お言葉ですが… 別巻 2

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  • 連合出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784897722436

感想・レビュー・書評

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  • 例えば、昔の児童書は漢字だらけであったこと。
    文字も小さく読みにくいうえに、難しい漢字がたくさん使われていた。
    けれど、漢字にはすべて読み仮名(ルビ)がふられていたので、ひらがなが読める子は、その難しい感じを読むことができた。

    戦後、いろいろな物資が不足していたあおりを受けて、本から読み仮名が消えた。
    児童書はひらがなだらけになった。
    そして難しい漢字は淘汰されていったのだった。

    漢字は難しい。だからもっと簡単にすべきと考えて、当用漢字が導入された。
    最終的には日本語から漢字を駆逐することが目的で、だから、当面の間使用するつもりで制定された当用漢字。
    本来の感じの意味や読みや書き方などを全く無視して作られた当用漢字の、誤りやわかりにくさなどをこれでもかと書き連ねた「戦後国語改革の愚かさ」
    大変に勉強になりました。

    日本だけではなく、中国も同じような動きがあったために、中国で使用されるようになった『簡字体』の漢字。
    もはや何の漢字が書かれているのか、日本人にはわからない。

    対して、もともとの感じを全く変えることなく現在も使っている台湾。
    なんとなく言わんとすることは伝わるんだよね。

    高島俊男曰く「話し言葉が変わっていってもいい。書き言葉は保守的でなければ、過去の日本人と繋がることができなくなる」
    日本がこの先旧字体の漢字に戻ることは難しいと思うけど、これ以上簡単な方に流れない方がいいとは思う。
    もっと日本人の漢字能力を、政府は信じるべきなんじゃないの?
    書き文字は筆記体として簡単な文字にしてもいいけど、漢字の本来の意味は、もうこれ以上壊さないでほしいと私も思う。

    それから「宋江實錄」
    水滸伝の中心人物である宋江の、実際の姿を歴史書から読み解く。
    ただ今北方謙三の「水滸伝」を読んでいるところだけど、全然違うの。
    元々北方謙三の「水滸伝」は原著とは解釈が違うことを売りにしていたところはあったのだけど、宋江って特別凶悪な盗賊だったとはびっくりですわ。
    だって、北方「水滸伝」では思慮深くて温厚だからね。

    ただし、「水滸伝」が生まれた背景は、わかりました。
    宋の前の唐の時代、力をつけすぎた地方軍隊の反乱によって国が滅んだということを踏まえて、敢えて宋は地方の軍隊を弱体化した。
    強い軍隊は禁軍(皇帝を守る軍)だけでいい。地方は力をつけてはならない。
    その結果、地方では多くの盗賊が跋扈することとなった。
    地方政治の乱れは役人の汚職を生み、庶民だけが苦しい生活を強いられることになった。

    っていうのが「水滸伝」の背景。
    タイムリーに読めてよかったわ。

  • 国語改革批判など。

  • 高島俊男氏の『お言葉ですが…』別巻2册目。例によってどれも面白い。「戦後国語改革の愚かさ」という題で括られた7編がなかなか勉強になりました(もちろん、すぐ忘れますが)。

    あと、皇后(美智子さま)が詠んだ歌に心を打たれたことを書いた「選ばなかった道」が印象的でした。正確に言えば、皇后の歌そのものに、私も心を打たれたということです。

    かの時に我がとらざりし分去(わかさ)れの片への道はいづこ行きけむ

    人間誰しも人生を振り返って、あのとき別の道を選んでいたらどうなっていただろうか、と思うことはあります。後悔しているということでもなく、今の幸不幸とも関係なく、そういう感慨はあるということはわかりますが、立場が立場ですから、いろいろなことを考えさせられました。皇后は、きっと強い人なんだろうと思います。受け止めてくれる夫への信頼がなければ詠めない歌だとも思いました。

  • 相変わらずの名調子。
    たそがれ清兵衛なる映画に文句をつけているのが面白い。灰神楽を立てるのに26回も撮り直すほど「こだわり」の映画作りをするくせに、登場人物のセリフやら手習いの机の並べ方などの考証にはまったく無頓着というおかしさを指摘している。

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著者プロフィール

高島 俊男(たかしま・としお):1937年生れ、兵庫県相生市出身。東京大学大学院修了。中国文学専攻。『本が好き、悪口言うのはもっと好き』で第11回講談社エッセイ賞受賞。長年にわたり「週刊文春」で「お言葉ですが…」を連載。主な著書に『中国の大盗賊・完全版』『漢字雑談』『漢字と日本語』(講談社現代新書)、『お言葉ですが…』シリーズ(文春文庫、連合出版)、『水滸伝の世界』『三国志きらめく群像』『漱石の夏やすみ』『水滸伝と日本人』『しくじった皇帝たち』(ちくま文庫)等がある。2021年、没。

「2023年 『「最後の」お言葉ですが・・・』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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