- Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
- / ISBN・EAN: 9784898311387
感想・レビュー・書評
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日下氏の著作は読む度に学ぶものがありますが、この本で解説されている「250年続いてきた成長の時代が終わる」という内容には驚きました。
私は技術の進歩の真っ只中に育ってきたと思っていますので、俄には信じられませんが、日下氏の言っている内容は何年か経過して気づくことが多かったので、今回もそうなのでしょうか。
特に、アメリカの一極支配が終わった後には、フランス・ドイツ・日本が中心になる(p88)そうです。日本には当然のように存在している道徳を理解できるのはフランス、ドイツのような大陸国のようです。アメリカや中国が行き詰まって行く中で日本は果たしていかに成長していくのでしょうか。
以下は気になったポイントです。
・日本は明治時代の富国強兵の下で利益を追い求めたが、古代から中世の価値である神道や儒教、道教、仏教の教えが生きていた、アメリカには歴史がなく戦争でも金儲けでも暴走する、中国は古代と中世しかなく近代がない(p36)
・イギリス型発展は、海軍力をもとにした略奪型、原住民から土地を奪ったのは、インド、ミャンマー、アフリカ、カナダ、アメリカから(p38)
・インドは植民地にされる前は、マンチェスターよりも素晴らしい繊維製品を安く作っていた、産業革命をしたイギリスでもインドに負けていたので、インドを植民地化して熟練工の手首を切り落とした(p40)
・江戸時代までの日本は、各地の行政は各藩ごとにやっていて、いわゆる連邦制であったので国家体制はドイツ型、民間はイギリス型(貿易)を真似した(p43)
・ヨーロッパは階級社会なので、階級を超えた全国国民共通の関心事はない、例外は王室関係のニュースか戦争、貴族はサッカーはせずに、ゴルフやテニスをする(p47)
・近代医学が誕生した頃の患者はいまよりも20歳くらい若かったはずで、高齢者を相手とする現代医学は別のものが発展中(p58)
・総理大臣が海外へでるのは、外国の要人と会うためよりも、日本の新聞記者を接待するため、海外旅行をしないと記者から嫌われる(p62)
・アメリカでは多くの新聞社がつぶれてきて、メディアには存在感がない、モラルも消滅、自慢できるのは軍事力のみ(p65)
・地上戦ではイラクでの戦死傷者数を少なくするため、戦争の民間委託が行われた、イラクで危険な輸送業務に従事しているのは民間企業だが、その死者は戦死者にカウントされない(p66)
・アメリカには共通語がないので、何事も文書で契約する必要があり、法律で縛り、裁判も増える(p70)
・中国において、国際的なルールに従って調査を行った場合、中国都市部の失業率は、27%を超える可能性あり(p76)
・中国はアメリカへ留学して最新流行とされる分野のみ集まるので、中国に帰国しても仕事がない、中間技術の重要性は理解できていない(p79)
・アメリカ一極支配が終わった後に中心になるのは、フランス・ドイツ・日本で、周囲がアメリカ、イギリス、さらに外側はインド、南米、ロシア、(中国?)である(p88)
・年金破綻の原因は、年金を払わないからというより、年金の運用損(2008年度は約9兆円)が大きい(p101)
・日本においてこれから終わるのは、グローバル化、アメリカ崇拝、政府依存、大学信仰、個人主義、大企業崇拝、上場主義、である(p113)
・日本が今後つきあうべき国は、これまで略奪されたことのある国(東南アジア、南米等)であり、略奪をしてきたロシアは良くない(p125)
・日本自身の自衛力として、偵察衛星、対潜哨戒機(P3C,100機)を持っているので、海上警戒網は世界最高レベル(p127)
・飛行機を作ろうとしたとき、欧米では神様が許さないだろう(許可があれば天使のように翼があったはず)として、熱心なキリスト教徒でなかったブラジル人とアメリカ人が開発を続けた(p137)
・自主防衛の手段として一番安上がりなのは、核を持って、潜水艦ミサイルに搭載する、航空母艦は不要(p141)
・世界を二つに分けるならば、「自分で働く国」と「他人を働かせて略奪する国」の二分類がわかりやすい、前者には景気回復はあるが、後者にはない(p162)
・青森県には原爆の原材料になるプルトニウムが、1000キロ積んである、使い道はプルサーマル発電がある(p166)
・世界の中で道徳が高いのは日本、アメリカ人は無理、フランス・ドイツ・イギリスは少し理解、イタリアは半分理解可能(p173)
・アメリカの強みは、軍事・通貨(ドル)・メディア、しかしモラルが無い、その結果として健全な道徳を持っていた中流階級が没落した(p179)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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何に使うつもりか、がなければ利益追従は無意味だが、経済学はそこまでは教えなかった。だから豊かになって欲しいものがなくなれば、経済学は退場になる。経済行為も縮小になる。それが先進国の現状だと思ってみてはどうか。96
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若くて貧乏なうちはTシャツしか買わないにしても、だんだんと憧れの高級商品を買うようになり、さらにその先は和服を着るようになる。日本の和服文化の高さは世界の想像を絶して高い。分かりやすいのは値段で、男の帯が一本百万円も二百万円もする。日本の若い女性に、最高の男の魅力は?と聞くと、将棋や碁の名人戦で戦う棋士の和服姿という答えがあった。いまに広がる。126
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分かってきたことは、世の中で偉そうにしゃべっている人は、それが得になるからしゃべっている、得になることをしゃべっている。だから、損になることを承知でいっている人は信用される。得をしながら有名になろうなどと、そういううまいことを考えてはいけない。どこかで誰かが見ている。「あいつは、信用できない」と。152
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ケインズは景気刺激策として、通貨の増発と公共事業の拡大をいったが、昔は効いてもいまは効かない。中流・中産階級がない社会では金をばら撒いてもだめなのである。下々は「しめた」といって飲んでしまう。「もっと寄越せ」というだけである。やる気のない人に国家がお金をばら撒いてもしようがないのである。179
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単純なGDPの順位に意味はない(それはそのとおりだ)
そもそも金は使うためにあるもの、将来に使い道がないのであれば貯めるのは無意味!!
金がなくても豊かに暮らす方法はいくらでもある!!
お金を貸すと嫌われる、金持ちは嫌われる、という当たり前のこと
回収手段がないのに貸すな!!!
ディフュージョン(普及伝播)の重要性! -
近未来予測には定評があるとの評価通り、今回の著書も裏切らなかった。まず最初に、現代は、250年続いた近代化の終焉がはじまっている。と一言でいう所に、はっとさせられる。また、道徳の価値、外交の原則など、ふだんマスコミが書かかない視点でかかれており、数年たってから読み返してみたい。とにかく、世界の今後の流れをつかみたい方には、おすすめ。