なぜ人を殺してはいけないのか: 新しい倫理学のために (新書y 10)

著者 :
  • 洋泉社
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感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896914740

感想・レビュー・書評

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  • タイトルになっている「なぜ人を殺してはいけないのか」をはじめ、「人は何のために生きるのか」「自殺は許されない行為か」「「私」とは何か、「自分」とは何か」「人を愛するとはどういうことか」「不倫は許されない行為か」「売春(買春)は悪か」「他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいのか」「死刑は廃止すべきか」「戦争責任はどう負うべきか」という10の問題をめぐって、著者が考察を展開している本です。

    「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いは、大江健三郎など多くの著名人によってとりあげられ話題となりましたが、ひとがこうした根源的な問いを発するのは、それを発せざるをえないような実存的な悩みをかかえ込んでいるからだと著者は考えます。それゆえこの種の問いに向きあうときには、なぜ発問者がそうした問いにつかまってしまったのかということを、彼の実存的な状況のなかからつかみとる必要があると主張します。

    ここに著者の基本的な観点が示されており、たとえば「売春(買春)は悪か」という問いに対しても、「たとえ売春を肯定するとしても、肯定の悪乗りをすべきでない」といい、また「他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいのか」という問いに対しては、「自分と直接的なかかわりのある身近な他者をさしたる理由もなく怒らせたり悲しませたりすべきでない」という原則を提出しています。

    著者の取り出した問いの「本質」は、納得できるところが多いと感じました。ただ、著者はこうした異議をけっして認めないでしょうが、われわれの実存的な立場の狭さを自覚してより広い視野を獲得するために、そうした実存的な感性のありようもまた歴史的・社会的に形成されてきたという観点に立ってみることも必要なのではないかという気がします。

  • 前読んだときよりは読めるようになった。読者の成長を試す本か(笑)。

  • 倫理の本。
    学生時代の記憶は全くないのですが、覗いてみたい世界だったので手にとって見ました。表題の問いも人に説明できるレベルの解がありませんでしたので。
    さて、内容は表題以外にも「何のために生きるのか?」「人に迷惑をかけなければ何をやってもよいのか?」などなど倫理学的御題がズラリ。勿論究極回答などなく、別の識者の意見は、著者の意見を入れ交え、「私ならこう答える」的に解説が入る展開。これが実に独りよがりでなく、説得力を持たせる論理的な文面なのが好印象。考えずに当たり前と思ったことも、こうして深く掘り下げてみると色々見えてくる感覚を少しいただくことができました。

  • 著者は家族論、学校論、思想、哲学など幅広い評論活動を展開している批評家。

    時代の無意識が提示してくる問題に真正面から答えるといっているが、明確な答えは得られない。

    本書は人は何のために生きるのか?なぜ人を殺してはいけないのか?など10個の問いを考察する構成になっている。

    問い→なぜその問いが生まれたのか→問いの言い換えが全章にわたって行われていて、論理構成を学ぶにはよい本かもしれないが、真正面からの答えを期待しながら読んでいた私にとっては少し残念な結果となった。

    多少の結論づけがなされているところもあるが一般論に終わっている感じがした。

    問いに答えられない場合に視点を変えて問いを構成しなおす発想は勉強になった。

    現代の倫理学を触ってみたい人は読んでみていいと思う。

  • 考え方の参考にはなるが、読んでるうちに自分の思考がちょっと迷走しました…

  • 「なぜ人を殺してはいけないのか」「人は何のために生きているのか」という根源的な問いは、問いが生まれた時点で実存的な悩みを持った背景があるということを著者は述べている。
    そういった問いに捕まってしまった時に、そもそもなぜ捕まったのか、そういう思考に陥るときはどんな時かと考え方のレイヤーを変えるという点でこの本は非常に興味深かった。

  • 久しぶりに読み返しました。自分の考えと同意できるところと異なるところとはあるけれど、こうした視点も重要で見落としていたとも気づかせてくれます。

  • どのような問題も冷静に論理的に感情的にならないで
    論点を詰めていくことの面白さがあります。
    不倫は許されない行為か
    買収は悪か
    他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいのか
    なぜ人を殺してはいけないのか
    戦争責任をどう負うべきか
    とても興味深い話題について論じています。

  • 日常考える倫理の教科書になると言える本
    10個のなかなか答えにくい問題について作者の持論を展開していく。
    言葉の使い方は難しいけど、理論的に段階を踏んで語っていくので納得感はある。
    自分の考え方に合うところは流用していきたい。

    質問があってそれを読み替えるのがうまい
    この質問の論点はここだからこう読み替えるべきと。
    余談だけど話が上手い人は論点を掴んで議論を読み替えるのが上手いイメージ。いい意味でも悪い意味でも

  • ダメだ、哲学的で全くついていけない・・・

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著者プロフィール

1947年、横浜市生まれ。
批評家、国士舘大学客員教授。
『日本の七大思想家』(幻冬舎)『13人の誤解された思想家』(PHP研究所)、『時の黙示』(學藝書林)、『大人への条件』(ちくま新書)、『日本語は哲学する言語である』(徳間書店)など著書多数。自身のブログ「ことばの闘い」においても、思想、哲学など幅広く批評活動を展開している。(https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo)

「2019年 『倫理の起源』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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