中国社会の崩壊が始まった! 2013年の「中国」を予測する (WAC BUNKO 170)

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  • ワック
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898316702

作品紹介・あらすじ

不動産バブル崩壊で、消費が消え、地方財政が成り立たなくなり、不動産に関連した住宅、建築、鉄鋼、セメント産業等すべての産業が冷え込んでしまう。そうなると、中国のマクロ経済全体が大幅に下落し、失速していく。今、中国は絶対絶命の危機に立っている。気鋭のチャイナ・ウォッチャー二人の最新報告。

感想・レビュー・書評

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  •  昨年秋(2012年)に、共産主義下での独裁体制が刷新された、共産中国に対する予測な一冊。宮崎正弘さんと石平さんのお二人の対談が、非常にリアリティ&テンポのよい内容でした。

     「中国とはあくまでも一定の距離を置いて付き合ったほうがいい」、さて既にバブルが崩壊しているとの観測もされていますが、実態を知りたいところですね。とは言いながらも、日本国内の既存メディアは言及しないでしょうから、別のアンテナを伸ばす必要があるのでしょうけども。

     「アメリカの背景にある意図というのは、中国に対する牽制プラス中国の軍事的封じ込め」、『動乱のインテリジェンス』でも同様のトピックが上げられていましたが、「TPPは新しい安全保障の枠組み」との見方は経済だけではない視点が必要だとも。そういった意味では、帝国主義の世界に立ち返りつつあるのでしょうか、70年を経て。

     そして、第一次安倍内閣での外相、麻生さんが『自由と繁栄の弧』で述べられている「自由と繁栄の弧」、そして安倍総理が先日だされた「セキュリティ・ダイヤモンド」は、まさしくその「安全保障」を体現していくものだと思います。

     日米豪印の菱形の安全保障を軸に、東南アジアから、トルコと経て、エジプトを経由し、ギリシャから南欧州と繋ぎ、東欧・北欧・イギリスまで、普遍的価値観を共有する国々をつなげる「一つの環」、これは地政学にも「海洋国家」である日本としては至極真っ当な戦略だと、そう思います。

     「戦後レジームの克服が大事で(中略)日本人が日本人としてのアイデンティティをもういちど確立しないといけない」とは、『ハーバード日本史白熱教室』でも言われていましたが、全くその通りだとあらためて。それを石平さんのような、帰化されて来た方の方が問題意識と持っているのは、とてもありがたいと同時に、恥ずかしくも感じます。自分たちの世代は次の世代に、何を伝えていくべきなのでしょうか。。

     それにしても「自分たちの特権を永久に享受したいという政権」とは、、個人的には、同じ状態での永続性を求めるとの風潮は性に合わないなぁ、と感じます。。唯一絶対の「理想郷」を求めがちな思想にはよくみられる傾向ですけども。

     それでも、終着点に到達してしまったらその先の発展の可能性が無くなってしまうわけですから。人は常に学び成長し続けてこそ「人」でしょうに、その可能性が無くなってしまったらどうなるのか、、後は堕ちていくだけなんじゃないかな、と感じています。

     個人的には「保守」の本質は、時代の大勢を踏まえながら、その時代ごとの最適解を探していくことだと考えています。そう言った意味では、結果として多様性が担保される社会であり、ずっと道を歩き続ける、、その結果として、発展し続けることが可能な社会なのだろうと感じています。

     なので、昨年の衆院選での安倍総裁の復活は、右傾化と言いながらも、立ち位置としては、中道に戻っただけな気がするんですよね、、今までが極左であっただけで。別に帝国主義的な風潮が出ているわけでもなく、徴兵とか侵略が合法化されるわけでもない。というか、徴兵については「違憲」だと、自民党の改憲案でも明記されています。

     今の自分たちの領土を「国防」しながら、日本人のアイディンティを確立していきましょうと、至極真っ当な政策を積み重ねているだけなんですけどね、、6年前から。日本人が日本人として立ち上がっていくのが、よほど、とあるヒトビトにとっては「都合」が悪いんでしょうね、なんて考えたくもなります。

     さて、2013年の共産中国はどの方向に、舵を取りますか、、対岸ですませたいところですが。と思っていたら、射撃誘導レーダーを照射ですか、いよいよ行き詰ってるんじゃないですかね、コレ。この時期に安倍政権でよかったと、あらためて実感です。

  • 現代中国の実像が満載された面白さ《赤松正雄の読書録ブログ》

     40年前の日中国交回復の頃に、公明新聞政治部の記者として廊下トンビをしていた私にとって、あの頃の感激は忘れ難い。ついに、日中友好の絆が結ばれたと単純に喜んだものだ。以後二度に渡り訪中。その都度、中国人の懐の深さに舌を巻く思いもしたものだ。とくに、胡耀邦元主席との会食の際の印象は永く心に留まった。しかし、その後のかの国の変遷ぶりは首を傾げる。

