ブラームス: 人はみな草のごとく (作曲家の物語シリーズ 7)

著者 :
  • リブリオ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784897841663

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  • 子供の本かなと外観から思ったが、本当に中身が深かった。
    ハンブルクに1833年に生まれたブラームスは20歳でシューマンに会い、「新しい道」いう論文で紹介されるまで世間に音楽家としての名を知られていない人だった。ハンブルクの貧民街に住み、15歳ころは港町で船乗りを相手にピアノのアルバイトをして家族を助けている。その生活の中でも、マルクスゼンというすばらしい先生にピアノと理論、作曲を無償で教えてもらい、もともとの彼の才能に大きな基礎を教えた。
    20歳までの作品は、彼の潔癖な性格から破られたものが多くあまり見られず残念だが、派手な社交を嫌った性格だが、人と深い関係を結び続けた人柄がこのハンブルクの子供時代に育ったことがこの伝記を読むと納得できる。
    世の中に真に認められるきっかけとなったのは、「ドイツ レクイエム」である。その後、経済的にやっと困らなくなる。人々が涙を流して聴いた音楽、人々を真に慰める音楽であった。20歳ころから、尊敬する恩師への想いとその妻への報われない愛情、両方を抱え続けたというだけでも、彼の精神は成熟し、やりきれない思いを若くして多く知っていたことが想像できる。残る手紙からは実直で熱い人柄が感じられる。苦しみながら誠実であろうとした人だからこそ書ける音楽だったのではないか。
    その後、ウィーンに住む時間が長くなるが、5月から9月、別荘で過ごす時間にたくさんの名曲が生まれることになる。弦楽四重奏、ピアノ協奏曲、リートなど名曲が生まれていくが、交響曲は42歳ころから、4番までで、書き始めるのに20年以上の準備構想がかかったと言われる。
    よく人に冷たかったなどの記述も見るが、けしてそうではなく、育ちへの劣等感もあり、軽い付き合いにあまり意味をおかず、人との関係は濃厚で場が深い人だったように思った。時に冷たく見えるのは、不器用な性格から、
    また、音楽を最重要として他のものを切り捨てる選択態度からと思われた。
    ブラームスの音楽は新古典学派と呼ばれる。彼の人柄同様、軽い気持ちで作品は残されていない。推敲を重ね、発表されても、演奏する中でさらに推敲を重ねている。古典の形式を重んじている。そして人を癒す力があると感じた。

  • ブラームスの曲を演奏するから読んでみた。演奏する曲のときの話がなかったのが残念だったけど、若い頃はいろいろあったんだ〜と…。ありきたりだな。恋愛に関してがせつないな。

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著者プロフィール

■著者について
ひの まどか
音楽作家。東京生まれ。東京藝術大学器楽科(ヴァイオリン専攻)卒業。東京ゾリステンほかでヴァイオリニストとして活躍。東京藝術大学、故小泉文夫教授の下で民族音楽を研究。その後、作曲家の伝記や小説、音楽解説などの執筆活動に入る。現地取材がモットーで、「作曲家の物語シリーズ」(リブリオ出版・児童福祉文化賞を2度受賞)は全20巻中、19巻を手がけた。主な著書に『星の国のアリア』(講談社)、『総統のストラディヴァリ』(マガジンハウス)、『戦火のシンフォニー』(新潮社・第25回新日鐵住金音楽賞特別賞)。原案・監修に「学研 音楽まんがシリーズ」などがある。

「2020年 『音楽家の伝記 はじめに読む1冊 チャイコフスキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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