ファスト風土化する日本―郊外化とその病理 (新書y)

著者 :
  • 洋泉社
3.20
  • (12)
  • (35)
  • (94)
  • (22)
  • (2)
本棚登録 : 429
レビュー : 66
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896918472

作品紹介・あらすじ

のどかな地方は幻想でしかない!地方はいまや固有の地域性が消滅し、大型ショッピングセンター、コンビニ、ファミレス、カラオケボックス、パチンコ店などが建ち並ぶ、全国一律の「ファスト風土」的大衆消費社会となった。このファスト風土化が、昔からのコミュニティや街並みを崩壊させ、人々の生活、家族のあり方、人間関係のあり方もことごとく変質させ、ひいては人々の心をも変容させたのではないか。昨今、地方で頻発する不可解な犯罪の現場をフィールドワークしつつ、情報社会化・階級社会化の波にさらされる地方の実情を社会調査をもとに探り、ファスト風土化がもたらす現代日本の病理を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 犯罪はジャスコの近くで起きるという論は若干無理があると思うが、筆者の言いたい郊外化が生み出した弊害というのはよくわかった。
    アメリカでもスモールビジネスサタデーというイベントが開かれているように、中心市街地の個人店舗を利用しながら周りと密接に生きていくほうが人間には良いということだろう。
    筆者は吉祥寺や高円寺が地方の若者を引き付ける要因を解説しているが、自分が一番住みやすいと考えるのはスケール的に地方都市の中心市街地。東京なんかよりも、そういうところを考えなければなぁと思ったり。
    いろいろ考えることができたので、評価は5。

  • 三浦さんは学者さんではなくてあくまで研究家。
    それもあって読みやすいし、発想や思考が柔軟。
    「ファスト風土」という一見寒~い言葉もなんだかんだ
    センスあるなぁと思いました(笑)

  • (01)
    2017年の現在に読めば、この新書もやや古びてしまったと言えるだろうか。2000年前後の郊外の郊外的な犯罪履歴から現場の風景を観察し、21世紀の郊外の特徴を抽出している。そのひとつにジャスコという指標を掲げ、ジャスコに代表される大規模な郊外店にどのような社会が発生し、郊外型の犯罪とどのように絡んでいるか、統計を交えて分析している。
    第七章にこんな一節がある。
    かつての都市や農村にはリアルな生活があったとした上で、「しかし、いまの地方には、郊外はあるが都市も農村も消えた。たしかに物は入ってきた。しかし、生活が消えたのだ。」この箇所に限らず、全体にやや筆が走り過ぎているように思える。「リアルな生活」が消えたというなら(その「リアル」が果たして「リアル」であったかどうかは別に問うてよい問題(*02)ではあるが)、まだ文意が前後で通じるが、「生活」が消えたというのは飛躍があるように思える。また、本書ではその消えたとする現代の郊外の生活の様相を描いてもいる。著者がいわんとする事は一辺倒で理解しやすいが、このように端折りや飛躍により、郊外化という問題をクレッシェンドしすぎる半面で、問題の陰翳まで丁寧に写し取ることができてないのが本書のウィークポイントであると考える。

    (02)
    長野県あるいは長野市に関する言及も散見されるが、第五章では、信州の「松本から諏訪にかけて」の郊外化の場面としてこんな描写がある。
    「山奥といってもよいようなところ、昔なら峠の茶屋くらいしかなかったであろうようなロードサイドに、パワーセンターがあり、スポーツ用品、(以下略)」として、著者の住んでいる吉祥寺や故郷の上越高田は、ブランドの流通品が手に入る点で、「長野の山奥と大差ないのだ」と断じている。
    長野県の地理と照らして、近世に峠の茶屋ぐらいしかなかったところで、現在、ロードサイドの大型の郊外店が展開している場所というのは、なかなか難易度の高い設問であるが、軽井沢、安曇野、小淵沢(山梨県)、塩尻あたりを指しているのかもしれない。つまり「峠の茶屋」しかなかった「山奥」という著者の地理理解に難点があるように思える。例えば、中山道沿いであっても、郊外化する以前も宿場として発達したところであれば現代において「パワーセンター」の出店により衰退した町はあると思われるが、中山道にも数あった「峠の茶屋」かそれに近い業態が営まれていた場所は、あまり郊外化とは関わらない衰退要因があったように思う。
    細かい指摘にはなるが、地方の全てが一様にファスト風土化している(*03)ように見えるとすれば、著者の大雑把な地理理解にもその一因があるという指摘につながりかねない。
    つまり、構図を単純化しすぎており、「郊外化とその病理」の実態に迫り切れていないようにも思う。それは、2017年現在、「郊外化」や「ショッピングモール」を面白がり、積極的に現代社会に落着させようとする動きに見られる、人間の不思議さへの理解を、本書の著者が欠いているともとられる。