     数多の中国本が発行されているが、宮崎正弘、石平『2013年の「中国」を予測する』は読み物として極めて面白い。というか、役立つ情報が満載されているものだと確信する。何と言っても凄いのは宮崎氏が数限りなく中国の地に足を運んでいて、最先端の現場を熟知していることだ。

     この書では、とっくに中国のバブルは弾けているとして、その崩壊の実例を挙げる。内蒙古省オルドスの康巴什(カンバシ)というところで、百万人の新都心を作ったけど、完成しての実際の人口は二万八千人しか人が集まらないケースなど、不動産ブームの果てともいうべき実像が暴かれる。

     不動産開発業者を倒産せないために公的資金を注入するというが、そのお金の調達が造幣局の輪転機をフル回転させるというやり方。「中国ならやりかねない奇妙奇天烈な経済対策」が次々と紹介されまことに興味深い。

     この本で注目されるのは、何と言っても指導者の人物像が非常にリアルに描かれていること。次期政権トップの習近平氏については、「カリスマ性がない、独自の政策がない、思想がない。何があるのかといったら、何でも周りにニコニコする八方美人型で、急激な改革などやらないタイプ」―それがなぜ選ばれるのか。特権階級の特権を維持してくれるからだというのがその理由。バックには江沢民派がいるという。こうした話がこれでもかこれでもか、と出てきて飽きない。そうした中国の次代の幹部像の寸評が描かれているのだが、ハイライトは、「この7人がこれからのキーパーソン」というくだり。宮崎、石の両氏の洞察力がどこまで鋭いのかはこの予測があたるかどうかだと見て間違いない。しっかりノートしてこれから中国の人事展開をウオッチしていこう。

     この国の権力争いは三国志の歴史を淵源に持つとあって並ではない。日中友好の幻想に酔っている時代は終わった。等身大の中国をリアルに見据えて充分な警戒心を持って対応をして行く上で、格好の手引書ではあろうかと思われる。

  • 対談形式で書かれていて読みやすい。中国のバブルはとっくに弾けているという書き出しで、中国経済のからくりが紐解かれて行く。著者に書かれている内容全てが来年に起こるとは思えないが、彼らが共有している問題意識と話の方向性は間違っていないと思う。日中の尖閣諸島に関する問題は、日本が抱える領土・安全保障の問題の一角でしかない。今の中国を知りたい人には是非読んで欲しい一冊。

  • お二人とも中国ウオッチャーとしては一二を争う方、対談もとても息が合っています。特に目新しい内容はないです。常に、中国は崩壊するという主張をしているお二人ですから。それでも、そろそろですか?北京オリンピックから10年以内を期待しています。

  • (2014.05.24読了)(2013.10.03購入)
    2013年は過ぎてしまったのですが、今の中国を知るうえで参考になることがあればと思って読んでみました。
    公共施設の建設やら住宅建設で景気がよくなっていた面があるけれど住宅の作り過ぎで、入居者のいないゴーストタウンになっているとか。
    指導部の子弟や財産は海外へ行っているとか。何かあれば、さっさと海外へとか。
    指導部としては、共産党一党独裁の体制を長く持たせてこの状態が続くことを望んでおり、そのために改革や斬新なことをやりそうもない習近平が新指導部として選ばれた。
    地区共産党指導部に対する抗議行動は、完璧な鎮圧を行うという従来のやり方はネットの発達などによりやりにくくなった面もあって民衆の要求を受け入れる場合も出てきた。
    (その場を収めるために、要求を受け入れたように見せて、その後何も変わらなかったこともあるようですが)
    中国の作るものは、物真似ばかりで独創性がない、と言っていますが、そうでもないでしょう。かつて日本が、そういわれた時期があったように。
    宇宙開発に力を入れて有人宇宙飛行なども実現させています。アメリカの場合は、宇宙開発で実現できた技術を民生用にも活用していますが、中国では、国家機密として、民生用には使わせていません。
    ハッキング技術も優れており、国力を上げて海外のいろんな情報の収集に努めているようで、アメリカから5名ほどの優れた技術者の紹介がありました。中国側は、謙遜してそのようなことはやっていません、と言っているようです。

