愛のようだ

著者 :
  • リトル・モア
3.52
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  • (4)
本棚登録 : 572
感想 : 78
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898154243

感想・レビュー・書評

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  • 最近好きな作家、長嶋有さんの作品、猛スピードで母は、夕子ちゃんの近道、ルーティーンズに続き読了。

    いやー、面白かった(´∀`)
    超エモエモエモエモエモい作品でしたねー。

    恋愛モノ…というのがあまり得意では無いんですが、本作は全然楽しんで読めました。

    美し過ぎる物語(最近よくある、自分みたいなおじさんにはもう眩し過ぎて見れないやつ、「君の〇〇をたべたい」的な…)ではなく、「40歳のおじさんのカッコつけ過ぎてない恋愛物語」だからすんなり入って行けたのかなぁと(笑)

    物語の大半が車の中での掛け合いでストーリーが展開して行くのですが、そのやり取りが本当にリアルで…
    男旅とかこんな感じだよなぁ…とか、終始ニヤニヤしながら楽しんで読めました(笑)

    琴美からの最後の贈り物、ここをどう解釈するのか…
    個人的には「琴美も戸倉のこと好きだったんじゃないの?」と。

    以前の二人のやり取り、「私のこと好きなのかな」、「愛してるかな?」を聞き返して安心するシーンとか、あとは伊勢神宮のお守りをあえて直接渡さなかったところとか…
    主人公もそうだったように、琴美も自分の気持ちに後から気付いた、でも三人のこの関係性を崩したくはない、そこを鑑みてとった行動がこれだった。

    そう考えると全ての辻褄が合うような気がしました、どうでしょうか…
    ここらへん、色んな方の感想も見てみたいなと思いました。

    甘酸っぱくちょっと切ない読後感…でも前向きになれる、そんな素敵な物語。
    やっぱりさすが長嶋有さん…良いお話でした…( ̄∇ ̄)

    ちなみに、作中に頻繁に懐かしあるあるネタが出てきます。
    作家さんが年上なので、自分ではイマイチ分からない部分もあったのですが、同年代の方が読むともっとハート鷲掴みなのかもしれません(笑)

    <印象に残った言葉>
    ・琴美の手術は来週だ。(P21)

    ・私のこと好きなのかな(P50、琴美)

    ・このとき、いきなり生じた変な気持ちこそが、人を好きになった、恋に落ちたということだと気づくのに、俺はかなり時間がかかった。(P53)

    ・温泉街にこもって子供を育てるとは。平成も四半世紀過ぎた時代に、そんなに幸の薄いふるまいをする女がいるというのか。(P76)

    ・「そこにいない」美人を褒めてはいけないのだ(P148)

    ・女の胸はな、大きいか小さいかじゃない。もちろん、大きくても小さくてもいいわけでもない。「みせてくれるかどうか」だ!(P204、戸倉)

    ・万華鏡を分解して、中身にガッカリした、みたいなことをいうな。万華鏡はただ喜んで回すんだ、それでみえていたことだけが本当のことだよ(P206、戸倉)

    ・「愛のようだ」と永嶺は短くいった。(P210)

    <内容(「BOOK」データベースより)>
    40歳にして自動車免許を取得した戸倉。友人の須崎と、その彼女琴美。退院したらどこかいこう――約束を果たすべく、彼らは車に乗り込んだ。車窓の風景は移ろい、音楽は次々流れ、会話は止まらない。各々胸中は違えど同じ車内、同じ方向に進んでいく。そして大切なものを失ったことに気づく瞬間が訪れ……。愛しさと哀しみを鮮明に描きだした恋愛小説。〈解説〉大塚真祐子

  • ずっと変わらない長島有の感性が好きだ。
    おっさん作家の長島有が朝井リョウよりピュアな感じがするところ(笑)
    同年代だけに余計そう思うのかもしれないけれど。
    いや、願望か?もしかしたらあざといだけなのかもしれないけど。

    中年が主人公だったら不倫もの?家族もの?もしくは人生を振り返っちゃったりする真面目な話?
    そんな先入観にとらわれず、おっさんの甘酸っぱい片思いの話しなんて。
    いいじゃないか、中年がピュアな恋をしたって。
    自分が恋してるわけじゃないのに妙にシンクロしちゃった。

    物語の大半を占めるのはおっさんとその仲間たちのロードムービー的なあれやこれ。
    それぞれに色んな事を抱えていてハッピーとは言い難いこともあるけれど、重苦しさを感じさせない独特のペースがいい。

    辛いことはあるけれど日常は流れていくし、哀しんでるばかりじゃない。哀しい時も笑えるのよ、人間は。
    時には取り返しのつかないこともあるけれど、それはそれでいいじゃないか。
    前に進んで行くしかないんだから。

    恋愛小説の話のはずなのに妙に励まされてしまったおばさん、ここに1人・・・。

    • koshoujiさん
      vilureefさん、お久しぶりです。
      返信が遅れて申し訳ありません。<(_ _)>
      実は私も、昨年からやるべきことが多くなり、本が読め...
      vilureefさん、お久しぶりです。
      返信が遅れて申し訳ありません。<(_ _)>
      実は私も、昨年からやるべきことが多くなり、本が読めなくなりました。
      故にそれまで月に7~8本以上は書いていたレビューも書けなくなりました。

      2012年から始めた、このブクログ。
      読書グラフを見ると2012年が96冊。2013年も96冊。
      2014年に至っては122冊なのに、去年2015年は一気に22冊まで急降下。
      今年も半分終わろうかというのに、なんと僅か8冊です。

