私はなぜ「中国」を捨てたのか (WAC BUNKO)

著者 :
  • ワック
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898316108

感想・レビュー・書評

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  • 中国共産党を糾弾し、国家・人間性のあり方ついて語った本。

    著者は、中国共産党を見限り既に日本に帰化している北京大卒の評論家 石平さん。小さな頃から毛沢東率いる共産党による文化大革命の影響を精神的に受けており絶対的な信頼を寄せていたが、利権を守るために平気で人を殺すというその黒い内幕を大学時代に知ったとき、大きなショックとともに精神ダメージを受けたと語っている。

    石さんはその体験を通して、その根本的な問題が一党独裁体制にあると言い、長年続いているその体制を激しく非難している。

    反日感情が中央当局に意図的に植え付けられたものというのは有名な話だが、石さんはこれが共産党への求心力を高めるための施策と断言している。石さんの学生時代に存在しなかった反日感情が突然降って湧いたように今になって高まっているというのは明らかに不自然な現象だ。

    孟子、孔子時代に存在した高尚な精神文化は日本に芽吹いたと語り、後半は日本贔屓な文化論を展開している。

    実態がよく分かるし、読み応えがあって考えさせられる一冊。

  • WEDGE Infinityでの著者の論談が興味深かったので読みました。
    WEDGE Infinityの論旨から冷静沈着な方と思ってましたが、この本を読んで、実はとても感受性が豊かで情熱的な方との印象を受けました。

    私にとって、中国とは古の論語、儒教の世界、という意識があったのですが、
    文化大革命によりそれが徹底的に破壊されたことを初めて認識しました。
    そのただ中に生きた著者の言葉は重いです。

    また、昨今の激しい反日は、天安門以降突然出てきたとのこと。
    20数年前とはいえ衝撃的だった記憶の天安門事件。そのキーワードと1党独裁のプロパガンダ。
    このからくりとここ十数年の激しい対日変化を適切に把握しておかなければならないことに警鐘を与えてくれます。

    最後に、日本は天皇制があったからこそ、古の伝統や文化が政変や動乱の中でも受け継がれてきた、との見解ははっとさせられました。
    日本人として当たり前にとらえてきたことだけど、実は日本独自の大事にすべきことである、と思います。

  • 祖国を捨てる経過の描写が痛ましく、胸を打ちますが、それ以上に、日本の心といいますか、「やさしさ」に触れていく過程に心が打たれます。勉強になりました。

  •  面白かったのは、幼い頃から共産思想に賛同していたものの、青年期にはその欺瞞性に激しく憤って中国を見限ったという自伝パート。こうした生の告白を日本語で読めるのはありがたいと思う。筆者が幼い頃に祖父から受けた『論語』教育のくだりも興味深かった。

  • 石平さんについて知りたくて読書。

    現在、中国に滞在する日本人として、実に興味深く読ませてもらった。

    80年代までは耳にしなかった反日を90年代になると耳にするようになったっと、サラリと書いているが、この部分は重要だと思う。東洋学園大学の朱建栄教授は、インターネットの登場が愛国教育や中国の体制に大きな変化をもたらすと主張していたが、昨年9月の1件で、あまり変化が感じられない状況が浮き彫りとなった。

    別のレビュアーも書いていたが、後半の日本礼賛は、少しむず痒く感じてしまう。しかし、これは、日本を引き合いに出すことで著者の祖国への強い思いが反映しているものだと感じる。

    日本は、もっと日本らしさを再考し、祖先の知恵や文化を見直していく時期なんだと感じる。

    北条時頼と蘭渓道隆の話は中国と日本との長い歴史とつながりという大河を感じさせてもらえるよいエピソード。著者と同郷の蘭渓道隆は鎌倉時代以降に確立していく武士道の形成に大きく関わっていくのが興味深い。

    皇室に対する認識は同感。日本で独裁者が生まれないのは、皇室の存在が大きく影響していると思う。

    独裁者や独裁体制の恐ろしさを改めて認識した。その意味で、先の日本の政権交代は今後の日本にとっていいことだったと言えるのかもしれない。今後も、3年に1度は早いので、5年、10年に1度は政権交代していくのが、成熟した民主主義であり、実はとても幸せなことなんだと思う。

    論語と学生時代に少しかじった曹洞宗をまた勉強したくなる。継承されていく文化は本当に大切な遺産だと思う。

    読書時間:約1時間30分

  • 天安門事件についてもっと語られていると良かった。中国の政治体制や経済成長に潜む危険性は意識してゆかねばなるまい。それにしても日本を褒め過ぎじゃないかな。読んでいて悪い気はしないけど。大変面白かった。

  • 教科書で知る中国ではなく、現実の中国を知る意味で面白い。中国に行くと信仰や漢文に触れている雰囲気がなかった感じは確かにあった
    日本人が改めて日本を見直す本でもあると思う。

  • 毛沢東共産党と中華人民共和国に失望し日本人になることを選んだ元・中国人の著者による中国痛烈批判本。
    内容は、1949年に誕生した中華人民共和国が現在まで推し進めている体制をとにかくこっ酷いまでにこき下ろしている。
    反面、日本に対しては、生まれたときから日本人である我々よりも“愛日本主義者”としての主張を繰り広げていて、そこまで美化された日本というものに読んでいるこちらがやや恥ずかしくなってくるのは何故だろうか(笑)
    日本を褒めちぎられるのは嬉しいことだが、そういった美談はどんな内容であれ話半分で聞いておくのが良い。中国についての記述においても多少は冷静な目で判断する必要があるかもしれない。著者が実際に経験してきたことを素直に書いているのだろうが、そこには多分に感情的な部分も含まれていないとは言えないからだ。

    個人としては、中国が歩んできた歴史や、中国人が作り出した文化に対しては最大限の敬意を払っているつもりだが、著者同様に1949年以降の中華人民共和国・中国共産党による自己文化破壊の文化大革命や周辺諸国への恫喝外交政策、拡張主義、ひいては愛国主義という大義名分の名において国内の不満を日本に向けようとする責任転嫁政策には断固反対するし否定されなければならない。
    そういった意味ではいわゆる中国国民も被害者だということは忘れないでおきたい。
    “中国”とは本来このような国ではないはずだが、現在の中国共産党が政権を握ったまま“中華人民共和国”が世界をリードしようとする日が来ればそれは世界平和秩序瓦解の序章が幕を開けるのと同じようなものだろう。

  • テレビでも拝見しますよね。日本人褒めすぎでは?(逆に中国、中国人けししすぎ)と思っていたのだが、この本を読んで中国を捨てた理由がわかりました。石平さんは日本人より日本人っぽいかもしれません。

  • なぜサッカーの試合とかであれほど反日なのか、今まで分からなかった謎が判明。日本人は一般的にそのような事情を知らないので、読んだほうがいいと思う。

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著者プロフィール

評論家。1962年、中国四川省成都市生まれ。1980年、北京大学哲学部に入学後、中国民主化運動に傾倒。1984年、同大学を卒業後、四川大学講師を経て、1988年に来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了し、民間研究機関に勤務。2002年より執筆活動に入り、2007年に日本国籍を取得。2014年『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』(PHP新書)で第23回山本七平賞を受賞。近著に『漫画でわかった! 習近平と中国』(かや書房)、『世界史に記録される2020年の真実 内患外憂、四面楚歌の習近平独裁』(ビジネス社)、『中国五千年の虚言史』(徳間書店)、『日本共産党 暗黒の百年史』(飛鳥新社)などがある。

「2021年 『中国 vs. 世界 最終戦争論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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