白洲次郎的 (新書y 124)

著者 :
  • 洋泉社
2.81
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本棚登録 : 103
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896918748

感想・レビュー・書評

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  • 読んでおいて損はない

  • 最初の数10ページを読むと、白洲次郎という人物の人となりを知ることができる。これが収穫だが、それ以外は、なんともページをめくるのがもどかしい本だった。白洲次郎という名を借りて著者が「自分」を主張しているのだろうか。小説に私小説があるのであれば、これは私随筆だ(どうやらこの人の特徴のようだが)。個々の文には、良い表現が多いのだけれど、文章として読み続けると余計な言葉が多すぎる。最後の方は随筆の枠を超えて支離滅裂な印象しか残っていない。まぁ読み手の技量が足りないということにしよう。

  • 2016.3.15
    せこさんの本はこれで二冊目である。いかに生きるべきかという問いに対するひとつの例が、白州次郎を通して提起されている。三浦綾子さんの小説の引用も彼は多々するが、三浦さんの本もせこさんの本も、私には読むとどこか心が熱くなる一方で悲しくなるというか凹んでしまう自分がいる。憧れてしまうのか、嫉妬してしまうのか。所詮人間生まれて死ぬだけ、各々が自己満足に生きるのみでそこに意味はないというのは私も思うところではあるが、しかしそんな人間の中にも確かに美しい、かっこいい人間とそうでない人間がいて、私はあわよくばかっこいい人間になりたいと思う欲望があるのである。しかし真にかっこいい人間というのは、そんな欲望なんで持たないのだろう。ただ己であることだけで、美しいという人間なのだろうと思う。なりたい、そう目指し、意識し、努力する時点で私はもう本物にはなれない。そういう努力が私の習慣になって私の自然を作るということがあるのだろうか、いやそれでも生まれ持った気性というのもあるし、限界はあるだろう。何より俺は俺であり白州ではない。しかしそれでも彼から学ぶことは多い。ひとつは、自己愛人間、自意識人間を止めることである。醜い人というのは自己顕示欲とか承認欲求とかが強い。つまり自分を認めてほしい、自分が一番、という人間である。自分が一番で他者がそれ以下なんだから自分優先で情も義もなくなる。従うべき仁義を知りながらもこのような人間は自分の欲望に負けてしまう。次に自己の良心への信頼である。これはひとつめの課題をクリアしてこそ為せるものではないか、なぜなら良心に従い欲望に抗う生き方、いやそもそも良心に相反する欲望自体を持たない生き方ができなければ、良心に従いきれずどこかで自分に負ける、すると自己への信頼感は下がるからである。そしてみっつめに、これらを自然状態とすることである。当たり前にすることである。ここへの道は意識化による習慣によるのか、はたまた別なのかわからない。しかしひとつは、人間、いきなり人が変わるということがある。それは言わば、生まれ変わるようなものだ。そしてそのためには、蛹が一度体をすべて液状にしてから再構築して蝶になるように、一度精神的な死を迎えねばならない気がする。それはそれまでの自己の価値観の強烈な否定及び崩壊、自己がゼロになることである。そのような契機を通してしか、人間の奥の部分は簡単には変わらない気がする。私にはこれらのどれもない。自意識過剰で自分大切人間である。自分の良心は罪悪感により腐ってしまっていて、自己によって立つという自信、自己信頼感がない。自然状態でもない。しかしそれでもやはり、このような美しい生き方、美しいあり方というものを諦めきることもできないし、したくないのである。自己に寄りかからずしかしよって立ち、自らの原則に従い根拠がなかろうと周りが否定しようとそれと決めたらそれでいく自信、それを素でやれる男に、そんな強い男に俺もなりたい。自信がほしい。そう、きっとこれなのだ。誠実とか愛とか、そういう美徳もだが、一番はやはり自信ではないだろうか。自信には根拠がいる。それは自己に打ち勝ち、間違っていない行動をしているという根拠である。根拠を育てるのは行動である。つまり自己に負けない行動、自己に勝ち続ける行動である。その勝負は、自己愛が強ければ苦戦であり、そのような自己愛欲求がなくなったとき初めて、その戦はなくなり、自然状態となる。過剰な自己愛欲求をなくすこと、良心に従った行動により根拠ある自信を育てること、これが道ではないか。ではそれは、特に自己愛欲求を抑えるのはどうすればいいか、それは今後考えるべき課題だろう。1人のかっこいい男を通していかに生きるべきかを考えた一冊。

