- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784898152980
作品紹介・あらすじ
大きな流れに運ばれる、人びとの声。圧倒的な密度でうねりくる、文学体験。すぐ隣には、夜よりも暗くて大きい脅威が、たしかに存在していた。女の子がぎゅっとつかんで放さないものは何か。あの遠くの列車の音は。フェンスに囲われたバラックで、弟妹が目にしたものは。崩れ落ちてくる世界全体を受けとめた、ちいさな者の姿を描き、災厄にくだかれた、生のかけらを掬う。著者のあらたな到達点。
感想・レビュー・書評
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冒頭の文章がとても好き
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ユダヤ人の強制収容所でおきた悲劇、それそのものを語るのではなく、そこでの恐怖を、文学という形で読者に伝えることに成功している。不気味で幻想的な装画も、10編の短編が繰り広げる世界とマッチしている。
表紙裏や本体には表題作の仏訳語が印刷されており、各短編のタイトルはなく、紙質も途中で変わったりと、紙媒体ならではの試みがそこここにしてある。 -
時代も国籍も不確かな10の短編集。
タイトルすら与えられず、読み進めなければならない。
まるで暗闇の中を手探りで進むように。
「夜よりも大きい」のは何なのか。
耳について離れないラジオの砂嵐。
人々を柵の向こう側へと駆り立てるもの。
あるいは城壁の向こう側へと連れ去るもの。
貧困、戦争、疫病・・・?
いや、本当のところそれらのものは存在するのだろうか?
得体の知れないものに対する漠然とした恐怖と不安は、その相手が目に見えないがゆえに膨張していく。
気がついた時には世界のすみずみまでを覆い尽くしている。
子どもの方が夜と仲が良いということ思い出した。
子どもの心を抱えて今日も眠る。 -
『季刊 真夜中』という文芸誌の書籍紹介で手に取りました。ちょうど、小野正嗣さんの作品が気になっていたタイミングだったこともあって。
『真夜中』がアートディレクションに凝った雑誌なので、この本も、さりげなく凝った装丁。カバーイラストのイメージから、夜をモチーフにした可愛いめのファンタジーなのかな?と単純に思っていましたが…読んでいくうちに、漠然とだけど「怖い」という感じが強くなってきます。真夜中の暗い森や養殖池、フェンスの向こうといった場所は、「絶対あっちへ行っちゃいけないよ」と大人にきつく言われてるところ。でもいったん、「あっちには、大人の隠してる何かがあるんだ」と駆け出してしまうと、気がついたときには遠くまで来てしまっている…という感じに満ちている。章立ても、次に何が出てくるかを読ませなくて、不安をいっそうあおる感じです。
仏語ふうの長めのセンテンスで、舞台と登場人物の心情が説明され、それがぐるぐる回って混沌として、どこがどうなんだかわからなくなってくる感じ。正直、1度読んだだけではよくわからないことも多くて、何回も行きつ戻りつしました。ミステリのように、「すべては合理的に解決される」という明晰な流れではないし。でも、登場人物の恐れや混乱ややるせなさがごっちゃになって膨らんでいく感触や、「ああ…」と思うような厳しい状況で立ちすくんだり、来るべき「何か」を待ってる感触は、決してわかりやすくないけど、なんだか忘れたくはないような。
うーん、読後感とか、うまく言い表すことができない…甘くみると結構ヘヴィ、ということだけは言えるかも。単純な面白さではないけど、このぎゅっと濃密な感じは結構くる本だと思うので、この☆の数。
-----[2010.10.29 未読リストアップ時のコメント]-----
『季刊 真夜中』の書籍紹介で気になった本。ちょっと不気味な、でもファンタジックな雰囲気の装画が素敵。それに、「真夜中ブックス」ってレーベル名も、いいじゃないですか(笑)。小野さんの『浦からマグノリアの庭へ』を読みたい、でもちょっと高い…と迷っていたところだから、どうしようかな。 -
初次我不明白这是犹太人迫害的意义。
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2015 10/8