グスコーブドリの伝記

  • リトル・モア
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  • Amazon.co.jp ・本 (84ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898153413

作品紹介・あらすじ

清川あさみ絵本シリーズ最新作!

いま届く、宮沢賢治の希望。

賢治がイーハトーブと名づけた故郷・岩手。
そのイーハトーブの地をおそう、飢饉や火山噴火などの自然の猛威に、
知と覚悟をもって立ち向かうグスコー・ブドリの一生涯が描かれます。

たくさんの家族が楽しく暮らせるように。
―― そう願ったブドリの想い、東北の美しさと厳しさ。
賢治の作品発表から80年の時を経て、いま、清川あさみが鮮やかに甦らせます。

「この物語はひとりの小さな勇気あるブドリという男の子が立派に成長していくお話。
自然というものは最も美しく、最も厳しいという事をこの物語に教えられました。
このようなタイミングで日本の美学を表現出来た事を嬉しく思います。
イーハトーブの森と幻想的な美しい日本の風景を、
愛に溢れるブドリと一緒に体感して下さい。」
清川あさみ

感想・レビュー・書評

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  • 読みたいと思っていたものの、なかなか手に取れずにいたところ、かなさんより清川あさみさんのこちらの本をお薦めされていたのですが、やっとお取り寄せできました。

    やっぱり、素敵な刺繍アート作品!!
    人物が影絵のように配され、ビーズやスパンコールなど様々な素材を使って表現された表紙や挿絵。
    自然は美しくも厳しくて、そんな情景と共に懸命に生き抜いたブドリの、この作品に見事に融合されているように感じました!

    この物語はイーハトーヴの森に住む少年ブトリが主人公。
    両親と、妹のネリと共に仲良く暮らしていたのですが
    ブドリが10歳の頃、冷害で飢饉に見舞われ、食べ物も残りわずかとなった頃両親は出かけたまま行方不明に。
    妹のネリは人さらいに連れ去られ一人ぼっちになるブドリ。 
    家は「てぐす屋」に乗っ取られ、そのてぐす工場で
    養蚕業のような労働をさせられるも、火山の噴火で工場は閉鎖して一人放り出されてしまう。
    次に赤髭という山師に出会い、沼ばたけでオリザの苗を育てる作業をさせられるも、干ばつで立ちいかなくなり、やはり放り出されるという不幸な事ばかり。
    でも賢治の童話なので、それほど悲劇的な表現でなく描かれていて読めてしまうのが不思議なところ……。

    そしてそんな悲しく悲惨な境遇の中でも、仕事の傍ら本を読んだり勉学を続けながら過ごしていくブドリ。
    物語の終わり頃に、ブドリは火山局の技師を勤めていた27歳になった年に、あの恐ろしい冷害の再来の危機がやってきます。
    自分が10歳の頃の冷害の飢饉の辛さを思い出して
    考えに考えて
    人工的に火山を爆発させて
    炭酸瓦斯、を噴かせたら
    気候が暖かくなるのではないか……と、
    クーボー大博士や火山局のペンネン老技師に相談をし共に結論を出します。
    そしてそれは危険な仕事であってみんなに止められたとしても、誰かがやらねばならないと考え、ブドリがやりたいと志願するのです…。

    それから3日の後
    火山局の船が火山島へ行き、すっかりその支度ができると火山局のみんなを船で返してしまい、
    ブドリが一人島に残ったということ…。
    次の日青空が緑色に濁り、日や月が銅色になったのをイーハトーヴの人たちが見たということ…。
    それから3、4日して、気候がぐんぐん暖かくなってその秋は、ほぼ普通の作柄になったこと…。
    そんな描写が淡々と描かれます。

    でもそこでは主人公が死んでしまう場面なのに!
    「自分は一人島に残りました」だけの表現だけしかないのです…。
    読んでいて心がズキンと、痛みました…

    ブドリは冷害に苦しんだかつての自分たち家族のような悲惨な目に遭う人々がこの先続いてほしくない!!
    そんな強い願いと、技術者としての自分の使命のような想いで自分の命をかけたのですね…。
    私としては自己犠牲なんてやっぱり哀しい…と、
    割り切れなさも感じたのです…。
    でも、ブドリが仕事と共にいろいろ厳しい自然に立ち向かうために勉強や研究をして、また自分の身の上の不幸や不満などの感情表現の言葉も一切なく精一杯生きて…
    後の世の人々の幸せをただ願って、自分の意思で選び取った最後の決断はきっと、自分で満足したに違いないな…とも思えました。
    それは、明るい希望を感じられる文章が続いて終わりになっていた事からもそう、感じられましたから…。

    ブドリの生き抜いた姿に「雨ニモマケズ」が
    重なってみえました…

    昔に、こんな風に環境問題についても考えていた…
    宮沢賢治らしい壮大な世界観の童話だとも
    感じました。

    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      傍らに珈琲を。さん、こんにちは!
      そうなんですね、最近ブクログでお見かけしないな…と思ってましたが、お忙しかったんですね。
      読書ペースが一定...
      傍らに珈琲を。さん、こんにちは!
      そうなんですね、最近ブクログでお見かけしないな…と思ってましたが、お忙しかったんですね。
      読書ペースが一定の読書家さんもいますが私は、特に読書ペースに波が出てしまう事多いのです…
      私も忙しいとすぐそうなります…
      …お疲れ様でした…!