    (03)
    それにしても、19世紀の英国の田園都市や、高度経済成長期以降の日本で唱えられた田中角栄の日本列島改造論や大平正芳の田園都市国家にファスト風土のひとつの淵源があるとする指摘は、おおむね頷ける。
    著者は、また、日米の経済摩擦により米国から要求された国内の公共事業投資の増大というストーリーを導入しているが、それについての可否はここでは留保したい。
    地方のヤンキーの問題、下流の問題は、公共空間あるいは地域の風土の問題が絡まっているという指摘は、本書の功績でもあるだろう。

  • (2007/4/26)

    「希望格差社会」からのリンクで買ってみました.

    地方の郊外化のプロセスと,そこで起きる生活風土の崩壊,犯罪の発生についてかかれております.

    特に,国道の敷設からジャスコの出店そして商店街の破壊と,(旧)大店法の功罪にもふれつつ警鐘をならしています.



    郊外化はモータリゼーションからの必然の帰結とすることなく,回顧主義を乗り越え進歩的に解決していくべき具体的問題だと,
    心に染みたわけでございます.

    ちなみにファスト風土化はファストフードになぞらえた造語だそうで.

  • 一時期、三浦望にハマっていた時に読んだ本の一冊。

  •  表題に惹かれて買ったけど、半分読んだ時点では「あ、大失敗」って思いました。地方の犯罪パターンの表層的な分析なんて全然面白くない。
     ところが、後半、田中角栄や大平正芳による「列島改造」が何を生んだか、いかにして「地方」が衰退したか、地方における階層化と消費パターンを論じるようになってから急に面白くなった。
     最近流行りの「マイルドヤンキー」論の先鞭をつけたという点でもまあ、三浦展らしいと言えばらしいです。底が浅いっていう批判はあるでしょうけど、それも三浦展らしいと言えばらしいw。

  • 2014年6月30日読了。広い幹線道路沿いに立ち並ぶファーストフード店、量販店、アウトレットモール、そしてジャスコ。日本に増殖する没個性な街並みを「ファスト風土」と名づけ日本の今を読み解く本。確かに、高速道路のICを降りて国道を車で走っているとき、「ここは富士吉田だったっけ?松本だっけ?」と自分がどこにいるのか景色から判断できず面食らうことはしばしば体験することだったが。「何でもそろう」ジャスコ(イオンショッピングモール)に地方の人々が車で通うことにより、コミュニティは破壊され・職人や地場産業の従事者、その他ユニークな個性は失われ・若い世代は消費しか知らず無気力になり、車での交通量が増えることにより、都会から犯罪者まで流入してくることになり・・・。濃密な人間関係と都会では味わえない自然体験がある、というのが日本の地方のイメージであったが、そんなトトロ的ユートピアはいまや日本のどこにもないのかもしれない。この日本の姿は日本政府と、我々日本国民自身が望んでそうなったものなのだろうか。考えさせられた。

  •  1958年生まれのマーケティング調査専門家・評論家が2004年に刊行した、日本における地方の郊外化(と生活の変化の仕組みなど)という仮説を実証する本。
     タイトルの「ファスト風土化」は、大型ショッピングセンター・コンビニの進出等により全国の地方が画一的になることを指す著者の造語。

    (感想)ある知人は、著者の本の数々を2.5流マーケッターの放言だと突き放していた。私はそこまで落とすつもりはないが、確かにテキトーな感じは強く受けた。分析が甘いというか結論ありきの展開だったから。
     賛否あるが、捉え方は面白い。

