生命に仕組まれた遺伝子のいたずら (東京大学超人気講義録 (file2))

著者 :
  • 羊土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784897064987

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  • 遺伝子欠損による障害は、アルツハイマー、ダウン症、アスペルガー症候群、自閉症、色盲などさまざまである。本書の題名でいうところの「遺伝子のいたずら」とはこれらの障害のことであるので、当然ながら「いたずら」と呼べるレベルの問題ではない。であるのだが、内容を読むと「いたずら」と呼びたくなる理由もわかる。これらの障害を生み出す遺伝子欠損は、非常に軽微なのだ。たった一つの塩基配列(DNAの形成物質であるアデシン、チミン、 シトシン、グアシンの並び)の違いによってこのような障害が発生することがある。このような事実を知ると、我々が一応健常人として生きていることは、奇跡のような出来事であることがわかる。精緻な遺伝子コピー能力とエラーリカバリー能力に感謝せざるを得ない(すごいねー。こんなソフトを作れたらマイクロソフトに勝てるだろうな)。 本書の内容は、これだけに留まらず、最後の章では、意識と脳の関係についても言及する。すべての章で、興味深いテーマについて語られており、生物に興味ない人にも面白く読めるのではないか。 ただ、残念なのはこの程度の講義が、文系向けとはいえ日本最高学府で行われているという事実である。これでは東大生のレベルが下がったといわれても仕方あるまい。もちろん、この残念な結果と、本書の面白さにはまったく関係はないのだが。

  • 読書メーターからの引っ越し

  • DNAと遺伝子って違っていたんだ。DNAだけで全て分かるのではなく、遺伝子が作るタンパク質の性質も調べてみて総合的に分かるのか。等々。いろいろと遺伝子にからむ話題を取り上げ、最新の生命科学の知見を紹介してくれる。面白い。

  • ヒトゲノムがすべて解読できる時代になったが、その意味を詳らかにする研究は緒に就いたばかりである。分子レベルの進化から知的生命体が出現するまでの謎は驚きに満ちている。人智で解き明かす途方も無さ。文系の学生を対象にした講義録の形で、身近な話題から神秘の世界を紐解いていく。いまだ結論が出てない領域への取り組みへと紹介しつつ、将来の研究者への誘い、期待が込められている。意識が立ち上がるメカニズムには集約される部位の存在でなく神経網で網羅されたシステムで捉える理解を超越する不思議さがある。

  • これぞインタープリターというか、最前線の研究結果を見事にわかりやすい言葉で説明している。
    文系の一年生向けの講義ということで「とりあえずこういうものとして・・・」と、詳細を端折る事が多いが、逆にそれによりインパクトのある事実、仮説がどんどん飛び出してエキサイティングな講義になっている。
    ちょっとピックアップしても
    ・自閉症を診断する「サリーとアンの実験」という実験がある
    ・薬とグレープフルーツは一緒に飲んではいけない
    ・カロリー制限で寿命が延びるのは確実らしい
    それでも4年前の本。知見をすぐにアップデートしたくなる。
    良い学校にいくのは良い授業を受けるためだ、というのは一面の真実と思う。

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著者プロフィール

石浦 章一(いしうら・しょういち):1950年石川県生まれ。東京大学教養学部基礎科学科卒業、東京大学理学系大学院修了。理学博士。国立精神・神経センター神経研究所、東京大学分子細胞生物学研究所助教授、東京大学大学院総合文化研究科教授を経て、東京大学名誉教授。新潟医療福祉大学特任教授、京都先端科学大学特任教授、同志社大学客員教授。専門は分子認知科学、分子生物学、生化学。難病の解明をライフワークに、遺伝性神経疾患の分子細胞生物学研究をおこなっている。著書に『理数探究の考え方』(ちくま新書)、『小説みたいに楽しく読める生命科学講義』『遺伝子が明かす脳と心のからくり―東京大学超人気講義録』(羊土社)、『運動・からだ図解 脳・神経のしくみ』(マイナビ出版)、『タンパク質はすごい! ―心と体の健康をつくるタンパク質の秘密』(技術評論社)、『王家の遺伝子―DNAが解き明かした世界史の謎』(講談社ブルーバックス)ほか、多数。

「2024年 『70歳までに脳とからだを健康にする科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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