    【目次】
    まえがきに代えて
    第1章 中国のバブルはとっくにはじけている
    第2章 中国ならやりかねない奇妙奇天烈な経済対策
    第3章 「造幣局経済」のツケは第五世代指導部に回された
    第4章 世界中でチャイナ・バッシングが起っている
    第5章 貧乏クジを引いた薄煕来
    第6章 人民解放軍が尖閣諸島を占領する日
    第7章 「二十一世紀型暴動」は中国に乱世をもたらすか
    終章 「新しい中国」とどう向き合えばいいのか

    ●インフラ整備先行(20頁)
    (宮崎)イギリスの『エコノミスト』が書いていたけれども、普通の新興国家というのは、発展する速度にインフラ整備が追い付けないで、ずっと後に付いていく。中国の場合は逆である。インフラを先に作って建物を建てるが、人が来ないと。
    (石)中国の経済成長そのものがまさにインフラ整備先行で、とにかく箱もの作りをして経済が牽引していくんですね。いままで数十年にわたって固定資産投資の伸び率は、毎年、25%から30%なんです。
    ●新幹線(78頁)
    いままで開業した新幹線が八千三百キロぐらいある。ちなみに日本は二千七百キロぐらいしかないから、すでに日本の三倍近い長さがある。
    これを二倍にするんですよ。一万六千キロまで新幹線を増やそうとしている。
    ●飛行場(79頁)
    各地に飛行場を作りましたね。いま現在、二百二十もの飛行場を作って、一日一便とか週に二便ぐらいしか飛んで来ない飛行場まであるんだけれども、かまやしないでどんどん作っているわけでしょ。飛行場を作ったらターミナルを作らなければいけない。飛行場まで繋がる市内からの道路を引かなければいけないというのも、みんな付帯的な公共事業ですよ。
    ●アメリカ、日本、ドイツ(120頁)
    アメリカの場合、特に1980年以降、軍事技術が下りてきたときに次の産業が開けた。新薬なんかもそうですよね。薬と先端技術と軍事技術に関しては、アメリカはずっと独走態勢にあったんですけど、アメリカは発明はするけどモノを作らないですよ。モノはみんな特許を売る商売に切り換えてしまった。結局、日本とドイツがモノ作りに専念してきたという意味で、生産技術と応用技術は、日本とドイツのいってみれば専売特許みたいになってきた。
    ●習近平(182頁)
    習近平がなぜ選ばれたかということが問題なんです。つまり、何もカリスマ性がない、独自の政策がない、思想がない。何があるのかといったら、何でも周りにニコニコする八方美人型で、急激な改革などはやらないタイプ。ということは、可能なかぎり、長期にわたっていまの特権を維持してくれる人物になるだろうという、共産党の身勝手な期待感から選ばれたんですよね。
    ●次の指導部予想(188頁)
    習近平、李克強、汪洋、李源潮、王岐山、張徳江、劉雲山、兪正声
    ・下記が実際に選ばれた人たちですが、汪洋、李源潮の二人は入っていませんね。
    第18期中央政治局常務委員(2012年11月)
    習近平 - 序列第1位 中国共産党中央委員会総書記、中国共産党中央軍事委員会主席、中華人民共和国主席、中華人民共和国中央軍事委員会主席
    李克強 - 序列第2位 国務院総理
    張徳江 - 序列第3位 全国人民代表大会常務委員長 
    兪正声 - 序列第4位 中国人民政治協商会議全国委員会主席
    劉雲山 - 序列第5位 中国共産党中央書記処常務書記、中国共産党中央精神文明建設指導委員会主任、中国共産党中央党校校長
    王岐山 - 序列第6位 中国共産党中央規律検査委員会書記 
    張高麗 - 序列第7位 国務院常務副総理

    ☆関連図書(既読)
    「謀略投機」宮崎正弘著、徳間書店、1999.06.30
    「三島由紀夫「以後」」宮崎正弘著、並木書房、1999.10.01
    「テロリズムと世界宗教戦争」宮崎正弘著、徳間書店、2001.10.31
    「中国ひとり勝ちと日本ひとり負けはなぜ起きたか」宮崎正弘著、徳間書店、2010.01.31
    (2014年5月25日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    不動産バブル崩壊で、消費が消え、地方財政が成り立たなくなり、不動産に関連した住宅、建築、鉄鋼、セメント産業等すべての産業が冷え込んでしまう。そうなると、中国のマクロ経済全体が大幅に下落し、失速していく。今、中国は絶対絶命の危機に立っている。気鋭のチャイナ・ウォッチャー二人の最新報告。

  • 宮崎正弘と石平の対談でずーっと最後まで書かれている本当。
    2012年末に読み終わるよていだったのに、年越して2013年になってしまったw
    ニュースやネット、新聞やコラムとはまた違った切り口で
    今現在から過去に渡って中国の歴史も踏まえて
    現在の経済、中央と地方の差、日本との外交や国民性をひたすら対談してます。
    途中でわけわからなくなってしまい、また前に戻って読むのを繰り返してしまった…飽きてしまうんです。

