張形と江戸をんな (新書y 107)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896918045

感想・レビュー・書評

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  • 春画を通して「江戸時代までの日本の性は豊饒」だと結びつけるのは短絡に思える。ある種江戸幻想(思いこみ)を語っているに過ぎないと思う(芸のある「語り手」であることは認められるけれど)。個人の認識にかかる問題であるが自分の生きた時代の多様性を知るものは「知り得ない」ということを知った人間であると自分は思う、江戸時代のほんの一現象(張形)はただそれだけことである。江戸時代を生きた人間の風俗(表層=春画)の特異なそこだけを注視しても江戸に生きるものの閨のありようはさまざま。定規でヒトの心奧の深浅は測れない。

  • 2004年(底本「張形―江戸をんなの性」1999年)刊。著者は法政大学社会学部教授。春画満載、フォント大の各章表題の煽情性(例えば「女のマスターベイションを描く文化」「後家さんと張形」「春画の最高傑作、蛸と海女の交情」等)のため通勤中に読むのが躊躇われた。いや読めなかった…。これら春画に描かれる張形と春画内の書入れを描述し、時期による変遷も踏まえ、近世期においても女性主導の性の面もあったという帰結を導き出そうとするのが本書。ただ、男性から見れば張形を春画で描くのは、男性の視覚的性を念頭に置いている感ある。
    しかし、これと異質な女性目線は新鮮(かつ、互形の存在は著者に有利な物証)。一方、著者の言うように、張形が庶民も目にする春画に相当数描かれていたことは世界的に見て特異。これは日本文化のある種の特性を明示とも。台詞とオトマトベだけで近世期は”あの”シーンを描写しえている点、張形が武家屋敷の古井戸から多く出土するケース(高価だが広範囲な流布)には驚き。奥女中や後家が春画の主人公になるのは、現代の未亡人やメイドを対象とするのと似た記号化かも。時代を超越する性の深奥の一端を覗ける一書か。

  • 明治維新でどれだけ日本が不幸になったかを計る
    物差しとして張り形を研究すると
    その変貌によって男女の関係を見ることができるし
    お互いの多様性を受け入れている社会ほど
    幸福なのだということをツブサニ知ることができそうだ

    張り形が女の道具であった時と男の道具であった時で
    社会のあり方がまるで違う
    嘘と秘密のない社会ではお互いが対等であるがままで
    必要な分だけ分け合い補い合える関係を創れるやしい

    嘘と秘密で建前を保つ社会では利己的に干渉し合い
    外力による縦社会の秩序が必要になる
    そこでは民主という着ぐるみによる擬態カモフラージュで騙し合い
    権利闘争と競争原理を法律と洗脳教育によって正当化して
    依存と搾取と支配による格差社会を目指すことになる

  • おおらかな性風俗。隠すだけが教育ではない。

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著者プロフィール

1952 年神奈川県横浜市生まれ。江戸文化研究者、エッセイスト、法政大学第19 代総長、同大名誉教授。2005 年紫綬褒章受章。『江戸の想像力』( 筑摩書房) で芸術選奨文部大臣新人賞受賞、『江戸百夢 近世図像学の楽しみ』( 筑摩書房) で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞を受賞。近著に『遊郭と日本人』(講談社)、
『江戸問答』( 岩波書店・松岡正剛との対談) など

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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