      この状況は今も続いています。
      まあ、それまでが本を読む時間があり過ぎたのですが(笑)。
      このペースがしばらく続きそうですが、今後ともよろしくお願いします。<(_ _)>

      P.S, 久々に読んでいるのが、今回の直木賞候補作である湊かなえの「ポイズンド―ター・ホーリーマザー」です。
      まだ途中ですが、凄まじい面白さです。
      今回の直木賞は、原田マハさんか、湊さんのどちらかではないかと思っています。
      2016/06/26
    • vilureefさん
      koshoujiさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます♪

      まさかのkoshoujiさんもスローダウンしていたのですね(^_...
      koshoujiさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます♪

      まさかのkoshoujiさんもスローダウンしていたのですね(^_^;)
      生活の変化もありますからね、読書量に波が出るのも当然ですよね。
      お互いにボチボチまいりましょう(笑)

      直木賞の季節なんですね!
      私、今回は完全にノーマークでした・・・。
      先ほど候補者チェックしてみたら、新鮮味が全くないですね。みなさん直木賞候補の常連さん?
      誰がとってもおかしくないのかもしれませんね(^_^;)
      2016/06/28
  • 帯でネタバレ(?)あったけど泣いてしまった、、、また読みたい

  • 相変わらず80~90年代ポップカルチャー詰め込みまくりんぐ。自分もまだ免許取って3年くらいだから、主人公に親近感…
    色々な日常の当たり前な風景に都度都度感じ入ったりする感性は面白いと思うけど、この主人公の女性観は割と偏ってる気がしないでもないワ…
    「万華鏡を勝手に分解してがっかりするな」は確かに心に留めておきたいいいセリフだと思った…

  • 車を走らせる道中の、同乗者とのやりとりや会話、ときたま起こる小さな事件、流れる景色を横目に見ながらふと考えていること。軽快さと切なさの塩梅がちょうどよくて、好きだ。年齢を重ねるにつれて身に纏っていくものが言えなくさせる言葉がふと表出したとき、溢れたのは時に笑みだし時に涙のようだ。「すべてが遅かったと気付いたときの涙」で、カルテットの別府さんを思い出した。大人ってやだな〜あ。また読みたい。

  • 最後に渡されたレシート。
    キン肉マンの歌が泣けるとは。
    号泣させない所が好き。

    「万華鏡を分解して、中身にガッカリした、みたいなことをいうな。
    万華鏡はただ喜んで回すんだ、それでみえていたことだけが本当のことだよ。」

  • 中年のおじさんの淡い恋となんでもない会話。
    どんでん返しも、手に汗握る展開もないのに、なんか胸がきゅっとなる。

    なんでもない日常はどんどん過ぎて行って、それだけで取り返しのつかない過去にどんどんなっていく。
    とりとめない会話でも、視界に入るもの、言おうとしてやめたこと、思い出したりすること。隣の人でも会話以上に、ある、ものって、なんていうか共有できたりできなかったり、人が考えてることのうち、発せられることって本当に僅かな部分なんだな、と、思う。

    こんなドラマチックでないロードムービー、じゃないや小説もいいなぁ

  • 2015.11月
    奥田民生聞きたい。さすらい聞きたい。ハイチュウ食べたい。ドライブしたい。癖のないじんわりあったかい文章。
    じわーっとする。うんうん、なかなか。

  • 最初で最後の「泣ける」恋愛小説。と帯にある。

    運転免許取り立てなのに、男たちだけで草津温泉にドライブしたり道を間違えたり、運転中にポップキャンディーを咥えたり、アニソンを聞いて声を合わせて歌ったり、色気もそっけもないシーンが続くけれどこれはやはりれっきとした恋愛小説。
    「万華鏡を分解して中身にがっかりしたみたいなことを言うな。」「耳の遠い女は口説けない」などなど名言続発。
    それにしても長嶋先生、どうしてこう女心をわかりすぎるんだかわからないんだか・・・
    ハードオフに代表される男っぽさっていうか、男の子全開の楽しい空間をこんなに言葉にできるのってうらやましすぎる。
    この本は手元に置いて何度も読むべき本です。
    出版業界がどうのこうのはわきに置いておいて、私はこの本を買ってよかったと切実に思う。

  • その男は運転免許取り立ての40歳。
    友人の若い恋人、琴美は重い病気に侵されていて、男は彼女に恋心を抱く。

    男は車でいろんなところへ行く。遊びや趣味、仕事のつながりの多様な人たちと車に乗り込む。車のなかで流れる音楽から話題が膨らむ。男友達とふざけているのも楽しいが、頭に過るのは琴美のことだ。

    琴美が死んでしまったあと、男のもとに届けられた封筒には、いつか男が確定申告用に必要だと言ったレシートたちと交通安全のお守りが入っていた。

    -----------------------------------------------

    車でどこかに向かったとき、目的地で何をしたかよりも、車中の思い出のほうが鮮明なことがある。どんな音楽が流れていたか、何の話をしたか、どこで休憩したか。そんな些細な記憶はいつまでも消えてくれない。
    そして、その思い出に戻ることはできない。

    クセのある友人たちとのドライブを楽しみ、淡い恋心を隠し持ち、恋した相手の死を悲しむ40歳男の物語。
    この本、読んでよかったな。

    ”さすらいもしないで このまま死なねえぞ”

    つまりはそういうことなんだろうな。

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著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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