      で、傍らに珈琲を。さん、
      是非ともこちらの本、読まれてみてくださいね〜!
      現代社会は地球温暖化でCO2削減などをなんとかしようという環境問題は、誰しも知っていることですが、宮沢賢治が生きた時代は、今とは逆に東北地方は冷夏だったりで苦しんでる時代で、当時の多くの人達は知らなかったであろう事、地球を温暖化しようとするような自然科学的な仕組みを、すでに賢治は理解していたんだなぁとこの作品を読んで私は驚いたりしましたよ…。
      自己犠牲ということについてもまた、やっぱりテーマになってますね。

      傍らに珈琲を。さんも以前からこちらの本気にされてましたよね…。
      お取り寄せ、お薦めします〜♡
      あ、そうそう。太宰治のお勧めされていた本は、私の図書館いくつかにどこにも無くて、読めてないのですよね…(泣)
      2024/02/11
    • 傍らに珈琲を。さん
      チーニャさん、労いのお言葉有難う御座います♪
      同じく、私も読書ペースは波がある方だと思っています。
      気分も重なって、連日アップしたり4~5日...
      チーニャさん、労いのお言葉有難う御座います♪
      同じく、私も読書ペースは波がある方だと思っています。
      気分も重なって、連日アップしたり4~5日空いてしまったりです。

      この本、益々読みたくなってきてます。
      なるべく早めにお取り寄せしよーっと。
      清川さんのアートも毎回うっとりですしね。
      この本を読めたら、次は同じシリーズの『人魚姫』を読みたいなぁ。

      太宰本、そうなのですね。
      残念!
      いつかどこかで見掛けたら、お手にとってみてくださいませ。
      2024/02/11
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      傍らに珈琲を。さん
      はい、太宰本。なんとか探して手に取ってみようと思ってます!

      この作品と「人魚姫」の…♪
      レビューを私は楽しみにしてます...
      傍らに珈琲を。さん
      はい、太宰本。なんとか探して手に取ってみようと思ってます!

      この作品と「人魚姫」の…♪
      レビューを私は楽しみにしてますね〜♡
      2024/02/11
  •  清川あさみさんの刺繍アートとともに読む、宮沢賢治さんの物語「グスコーブドリの伝記」…。自然の美しさとともに厳しさをも表現されていて、素敵な作品になっています。

     主人公はグスコーブドリという、イーハトーブの森に木こりの両親の元に生を受けた男の子…。ブトリは成長し、イーハトーブの火山局で働くことになった…。そして、イーハトーブが冷害に見舞われたとき、ブドリがとった行動とは…。

     何とも切ないラストでしたが、しんみりと染み入る読後を得られたのは、清川あさみさんの刺繍アートを目にしながらだったからかもしれません。色々と考えさせられました。

    • かなさん
      チーニャさん、この作品も清川あさみさんが
      刺繍アートを手がけてますよ(*´▽`*)
      「銀河鉄道の夜」とは、また違った感じの仕上がりです♪...
      チーニャさん、この作品も清川あさみさんが
      刺繍アートを手がけてますよ(*´▽`*)
      「銀河鉄道の夜」とは、また違った感じの仕上がりです♪
      「銀河鉄道の夜」は、キラキラが印象的ですが
      こちらは、自然の脅威なんかも物々しく作品にしているんで、
      それが、また、すごくいいんです♪
      ぜひ、手にとってみてください♡
      2023/10/20
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      そうなんですね〜☆
      凄く気になりますね〜(✪▽✪)
      ありがとうございま〜す♪
      そうなんですね〜☆
      凄く気になりますね〜(✪▽✪)
      ありがとうございま〜す♪
      2023/10/20
    • かなさん
      チーニャさん、
      は~い、
      期待して読んでもらえる作品だと思います♡
      また、別の感じで楽しめますよっ(*^^)v
      チーニャさん、
      は~い、
      期待して読んでもらえる作品だと思います♡
      また、別の感じで楽しめますよっ(*^^)v
      2023/10/21
  • 宮沢賢治の物語を、アーティストの清川あさみさんが夢のような素敵な世界に仕上げている。
    賢治の物語に合わせて、清川さんがビーズ、布、糸等で創る刺繍作品に魅せられ引き込まれる。
    物語は飢饉や干魃、噴火といった自然の厳しさを訴えかけるもの。
    そしてそれらに懸命に立ち向かう主人公のブトリ。
    自然の美しさと、相反する過酷な現実を賢治から教わる。

    それにしても清川さんの作品の幻想的な美しさにはうっとりしてしまう。
    できれば創作過程も見てみたい。
    賢治の造り出したイーハトーブの森が清川さんの手により、キラキラした夢のような世界に生まれ変わる。

  • 清川あさみの「グスコーブドリ」は、どんな風に表現されるか楽しみですね。

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    「清川あさみ絵本シリーズ最新作!

