中年男に恋はできるか (新書y 2)

  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896914535

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  • 105円購入2012-03-15

  • 中年世代の愛と性をテーマにした、評論家の小浜逸郎と佐藤幹夫の対談を収録しています。

    佐藤は本書のなかで、小谷野敦『もてない男』(ちくま新書)について次のように述べています。「ぼくの受け取りでは、彼のいう「もてない男」というのは、これまでぼくらが言ってきたこととは、ちょっと違っていますね。あえて言うならば、ぼくらがモテるモテないと言おうとしている以前のモテない男だ、ということになりませんか。……つまり関係以前の関係のところで、モテない、と自己規定しているわけですね」。つまり、小谷野の考察が展開されるのは「自分はモテない」という自己意識の場面であるのに対して、佐藤たちはひととひとの関係性をあつかおうとしている、ということを述べていると理解することができます。

    また、佐藤は「大人の恋愛」という概念はわからないといい、小浜は「中年」になったことで老成したということはなく、ただ「これまで馬齢を重ねてきたものの、そのことによって自分の中の「初心」(うぶ)がどう成長を遂げるわけでもないという感知が、かなりはっきりとした輪郭を伴ってやってきた」にすぎないと述べているのですが、そうしたナイーヴなところをもつ人間どうしがすれ違いをくり返しているという事態を、ふたたび関係性のなかにくり込んであつかっているところが、著者たちに特有のスタンスだといえるでしょう。

    やや乱暴にまとめてしまうと、自分の不器用さやモテなさをそれとして受け止めるに至った二人の中年男性の心情が率直に示されているといえるのではないでしょうか。タイトルは刺激的ですが、そのわりに著者たちがあまり下世話なところにまで降りていないような印象を受けます。それとも、わたくしも著者たちの年齢になったら、自分がいつまでも成長しないことを受け入れ、諦められないことに諦めがつくような境地に至るのでしょうか。

  • [ 内容 ]
    中高年にとって性愛こそ切実なテーマである!
    援助交際から不倫・セクハラまで。
    ハゲからもてない男まで。
    形面上学的話題から下世話な話まで。
    いい年をしながら、枯れることのできない「中高年のエロス」の問題を中年男の切実さを踏まえながら縦横に語り尽くす。

    [ 目次 ]
    第1章 性という営み、性をめぐる言説
    第2章 なぜ『失楽園』よりも『HANA‐BI』を推すか
    補遺 「家族」とは二十四時間の闘いである
    第3章 人生はエロスに尽きるか?
    第4章 哀しき愛の結末?―ストーカー、セクハラ訴訟、そして暴露される関係
    第5章 中年男の孤独と死、そしてマザコンという性(さが)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 男が年齢を重ねていって社会的に成熟していったとしても、そのことことエロスの成熟とは無関係。恋愛関係を積み重ねれば成熟するかというとそうでもない。結婚観を構成する要素?性的役割分業に基づく相互補完的な結合?共通の関心、共通の生き方、共通の生活?「個人主義的なこだわりの確保という分類は、自分や社会の価値観を眺めるときに役立つ

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著者プロフィール

1947年、横浜市生まれ。
批評家、国士舘大学客員教授。
『日本の七大思想家』(幻冬舎)『13人の誤解された思想家』(PHP研究所)、『時の黙示』(學藝書林)、『大人への条件』(ちくま新書)、『日本語は哲学する言語である』(徳間書店)など著書多数。自身のブログ「ことばの闘い」においても、思想、哲学など幅広く批評活動を展開している。(https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo)

「2019年 『倫理の起源』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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