    まぁ、あれです。
    今はいいけど(よくないけど)この先不安要素だらけですよって内容。
    日本の謙虚さや真面目さ、正直さは大事にしておいて。
    前を見ろ!しっかりしろ、日本!と言いたくなりました。

  • 今年(2012)9月頃に出版された本ですが、中国問題に詳しい「宮崎氏と石氏」が2013年の中国の動向を予測した本です。ソ連が危ないと言われた本が出回ってから実際の崩壊まで5年程度かかったと私は記憶していますが、中国の場合はどうでしょうか。

    中国の指導者はソ連末期の指導者と異なって、来年から若返りするようですし、ソ連の失敗も勉強しているようなので、個人的にはある程度は持続できるのではないかと予想しています。

    本の中に書いてある通り、中国に問題がないとは言えませんが、今の日本経済を引っ張っているのに中国の存在は欠かせないと思いますので、頑張ってほしいものです。しかしながら、中国が抱えている問題は私の携わっている仕事にもかなり影響してくるので、この本に書いてあることは参考になりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・2012.3の時点で中国全土で売れ残っている不動産在庫は、5兆元(GDP:47兆元)、GDPの1割以上が不動産の在庫(p20)

    ・日本のバブル時には不動産在庫は現在の中国のレベルにはなっていない、日本のバブルの原因は円高でドルをかなり買ったため(p22)

    ・百万都市を計画して地方都市の新都心をつくろうとしたが、結果的には2.8万人しか住まなくて恐ろしいことになっている(p26)

    ・中国では99%のサラリーローンは破滅する、給与所得者で不動産に投資している人も破滅する(p41)

    ・中国の物価は食品まで上がり始めているが、公共料金(電力、ガス、水道、バス、地下鉄、タクシー)は統制できる(p51)

    ・中国でタクシー料金が安いところは、不動産バブルが破裂しない、物価が安いから人々が豊かに暮らしている、ビールも同様(p52)

    ・不良債権をチャラにする方法として、新札に切り替える、1993年の通貨改革と同様、同じことをソ連がやった(p59、61)

    ・中国で150年続いている会社は5つ、日本では200年続いている会社が、2500はある(p67)

    ・中国ではナイトクラブのホステスは、給料保証はなく客からのチップで成り立っている(p71)

    ・天安門事件(=64事件)は、1989.4.17、北京の天安門広場で行われた胡耀邦追悼の学生集会に市民も加わり、民主化運動が行われた。6.3-4日に市民・学生に対して、人民解放軍が戦車と銃で鎮圧した、死者は数千人(政府発表は300人程度)と言われる、趙紫陽書記が解任されて江沢民が総書記に任命(p102)

    ・中国では毎年、富山県に匹敵する面積が砂漠化している、成長率8%の中国で8%耕作面積が減っている(p124)

    ・今の中国の暴動件数は1日500件(年間18万件)だが、横の連携がないので支配者にとっては脅威ではない、恐れているのは組織化された暴動(p141)

    ・今の中国は独裁ではなく合議制、毛沢東の独裁レベルを9割とすると、鄧小平が7割、江沢民が5割、胡錦濤が3割程度(p149)

    ・今の中国では農民が写メールを持っていてそれを台湾に流すので、情報の漏出を防げない(p173)

    ・アメリカでウォールストリートを占拠した人達が暴動に発展しなかったのは、フードスタンプの配給、財閥による慈善事業があるため、中国ではそれが無いので危ない(p229)

    2012年12月30日作成

  • 読む必要なし

  • 宮崎正弘 (著), 石 平 (著)
    “尖閣”どころではない。今、中国経済は崖っぷち。政治・経済・社会の各方面で、現在、中国で何が起きているのか、そして2013年の「中国社会」はどうなっていくのかを大胆に描く。

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著者プロフィール

一九四六年生まれ。東京工業大学理工学部卒業。新潟大学名誉教授(情報工学)・工学博士。現在、新潟大学発ベンチャーとして創業した株式会社ラングテックの代表取締役社長として、コンピュータによる文の意味理解の研究、高品質な日英翻訳ソフトや使いやすい英語学習支援ツールの研究開発など自然言語処理の基礎研究から応用研究に至る幅広い活動に取り組んでいる。著書に『日本語語彙大系』(共著、岩波書店)、『言語過程説の探求 第三巻 自然言語処理への展開』(共著、明石書店)など。

「2023年 『言語本質論と個別言語分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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