    いま届く、宮沢賢治の希望。

    賢治がイーハトーブと名づけた故郷・岩手。
    そのイーハトーブの地をおそう、飢饉や火山噴火などの自然の猛威に、
    知と覚悟をもって立ち向かうグスコー・ブドリの一生涯が描かれます。

    たくさんの家族が楽しく暮らせるように。
    ―― そう願ったブドリの想い、東北の美しさと厳しさ。
    賢治の作品発表から80年の時を経て、いま、清川あさみが鮮やかに甦らせます。

    「この物語はひとりの小さな勇気あるブドリという男の子が立派に成長していくお話。
    自然というものは最も美しく、最も厳しいという事をこの物語に教えられました。
    このようなタイミングで日本の美学を表現出来た事を嬉しく思います。
    イーハトーブの森と幻想的な美しい日本の風景を、
    愛に溢れるブドリと一緒に体感して下さい。」
    清川あさみ」

  • ✨あらすじ✨
    グスコーブドリ(ブドリ)が農業で悩んでいる人々に対して、火山の噴火を調節することによって、雨を降らせたり、気温を調節して暖かくしたりして助けていた。

    しかし、順調に見えたそれも、ブドリが27歳の時、あの恐ろしい寒い気候がまたやってきた。

    ブドリは、クーボー大博士や農業技師たちと相談し算出した結果、カルボナード火山島が今爆発すれば、地球全体を平均5度温かにすることがわかった。

    しかし、その作業は最後の一人がどうしても逃げ遅れることが予想された。

    グドフは反対する周囲を納得させ、自ら火山の元に行くのであった。

    ✨感想✨
    先日『銀河鉄道の父』という作品を読んだのですが、賢治の農業に対する知識やまた、農業に悩んでいる人達を助けたいという気持ちが良く表れており、その自己犠牲の精神は賢治の様に法華経を毎日唱えたところで真似できるものではなく、もはや神に近いレベルの人間でないと出来ないと思いました。

    また、ラストの
    「そしてちょうど、このお話のはじまりのようになる筈の、たくさんのブドリのお父さんやお母さんは、たくさんのブドリやネリと一いっしょに、その冬を暖かいたべものと、明るい薪で楽しく暮らすことができたのでした。」
    の意味がいまいちわかりません。
    ブドリのお父さんもお母さんも亡くなっていますが、妹のネリは生きているので、天国で一緒になったと言う説は通りません。
    最後の一行はブドリの願望と解釈するべきなのでしょうか?
    誰かご存知の方がいらっしゃったら、教えて下さい、よろしくお願い致します。

    また、挿絵が立体的で色とりどりの素敵な画ばかりでした✨(抽象的でわかりにくい部分もありましたが)
    興味のある方はおすすめです

  • この時代にこれほど壮大な物語を描いたことにただただ感嘆する。美しくも儚く、しかし力強いはなし。

  • ビーズをちりばめた清川あさみの挿絵が魅力的な1冊。
    宮沢賢治の物語とみごとに融合している。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「みごとに融合している」
      厳しい話を、繊細で美しい世界が救って呉れているような気がします。
      「みごとに融合している」
      厳しい話を、繊細で美しい世界が救って呉れているような気がします。
      2012/08/23
  • 「賢治がイーハトーブと名づけた故郷・岩手。
    そのイーハトーブの地をおそう、飢饉や火山噴火などの自然の猛威に、
    知と覚悟をもって立ち向かうグスコー・ブドリの一生涯が描かれます。

    たくさんの家族が楽しく暮らせるように。
    ―― そう願ったブドリの想い、東北の美しさと厳しさ。
    賢治の作品発表から80年の時を経て、いま、清川あさみが鮮やかに甦らせます。

    「この物語はひとりの小さな勇気あるブドリという男の子が立派に成長していくお話。
    自然というものは最も美しく、最も厳しいという事をこの物語に教えられました。
    このようなタイミングで日本の美学を表現出来た事を嬉しく思います。
    イーハトーブの森と幻想的な美しい日本の風景を、
    愛に溢れるブドリと一緒に体感して下さい。」
    清川あさみ」

  • 宮沢賢治の揺るぎないテーマ
    自己犠牲の愛

  • 元から、絵本の挿絵の美しさが気になって、手に取ったので、内容関係なくとてもいい作品だった。

    グスコーブドリの伝記は、家族と離れ離れになったブドリが様々な経験をし、多くの人々を救う話だが、

    話も面白かったし、挿絵も素晴らしかった。

    文字だけでは、ここまで読んでいて楽しくならなかっただろうし、
    一枚一枚の挿絵が布やビーズで作られているので、キラキラしていて幻想的な世界だった。

    とても、読んでいて楽しかった。

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著者プロフィール

1896年(明治29年)岩手県生まれの詩人、童話作家。花巻農学校の教師をするかたわら、1924年(大正13年)詩集『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』を出版するが、生前は理解されることがなかった。また、生涯を通して熱心な仏教の信者でもあった。他に『オツベルと象』『グスグープドリの伝記』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』など、たくさんの童話を書いた。

「2021年 『版画絵本 宮沢賢治 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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