反戦略的ビジネスのすすめ

著者 :
  • 洋泉社
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896918670

感想・レビュー・書評

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  • 平川克美さん『反戦略的ビジネスのすすめ』読了。
    10年前の2004年に出版された本ですが、
    今、現在、私がぐちゃぐちゃと悩んでいることに対するヒントがつまった一冊でした。
    ハウツー本でもなく、マニュアル本でもなく、
    ビジネスの本質とは何なのか、ということが考察されていました。

    以下は、私の備忘のためのメモです。

    ≪わたしがいいたいことは、実は「ビジネスはお金のためだけじゃないよ。もっと崇高な目的があるはずだよ」ということではありません。ビジネスを「お金」であれ、「達成感」であれ、あるいは経営者の自己実現であれ、明確な目的が事前にあるものだとする考え方そのものが、ビジネスをつまらなくさせている原因のひとつであるということなのです。≫(p.17)

    ≪ビジネスプランというものがあります。マイクロソフトのプレゼンテーションソフトである「パワーポイント」には、ビジネスプランのテンプレート(雛形)が組み込まれています。
     それには、会社の使命、プロジェクトチーム、市場分析、ビジネスチャンス、コンセプト、競争、ゴールと目標、財務計画、必要なリソース、リスクと利益といったサブタイトルがあらかじめ用意されて並んでいます。
     ここにはビジネスに対するアメリカ型の典型的な要素還元型思考が現れています。(中略)ここには会社の設立に関する要素がきれいに分解されて、それを読む者に対してわかりやすいロジックで並んでいます。ただひとつのわたしが知りたいことを除いて。≫(p.29~p.30)

    ≪わたしは、人がその力を発揮するためには、自らの仕事への敬意と自らがフルメンバーであるところの会社に対する信頼が必須の条件であると考えています。そして、この敬意とか信頼というものの源泉こそが、フルメンバーが共有している「会社の哲学」なのです。会社のフルメンバーである社員は、「会社の哲学」を共有することにより、その「哲学」に対する責任を引き受けます。≫(p.50)

    ≪米国の企業に勤めたことのある人になじみのある言葉に「ジョブ・ディスクリプション」というものがあります。これは、就業時つまり会社と個人が契約する際に使われる言葉で、会社は個人に対して仕事の範囲と目標=ジョブ・ディスクリプションの遂行を求め、個人は会社に対してそのジョブ・ディスクリプションに見合った報酬を求めます。個人がこのジョブ・ディスクリプションに見合った遂行結果を出さなければそれは契約違反であり、会社はその個人を解雇する権利を行使できるわけです。逆に会社は、その個人が一生懸命仕事に邁進しなくてもジョブ・ディスクリプションに示された目標を達成できていれば、契約に定められた報酬を支払う義務があります。
     この企業と個人の関係こそが、アングロ・サクソン的な会社経営の性格を決定しているように見えます。(中略)
     米国型の企業の成長や縮減はその構成メンバーの成長や縮減ではなく、買収や合併、レイオフといったいわばメンバーの入れ替えによって実現するものであり、その限りでは成長という言葉が持つ生物学的な自己超克のダイナミズムといったものとは無縁のものであるといえます。≫(p.127~p.130)

    ≪人がダブル・スタンダードを要求するのは、必ずしも透明で公平なシステムを求めているからというわけではありません。誰だって、シングル・スタンダードなどというものがひとつの虚構であることは知っているのです。
     それにもかかわらず、ダブル・スタンダードじゃないかと糾弾の声を上げる理由はひとつしかありません。それは、ダブル・スタンダードはいつも自分に不利に働くという印象を持っているからです。(中略)
     理由は簡単です。人はダブル・スタンダードというものは事実として自分に不利に働くからそのような印象を持つわけではなく、人はどんな他者の評価に対してもそれが不当であると感じるものなのです。そして、身近なところにダブル・スタンダードというものがあることを事後的に発見して、これこそ不当の原因であると思うのです。≫(p.149)

    ≪実際のところ、給与システムの透明性とは、その給与に人為的なファクターがなるべく入り込まず、自動的に決定される度合いが高ければ高いほど確保される、という暗黙の合意が働いていると考えていいだろうと思います。
     これは、実に面白いことだといわねばなりません。本当は誰も社員を評価して給与を決めるなどということをしたいとは思っていないのです。≫(p.153)

    ≪変な話ですけど、その価格がたいへんよく理解でき、その性能がスペックにみごとに表示されており、価格設定もまことに合理的……というような商品はむしろ売れないんじゃないですか? たとえば、ユニクロは何年か前にフリース二千万着という驚異的なセールスを記録しましたが、その現象をほとんどの評論家は「品質のわりに価格が安い」という「割安感」によって説明しました。でも、消費者の本当の気分を言葉にすると、「どうしてこんなに安いのか、その合理的理由がわからない」ということがむしろ鍵だったのではないでしょうか? つまり、商品の価値の「考慮不可能性」が「もう一度ユニクロに行かねば」という消費者サイドの焦燥感に点火したということはなかったのでしょう?≫(p.194)

    ≪野口先取はレース中盤の二十五キロ付近で早すぎると思われるスパートをしました。この「戦略」がみごとに的中し、野口選手は計ったように追いかけてくる百戦錬磨のヌレエバ選手を振り切ってゴールしました。
     翌日のテレビでは、この「戦略」について解説者やタレントがあれこれと解説を加えています。はたして野口選手は、この「戦略」によって、勝利したのでしょうか。
     わたしはこういいたいと思っています。
     野口選手が勝利したことによって、このスパートが「戦略」のひとつであったと事後的に確認されたのだ、と。
     野口先取が勝利した原因は、おそらく数えきれないぐらいたくさんあったはずです。(中略)挙げてゆけばきりがありません。こういったさまざまなものが結集して、それがひとつの結果として表現されたわけです。
     それでも人はひとつの結果に対してひとつの原因を求めたがるものです。そこで人々が注目したのが、二十五キロ付近のスパートという「戦略」だったということにすぎません。考えてみれば、この「戦略」自体を可能にしたのもまたれんしゅうの蓄積や関係者の支え、シューズやコンディションであったわけです。
     問題なのは、「戦略」をクローズアップするということはその他の無数にあった条件を隠蔽してしまうということなのです。≫(p.216~p.217)

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    当今、ビジネスの世界では、グローバリズム・スタンダードを意識した、短期的な将来に目的を設定する「戦略論」「ゴール思考」といった思考法が流行している。この思考法では、ビジネスは敵を出し抜き、勝ち負けを決める戦争であると考えられているが、しかし、本当にそうだろうか?  本書では、攻略しないという方法にこそ成長のヒントがあることを、「仕事とは何か」「会社とは何か」「人はなぜ働くのか」「なぜ人はお金を欲望するのか」「モチベーションはどこから来るのか」などの本質的な考察を通してビジネスというものを再定義することによって証明し、反戦略的なビジネスのあり方といったものを提案する。 また、畏友・内田樹(神戸女学院大学教授)とのビジネスをめぐる特別対談も収録。
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  • タイトロープがどこにあるか探るための道具がたくさん提供されているというか。2004年出版の本。2011年の今読んだ僕にとってはかえってより分かりやすくなった状況がすぐ目の前にあるなという感じがする。ビジネス書ではなく、内田さんが別の所で書いていた平川さんの本は詩学ということに納得。二人の普段から呼応する関係がことば使いやタームに現れて展開している空気も感じられるようで興味深い。

  • 2006/11/13/265*174

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