沖縄への短い帰還

著者 :
  • ボーダーインク
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本棚登録 : 31
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784899823025

作品紹介・あらすじ

旅する人生のなかに〈沖縄〉という季節があった。1994年から2004年まで沖縄で暮らした作家・池澤夏樹が記した、沖縄をめぐるエッセイ、書評、インタビュー、講演、掌編小説を、厳選して収録。沖縄で暮らした十年と、そこで得た様々な思い。単行本初収録、多数。

感想・レビュー・書評

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  • 池澤夏樹という作家の書く本を読むことが多くなった。私は気になった作家はできるだけ読む方針。もっとも彼の著作は、あまりにも多く、全てを網羅するのは最初から諦めている。小説も幾らかは読もうと思っているが、これからは私が読むのは評論の方に軸足を移すだろう。

    彼は福永武彦の息子ではあるが、評論のスタイルは、私が8割は読んでいると思っている加藤周一に似ている。加藤はお父さんの友人で、子どもの頃から親交があったことを除いても、共通点がある。理系出身であること。人生の多くを世界を移住しながら、過ごしてきたこと。世界と日本文学への博覧強記。その世界観の広さ。リベラルな発言活動。もちろん違いもある。戦争を経て無いのもあるのか、あまり政治へは加藤周一ほどコミットしない。興味関心は、加藤周一よりも1箇所にとどまる傾向がある。小説は、遥かに加藤よりも上手い。その他いろいろは、これからもっと観て行きたい。

    これは94年から04年まで、沖縄県那覇、南城市知念に移り住んだ前後の、関連文書を集めたエッセイ集である。ボーダーインクという、本土ではあまり知られていない地方出版社の発行であり、地元用に書かれた文章も散見していて、結果、歯に衣着せぬ珍しい文章が集まった気がする。

    いま「安倍政権というとんでもない強風が吹いた。焔は高く燃え上がる」季節に、ナイチャー(内地人)に通じる言葉を持つ池澤夏樹は貴重なのかもしれない。

    以下、面白いと思った箇所を羅列する。
    ○沖縄の「石敢當」の風習。魔物は直進する。魔物は恐ろしいけれどもちょっとバカである。福建省辺りの考え。曲がる時に曲がれるのが知恵の証拠。狩猟民の生活誌を読んでいると、賢いものだけが曲がれるというのは、動物界全体に共通することらしい。(58p)
    ○人と土地の関係は、男女の仲に似ている。(70p)
    ○「四軍調整官による講演の計画に抗議する」2003年2月26日、知念村役場に持参。
    イラク戦争直前の情勢下での計画。「判断力を欠く子ども相手の講演というのは、意図的なものならば卑劣であり、意図せざるものであれば非常識きわまると言わざるをえません。」(←こういう直接行動は加藤周一はおろか、日本知識人としても珍しい)(79p)
    ○「流日戦争1609」上原隆史 ボーダーインク これはこの戦争について、多分初めての、きちんとした歴史の本。
    ○「借金返しちくりー」と鳴く「しゃっきん鳥(池澤夏樹命名)」が、沖縄にはいる。シロガシラである。台湾から来たらしい。台湾では「ペタコ」。
    ○「日本は単一民族国家だ」と言ってはいけない。自分は違うと言う人が1人でもいたら、そうではない。のです。その人の人格を否定することになるわけだから。そのように決めないと人種問題は動きません。

  • 「地理はそこに生きる人に影響する」

    「国家と個人のあり方」

    面白く読んでいるうちにそういうことを考えさせられる

    個人の幸福は公共の福祉に反しない限り最大限に追及されてよいという思想

    大地から搾取するのではなく
    大地を豊かにするように生きるというアイヌの知恵

    これは農耕型の社会と狩猟型の社会の違いを反映しているのだろうか

    二つをまとめると自分と他人を幸せにできるように生きられたら最高だ
    ということになるのだろうか

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著者プロフィール

池澤夏樹(いけざわ なつき)
1945年、北海道帯広市生まれ。1964年に埼玉大学理工学部物理学科に入学し、1968年中退。
小説、詩、評論、翻訳など幅広い分野で活動する。著書に『スティル・ライフ』(中央公論新人賞、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『花を運ぶ妹』『カデナ』『光の指で触れよ』『世界文学を読みほどく』『アトミック・ボックス』等多数。また池澤夏樹=個人編集『世界文学全集』、同『日本文学全集』も多くの読者を得ている。旅と移住が多い。
2018年9月から、日本経済新聞にて連載小説「ワカタケル」を連載。

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