- Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
- / ISBN・EAN: 9784896949476
作品紹介・あらすじ
"十二世紀ルネサンス"以降中世の大学はいかに育まれたか-謎の多い起源から、初期の制度や教育内容の詳細、さらには学生の生活の様子にいたるまで、誕生まもない大学の姿を、西欧中世における知的復興の成果として軽妙に活写した名著。重要な関連史料の抄訳も併録。
感想・レビュー・書評
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朝日新聞の天声人語かあるいは現在の改悪大学法案についての新聞記事での紹介であったかもしれない。
大学の起源ということで、フランス、イタリア、ドイツが主要であり、そこでの学生と大学教員のやり取りが主で、寮が後からできたということは注目してもいい。ということは、日本では松下村塾のようなものであり、日本ではこれを大学の起源としてもいいと思われる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2022I003 377.23/H
配架場所:A4 -
通史としては標準的な感じなのかな。たしかに「軽妙」な感じがあったのだが、むしろスッキリ書いてくれたほうがありがたいかも。
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大学があるのは当たり前のことではない。かつては大学など存在しない時代があり、学ぶ意欲を持った学生たちが集まって組合(ユニヴァーシティー)を作った。学生組合は、教師たちに授業料に相応しい講義をさせるための武器となり、町の人々から経済的不利益を被らないようにするための盾となった。まるで千年近く昔にタイムスリップしたかのように、当時の学生たちの様子が生き生きと伝わってくる本である。
(選定年度:2019~) -
勉強になった。おもしろかったところを一箇所だけ引用しておく。
「パリを去る時が来ると、このような学生たちは学識を見せびらかすために、広い余白と立派な赤い装釘の子牛皮の大きな本を集め、書物の入った賢い袋とからっぽの頭をもって帰っていくのである。『盗賊が盗み、ねずみやシミが食いつくし、火や水が破壊するこのような知識とはいったい何であるのか』と説教師は問うている。そして彼は、学生の馬が川に落ち、書物すべてを流してしまった例を挙げている。」113-4頁 -
最後の大学記録(資料)はとても参考になる。学芸学部の教授科目に関する情報は意外に少ないからだ。
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中世に自然発生した研究と教育のための機関「大学(universities)」の成立をコンパクトに解説した本。講義がもとになっているのですごくわかりやすい。第一部「大学制度の発生」は、現代まで残る大学の仕組について。第二部「大学教育」は、七自由学芸(seven liberal arts)を中心とした当時の教育や教科書、それから主に教師について。最後の第三部「学生の生活」では、今も昔も変わらず生き生きとした若者の姿を紹介しています。
訳者あとがきには、初訳当時(1970年)おそらく最盛期の終わりにさしかかっていた学生運動との関わりが見て取れます。大学という存在を問い直すきっかけとなった運動に対する、一つの答えとしての訳業。翻訳ってこういうところにふっと時代性が出たりするのでおもしろいですね。ちなみにもととなった講義は1923年のものだそう。あと、訳者が付け加えた巻末の「大学記録(資料)」部もおもしろかったので、翻訳としてはなかなかいい仕事をしてくれたんじゃないでしょうか。
次は同著者の『十二世紀ルネサンス』を読むつもりなので、いい準備運動になったような気がします。