うたたね

  • リトル・モア
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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898150528

感想・レビュー・書評

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  • クリームソーダを連想させるような白と水色の表紙に惹かれた。川内倫子の写真集。彼女の撮った写真を見るのは初めてかもしれない、どこかで目にはしていると思うけど。

    ページを開いて一瞬、なんとなく美しげなつるんとしたよくある写真かと思ったら大間違いだった。

    いや、たしかに”きれい”ではある、でも不穏も不穏。いやむしろ、不穏がテーマなんじゃないか。"うたたね"してる場合じゃない。

    ハトやハチやチョウの死骸は転がっているし、割れたスイカ、パンクしたタイヤ、落雷、枯れかけのヒマワリ、人形の首。
    しょうじき気持ちの悪い写真もあって、群がる鯉の口、フライパンの上の複数の目玉焼き、少年の体にとまっているおびただしい数のハエ。
    そうした多くの不穏なものたちがしばしばクリームソーダっぽい色調で撮られている。なんだこれは。静かな写真ばかりなのだけども心はざわつきまくる。

    こうした生理的に訴えかけてくる被写体をひとまずむりやり( )に入れて、もう一度見直してみると、今度はこの写真集が形や運動(向き)の類似性によって編まれていることがわかってくる。

    ひとつは、円。ドアの覗き穴、卵の黄身。鯉の口。シャボン玉、イルミネーションの光の粒。スイカ、砂の穴、タイヤ、ボール、風船、他にもある。

    もうひとつは、垂直な運動。落雷と、ミシンの針の動き。クラッカー、木の根っこ、腕の血管、そよぐ柳、花火。
    それから、回転。洗濯機の中の渦。渦巻く雲。タイヤ、なわとび。
    探せば他にもありそう。

    いつのまにか虜になって本書を手放せなくなってしまった。自分の深層意識のどこかとじかにつながってしまった、あるいはすでに根を張ってしまったような、手遅れな心地。

  • 組み写真の使い方が新しい。

    真黒な写真と、クラッカーが弾ける瞬間の組み写真。

    蝶が踏まれて死んでいる写真と、植物の茎をはさみでパチン。

    二つの像から「感覚」が浮き上がってくる。

  • “死んでしまうということ”という副題ですが、
    わたしには生の力に溢れている写真たちが多いように感じられます。
    ここのところ命の終わりを意識する出来事がいくつか続いたので、
    そんなときには、太陽に向かってまっすぐに伸びていく
    植物のような生命力を感じることもひつようだ。

  • こういう写真が好き。強くて、儚い、生命というような透き通った写真集。

  • ふんわり。透明。優しい。残酷。

  • 木村伊兵衛賞受賞作。
    川内倫子さんのすべてがつまった一冊。
    現実と夢の中間。

  • 日常を切り取っているなーと言う感じ。
    でも、この写真集のサブタイトルは、『死んでしまうこということ』なんだよな。。。

    ダイレクトに伝わってくる以外に、
    冊中、表紙の写真と見開き隣になっていた写真。
    これに、サブタイトルを感じた。

    一枚だけ、ものすごい苦手な写真があった。
    あれもサブタイトルを彷彿とさせるかもしれないが。。
    夢に出そうで、怖い。。

  • 左右見開きのページどうしで二枚の写真が感覚的に共鳴しあうの面白い

  • 表紙みたいなやわらかい穏やかな内容なのかなって読み始めると、生と死、美しさとおぞましさが並列に提示されていて、作者のまなざしに鳥肌がたってくる

  • 鯉、雲、カラス、カーテン、おじいちゃん、タイヤ、目玉焼き・・・・・etc、何気ない風景、日常を切り取った写真集。川内倫子、三部作Vol.1。

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