「好き」の因数分解

著者 :
  • リトル・モア
3.58
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  • (2)
本棚登録 : 1002
感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (104ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898155165

作品紹介・あらすじ

ここにあるのは、好きを飛び越えた私そのもの、もしくは、
私さえ飛び越えた、生きることであると信じているから。 ―― 〈はじめに〉より

48の「好き」を、3層のテキストで書き分けるという挑戦。
最果の「平成カルチャー論」であり、かつ、横溢する愛の読み物。

ミッフィー / 風立ちぬ / マックグリドル / 燃える / カルテット / ゆらゆら帝国 / 水族館 / ぬいぐるみ / クロード・モネ / 石 / よつばと! / UFOキャッチャー / 紫陽花 / 古畑任三郎 / フィギュアスケート / 書くこと / 宇多田ヒカル / 劇場 / それでも町は廻っている / 宇宙 / 町田康 / sacai / 新幹線 / ポケットモンスター / タモリさん / BLANKEY JET CITY / ロケット / 買い物 / 肉 / コート / プラネタリウム / ポイント10倍キャンペーン / 写真を撮る / 食べ放題 / 東京タワー / エレキベース / インスタグラム / レゴ / グロッケン / KEN ISHII / ジャン=ポール・エヴァン / クリスマス / 小豆島 / 革の鞄 / NUMBER GIRL / プール / 神戸 / 野外フェス
……「好き」48

ファッション誌「FUDGE」の大人気連載を主に再構成し、大幅加筆、書き下ろし多数収録。

感想・レビュー・書評

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  • あまり本が読めない時に、パラパラと好きなページを読む本として良いと聴いたのでリビングにおいてたまに読んでいた。
    著者の好きなものが見開き2ページずつで語られていく。(ミッフィー、クリスマス、ぬいぐるみ、古畑任三郎、ゆらゆら帝国など)
    「好き」の因数分解とは何なんだろう?
    好きな理由だけではなく?何に分解されるか?読むたびにわからなくなる。

    途中、自分が好きなものが何なのか?それが何故好きなのか?を紙に書き出してみた。
    理由ばかり並べてしまう。

    読了したことをSNSで発信してるツイートを見かけて「いいね」を押す時、その発信者に対してではなく読んでる作品が好きで「いいね」をしている。それを意識してから何となくモヤモヤしていた。
    この本を読んで、モヤモヤの正体がわかった。
    やはり好きなものを語ることはその人自身が見えるまで結構な量と内容が必要で「自分と照らし合わせた感想、ほぼ自分語り」にまで到達しないと発信者自体は見えないように感じた。
    要はTwitter(X?)の文字数の中で、初見の人向けに概要や感想を詰め込んでも発信者は見えない。ある程度のパターン(賛否)までしか感じられないのでは無いか?
    なので読了した報告に対してのいいねをつける行為や、中途半端な発信をする行為に少し疑問や疲れを感じてきた。
    (単に好きな作品を広める目的もあるはずだし、別にそれは良いのですが…)

    休むはずの軽めの読書だったのに、何だか疲れてしまった。
    それくらい各ページ、考えさせられる量が物語よりも圧倒的に膨大な本だった。
    まだリビングに置いときます。

  • 『「好き」の因数分解』読了。
    なんとなく気になって読みました。すごーく、好きなことについて溢れていた。
    読んでいて「その感覚、わかる!!」が何度もあったので面白かった。詩人の方なんだけど、好きなことについてを文章化することが難しいと書いてあった。それでも熱量は伝わった。すごかった。

    2020.10.23(1回目)

  • 2020.7
    言葉がピューっと光って弾けてあっちこっちに飛び交って最終的に私の中に届くみたいな。スパーク。「好き」から飛び出した感性。自分も好きなものを100あげたらいったい何がみえるかな。

  • 好きとか大好きとかそんなありきたりな言葉では表せないくらいに好きには色んな種類があってその想いの大きさや深さ、広さもさまざまで。なのにどうして「好き」以外にその気持ちを表す言葉が生まれないのだろう、と思うことが多々ある。だからこそ、好きを延々と書き続けただけの(だけ、と表現したのは良い意味で)この本には呆気にとられてしまった。何度も読み返したい作品。

  • 最果タヒの著書は感想が書きにくい。

    著者の想いが洪水の如く溢れ出していて、とても自分のキャパでは受け止めきれない勢い。

    それでも心地よく、著者が好きなものと自分が好きなものが同じだとおおってなり、その内容を見て、深い、深すぎるぜぇってなる。

    たしかになんで好きなの、それが好きな感覚ってどんなんって言われても言葉に、文字にするのは難しいな。どうしても薄っぺらい言葉になってしまう。
    でも著者の言葉は一つも薄っぺらくなく、いっそうの深みを増し、対象をさらに魅力的なものにする。

