは遅い。

  • 臓器移植ってなんだか正義ムード漂ってて、なんか偽善的な感じしてたけど、その違和感を明確にさせてくれた。吉本さんの意見が自分の感覚と似ている、と思った

  • なかなか面白かった
    今までなんの抵抗もなくドナーカードを
    善意のつもりで持っていたが
    ちょっと考えるきっかけをくれた
    この本のいってることが
    全て本当だと鵜呑みにするのは早いが
    角度を変えて考えてみるとなるほどそうなのである
    とりあえず本書にあった
    「臓器提供カードを持っていると救急救命が杜撰になる」
    というのはもの凄く怖い!
    理由もかなり納得できた
    でもそんな医療従事者ばかりじゃないことを
    願いたいものである

  • 本のタイトルに賛同して買ったわけじゃないけど、「なぜ提供しないのか?」その理由が知りたくて読みました。とりあえず現状把握として読んでみても損はないと思うけど…。

  • 医師・作家・ジャーナリスト..様々なジャンルの人達の臓器移植に対する反対意見。
    脳死とは。臓器移植には問題がいくつもある。これらの問題がある限り、まだその時期ではないと思う。ドナーカードにサインする前に読んでおくべき。

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著者プロフィール

近藤誠(こんどう・まこと)
1948年生まれ。73年、慶應義塾大学医学部卒業。76年、同医学部放射線科に入局。
83年~2014年、同医学部講師。12年「乳房温存療法のパイオニアとして、抗がん剤の毒性、拡大手術の危険性など、
がん治療における先駆的な意見を一般の人にもわかりやすく発表し、啓蒙を続けてきた功績」により「第60回菊池寛賞」を受賞。
13年、東京・渋谷に「近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来」を開設し、8年間で1万人の相談に応えている。
著書に、『がん治療に殺された人、放置して生きのびた人』(エクスナレッジ)をはじめ、
ミリオンセラーとなった『医者に殺されない47の心得』(アスコム)、
『患者よ、がんと闘うな』、『がん放置療法のすすめ』(ともに文藝春秋)ほか多数。

「2021年 『がんの逆襲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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