- Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
- / ISBN・EAN: 9784900594371
感想・レビュー・書評
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【注:本レビューは,旭川高専図書館Webサイトの「私の推薦する本」に掲載した文章を,執筆者の許可を得て転載しています】
私たちの住む日本は,資源が乏しいと言われますが,実は戦後の復興で培ってきた「ものづくり技術とその職人たち」という素晴らしい資源を持っています。近年,海外の工場で生産されるようになった製品も,これら日本の技術が元になっているものが少なくありません。
世間には,ハイテクという言葉に対してローテクという言葉がありますね。
でも,一般的には,ハイテクという言葉だけが脚光を浴びているようです。
昭和39年(1964年)に営業運転を開始した日本の新幹線の先頭車両にある部分を,「おでこ」と呼ぶそうですが,その「おでこ」は,熟練技能者が「打ち出し」という方法(手作業)により作られていることを皆さん知っていますか?しかも,この「おでこ」の生産は,現在のE5系やE6系などで今後も製作が行われるそうです。1)
本題に戻りますが,この本には,ロケット用の精密部品の加工など具体的事例をもとに企業が取り組むものづくりについて書かれています。
そこには,いわゆるハイテク技術だけではなく,以前からある技術の重要性が紹介されています。また,技術の開発伝承のための12の具体策が書かれています。幾つか紹介すると,
・中小企業は「下請会社」ではなく「協力会社」の位置づけの明確化を
・社内でのモノづくり学校・教室・学会の開校を
・高度熟練技能者・技術者の処遇は管理職並みに
など多くを提言されています。
最後に,皆さんはレポートを書く際に何で調べますか。手軽で便利なインターネットを使う人が多いと思いますが,サイトによっては,信頼できるものとそうではないものがあります。
旭川高専には沢山の専門書を有する図書館があります。そんな図書館を大いに利用して本(活字)を読む習慣を身に付けてください。
参考文献
1)J-NET21ものづくりの森 技能の森『新幹線の顔は匠の手づくり』より
(技術創造部 職員)
▽配架場所・貸出状況はこちら(旭川工業高等専門学校蔵書検索)
https://libopac3-c.nagaokaut.ac.jp/opac/opac_details/?kscode=004&amode=11&bibid=1010084896詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ユニバーサルデザイン総合研究所の赤池学氏が、1997年から2000年にかけての雑誌連載記事を1冊にまとめたもの。モノ作りを極めた36社の先端技術を紹介している。当時はITバブル全盛期にもかかわらず、デジタル技術への偏重に厳しい警鐘をならし、アナログとデジタルの融合を主張しており、当時から慧眼を備えていたことが分かる。アナログとデジタルの融合に関しては、ようやく世の中の方も追いついてきた感があるけれども、これからは「顧客の先にいるステークホルダー」を意識したモノ作りをできるかどうかが、イノベーションを起こす鍵となるのであろうか?あとは「感性」に訴えることと。
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このような本は企業のいいところしか見ることができないから実態はいい会社かは分からない。
しかし、日本の製造業はすごいという気持ちにさせてくれる一冊である。
もっと製造業のステータスを上げるべきときっと思うだろう。
日本にこんな会社があることは誇りです。 -
いわゆる町工場などで、肉眼はもちろんのこと精度の高い工作機械でも見分けられないような違いを見抜き修正する等の神業を持つ人々を紹介するのが本書。登場するのは幅広い分野の職人たちであるが、筆者はどの分野でもきちんと勉強し、かれらの技巧のスゴさを素人にわかりやすく説明している。前書きからして非常に生真面目で誠実な物書きであることがつたわってくる。それが本書全体にクオリティが高い理由だろう。
どの企業でも神業を持つ職人の後継者の育成に力を入れていることがわかるが、その形態は多岐に渡り、神業の継承にこれといった正解がないことが浮き彫りになる。芸術の領域にある業を教育で次の世代に引き継げるのか?モノ作り企業がんばれ! -
職人の世界は凄い。技術ではなく、技能。これから段階の世代が引退していくが、技能の伝承が日本のものづくりの課題です。