  •  読了。地方の国道沿いなんかによくあるチェーン店の群れと大型モール、大店法改正以降顕著になったある意味無個性とも言える程の共通化した風土は田舎で暮らす人達の生活や人間関係等にどのような影響を与えているのか、を好き勝手に主張した本だった。
     イトルだけでおっと思って買ってしまった。あのなんとも言えないような、道を走っている時の異邦人感覚みたいな、そういう感じ方への影響とかそもそもあんな街並みになった背景とかを紐解くのかと思ったら、「チェーン店化した郊外のせいで犯罪が増え人間関係が希薄になった」?まさかのトンデモ本…
     いきなり犯罪件数における少年犯罪の比率が増えていることをぶちかまし、(総人口とか世代別人口の中での割合ではなく犯罪件数だけで語っているところから既にアレ)、その原因は人間関係が希薄で匿名性に富んだ無機質的な郊外型の生活で本来の田舎の良い部分が失われたせいだ、と。勘弁してくれ・・・
     とにかく全体が自分の中で結論ありきで都合の良い論法だけを展開している感じ。田舎で起きた凶悪犯罪があった場所はジャスコの近くが多い!(只ピックアップしてるだけ)つまりジャスコを筆頭とするファスト風土は犯罪者を生み出す温床になっていたんだよ!Ω<ナ、ナンダッテー!と全部そんなノリ。
     後半は少しマトモかな?列島改造論で目指した田園都市と今の国道沿いの風景の異なる点とか、そういった物欲の街にならざるを得なくした情報化社会に言及したのは良かった。しかし、最後の方で「表参道や高円寺のような人間関係が濃密な下町をそれぞれの地方の人・行政が築くべきだ」とまたぶちまけるw
     それは表参道とか高円寺とかあと代官山とかが多くの世代の人や色々な物資や何よりも融資を受けれるような情報の中心たる東京都23区内で、更に駅を中心とした狭いエリア内(ここ個人的に超重要)で発展しているからじゃないのか?車が中心となった現在の田舎社会で一部に人情的な街を作って果たして現実的にどれくらいの商圏があるのか、と思う。とにかく結論ありきで都合の良い考えや風景、データのみをピックアップして分析も何もなく自分の考えを勝手に展開してるだけだった。やっぱ○○社の新書はこんなもんか、という感じ。
     まぁでも、車社会と情報化社会での物欲を満たし都会とのギャップを埋めてみせようとした成れの果てがああいった国道沿いの風景だというのが嫌、という点は共感する。どうせ持論を述べるだけなら、それを果たしてどう変えることができるのかという所を詳しく言って欲しかった。

    あと、最後に。著者は岡田一族に何か恨みでもあるのか?w

  • 東京になくて地方にあるもの、それは「ジャスコ」。旅先で「ジャスコ」に行くと、「旅行に来た!」って感じがするようになったのはいつからだろう。が、駅中心部からちょっと外れたロードサイドでは同じような店が立ち並び、自分がどこにいるのかわからなくなるのも事実である。これらのファスト風土化された風景は、田舎は何もないという固定観念を覆し、全国どこでも「全然暮らせるじゃん」となる。実際地方は疲弊なんかしていない。消費意欲が旺盛で支出も増えているというデータは興味深い。
    数々の殺人・誘拐事件を検証し、「理解できない事は東京ではなく地方で起こる。東京は最も安定した地域であり郊外化した地方こそが最も危ない。」その元凶が「ジャスコ」なのである。この決め付け感、論理の飛躍を非難する事は簡単ではあるが、この壮大な仮説を完全に否定できない事も事実だろう。
    消費社会化されてイカレた地方の人間は(一部の優秀な人間が公的職業に付くのを除いて)勉強もしない、働きもしない、でもモノに溢れそれなりに豊かだから現状維持でいいと思っている。で、TVばかり見て、車を乗り回し、汗もかかず、都会人よりバーチャルな暮らしをし、結果堕落し、街は破壊されている。だから犯罪が起きるんだ!とまあ過激な論調なのだが、当事者の地方人はどう思っているのか?自分の街がファスト風土化されていく事をどう思っているのか?
    本書は問題提起だけして提案がない。との批判がある。が、地方や地域には各々個別の実情もあるだろう。このままジャスコに頼って生きていくのか?駅前の商店街を復活させるのか?「ジャスコは街を作らない」という前提にたち、地域が破壊されている現状認識と解決策は各々の地方で考えるべき問題なのだろうと思う。

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