  • なんともいえない。なんとも、かっこいい。
    いや、白洲次郎はもちろん、少し出てくる新吉もかっこいいし、なにより著者がやっぱりかっこいい。
    どこまでも、ほんとうだ。正論であり、正論でありすぎる。でも、そんな不器用さも人間である。
    勢古さんっぽく書くと、そんな感じか。

  • GHQに対しても怯まず、言いたい放題であった白洲次郎。それでも弱者に対して優しく、自分の中のプリンシプル(原則)に従って生きた白洲次郎。彼のエピソードから学べることは多いと思う。ブレないことの強さを改めて感じた。

  • 白洲次郎に興味があって、というよりも、勢古浩爾氏が好きで購入。

    「白洲次郎」という一人の男性の佇まいに、氏が他の著書でも繰り返し述べている「ふつう」の生き様を重ねたもの。
    従って、単純な白洲次郎分析や伝記の類、ましてや諸手を挙げた礼賛などでは全然ないので、次郎ファンには物足りないんじゃないかと勝手に思っています。って云うか結局メインは勢古人生論です。

    同調されないと不安で、批判されると腹が立って、それどころか自分と違う意見を言われただけで不快で、そうやって周囲の評価にいちいち一喜一憂してしまうのは確たる「自分」がないからで、なくはなくても脆弱で、一度傷つけられたと感じたら傷つけた相手を土下座させんばかりの大騒ぎで、そのくせ「自分」を確かなものにすること強固なものにすることには無頓着で。
    とまあ何だかとかく生き辛い現代人に提示される「白洲次郎」の存在。
    それはもうかっこいいですわ。

  • 白洲次郎を崇拝しすぎず、踏みとどまっている点は好感触。
    しかし良いことを言っている風ではあるのだが、何故か内容が薄い印象。

  • [ 内容 ]
    自分の生とはまったく無縁の他人への関心はなぜ生まれるのか?
    人間は他人の中に同類をさがす。
    そして自分には及びがたい存在を発見し、彼に自分の理解者を見出し、人間そのものに共感したがっている。
    本書の主人公・白洲次郎はまさに本物の人間、信じるに足る存在なのだ。
    首尾一貫しない人生のなかで、この男はどこまでも首尾一貫している。
    正義感が強く、曲がったことがきらいで、ウソをつかない。
    虎の威を借る尊大な人間を蛇蝎のごとくきらい、それでいて下積みの人間や女や子どもには無類にやさしい。
    こんな男が日本人にいた!勢古人生論の真骨頂を伝える会心作。

    [ 目次 ]
    第1章 一生
    第2章 手本
    第3章 原則
    第4章 無名
    第5章 成熟
    第6章 熱情
    第7章 意味

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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 白洲という男はなぜカッコいいのかを考察した本。論説文より感想文に近いような。この一冊だけでは何とも言えません。
    時折独り言のように感じる筆の運びが気になるところ?裏表紙のプロフィールを見ると理由が分かる気もしますが。

  • 全然面白くなかった。こんな本にお金を払ったことを後悔したくらい。要するに、白洲次郎「的」に自分の言いたいことをダラダラと書いているような本。それはそれでしょうがないのだろう。「的」だ、と最初に書いてある訳だし。ただ、文中にはプリンシプルが全く感じられず、論点が不明確な場面も多々あった。なぜそこでそれを引用するのか、と思わざるを得ない、いささか強引な展開も目に余った。結局は何を言いたかったのか、いまいち分からなかった。そんな本。

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著者プロフィール

1947年大分県生まれ。明治大学政治経済学部卒業。洋書輸入会社に入社したが2006年に退社、執筆活動に専念。「ふつうの人」の立場から「自分」が生きていくことの意味を問いつづけ、『まれに見るバカ』(洋泉社・新書y)で話題に。その後も『アマチュア論。』(ミシマ社)、『会社員の父から息子へ』(ちくま新書)、『定年後のリアル』(草思社文庫)など著書多数。

「2017年 『ウソつきの国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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