    正直、素直にここまで言葉で想いをぶつけられることに畏敬の念を抱く。自分ももっと自分と向き合いたい。でも、自分から外に出たい。ああー、いい本だった。

  • 個人的に胡散霧散した言葉が収縮する美しさを眺めていた。でも決して綺麗じゃない、もしかしたら面白くもない、じゃあ面白いってなんだ? こんな風に最果タヒさんは自分の感情を出来るだけ正確に捉えようと、実直で誠実だと思った。

  • 好きな何かに対する最果タヒさんの距離と角度の取り方が素直に書いてあります。対象は人だったり場所だったり概念だったり。導入のスムーズさに嘆息し、もし寅さん映画が新しく作られるならば、前口上は最果タヒさんのが聞いてみたいな、と思った次第です。

  • 印象に残った文章
    ・ミッフィー
    これ以上近づきたいとは思わないが50年後もこの距離でいたいとおもう人が現れるたび、私はとても安心する。友達や恋人といった関係ばかりの世界に風穴をあけることができた気がする。

    ・風立ちぬ
    何かを好きになることはその何かだけでは発生しないことでその人が抱えてきたものの爆発

    ・水族館
    歌を詠む人は皆バラバラに生き、それぞれの感覚を持つが、世界に生きるという点で同一なんだ。


    ・クロード・モネ
    絵を愛すれば愛するほど、「絵」

  • 高速で耳元で詩的/私的な語りを聞かせてくれているような読み心地、と感じたエッセイ「きみの言い訳は最高の芸術」に個人的に通ずると思った疾走感で語られる最果タヒの好きなもの。吉増剛造の「燃える」を読んでみんな戸惑えばええねんと叫び。宇多田ヒカル「In My Room」の歌詞に七重の意味を読み取り。2017年に一度書けなくなってから町田康対談を経て書けるようになった2019年以降の小説は、まだ単行本化されてないのかなと思ったり。他人にバカにされないようにしたいと願うことこそが、自分をバカにした行為だとつぶやき(「Sacai」)。あなたにくだらん部分が一ミリでもあるなら、買い物にだってそれが現れるのは必然だろう。(「買い物」) 「誰も譲れないし、売れそうにない、どうしようもない買い物」こそ、私は好きなのです(「買い物」)と宣言し。音で自分の成分が震えると感じたKEN ISHII「EXTRA」(「KEN ISHII」)。日常が日常として気楽なものであるのは、結局、命に鈍感になっているからかもしれないと。(「プール」)といったあたりが印象に。

  • 好きなことを語るのは自分のことを語るようでいて、でもそれは自分のことではないという圧倒的な疎外感
    だから僕は、好きなものについて聞かれるのが苦手だ

    最果タヒはその疎外されていることも受け入れて、好きを因数分解する
    自分の知っているものも好きなものも全く知らないものも出てくるけれど、そこにある感情のざらつきは自分が好きなものに対して感じるものと通じていて
    なんかそのざらつく感じ、が好きなのかなって思ったり

    自分の好きなものについて語るのはとても難しい
    でも、それを楽に喋れる人を羨ましいとも思わない
    この最果タヒが好きなものを語る態度こそ、なんだかとても大切なことな気がした

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著者プロフィール

最果タヒ(Tahi Saihate)
詩人。一九八六年生まれ。二〇〇六年、現代詩手帖賞受賞。二〇〇八年、第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。二〇一五年、詩集『死んでしまう系のぼくらに』で現代詩花椿賞を受賞。その他の主な詩集に『空が分裂する』『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(二〇一七年、石井裕也監督により映画化)『恋人たちはせーので光る』『夜景座生まれ』など。作詞提供もおこなう。清川あさみとの共著『千年後の百人一首』では一〇〇首の現代語訳をし、翌年、案内エッセイ『百人一首という感情』刊行。エッセイ集に『きみの言い訳は最高の芸術』『もぐ∞【←無限大記号、寝かす】』『「好き」の因数分解』、小説に『星か獣になる季節』『少女ABCDEFGHIJKLMN』『十代に共感する奴はみんな嘘つき』、絵本に『ここは』(絵・及川賢治)、対談集に『ことばの恐竜』。

「2021年 『神様の友達の友達の友達はぼく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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