活発な暗闇

著者 :
  • いそっぷ社
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本棚登録 : 368
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784900963184

感想・レビュー・書評

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  • この詩集は実は家の本棚にかなり長い間(たぶん発売されてすぐ買ったので15年くらい!)積読されていました。
    たぶん表紙カバーの絵がちょっとこわかったせいもあると思います。よくみると水鳥だったんですね。全然こわくなんかなかったんですね。
    各章ごとの扉の絵もカラーで(特に蝶々の絵!)とても美しい詩集です。

    すばらしい詩の書き手である江國さんのアンソロジーなのだから、本当に選び抜かれた、深いしみじみとするような、またどきどきとするような詩ばかりでした。
    自分が体験していないことでも「ああ、わかる」と思った詩もいくつかありました。
    その中で今の気分にぴったりとくると思った詩は、
    p57 谷川俊太郎 「手紙」
    p72 永瀬清子 「願わくば金の真昼に」
    p118 堀口大學「夕ぐれの時はよい時」
    の3編。
    また季節がかわれば他にもよいと思うものがふえていくのではないかと思います。

    あと、番外編で大好きだ!と思ったのが。
    p133 ウオルター・デ・ラ・メア 「パンとさくらんぼ」
    p136 エリナー・ファージョン 「ねこ」
    の2編です。

  • 江國香織さんが選び集めた数々の詩。
    詩って、ものによっては長い小説よりも強いインパクトを持ちますね。私には難しい詩も入っていましたが、それぞれの持つ世界観に癒されたり圧倒されたりする本でした。

  • ◆心には襞がある。生きたわたしたちの心には、いつだってゆらめく翳が潜んでいる。この本では江國香織を案内人に、心の深みに降りていく。心の襞の裏側にそっとすべりこみ覗きみる。
    ◆堀口大學って、翻訳以外の自らの言葉も麗しいのだと気づかされた。むしろ、翻訳よりも彼自身の言葉が好き。
    ◆やっぱり串田孫一の感性にときめく。
    ◆絵本ではときどき目にしていた片山令子。絵本では気がつかなかった幼子の・女のやわらかい心を表すやわらかい言葉。懐かしい慕わしい気持ちになる。他の言葉も追いかけてみたい。
    ◆フランシス・ポンジュ、いいなぁ。こういう、シンプルな事象を硬質な言葉で時に暗喩を織り込んで再構成するあそび、大好き。この詩人の名も覚えておこう。そして江國香織が彼の作品につけたコメント(引用参照)には激しく共感した。

  • 和洋さまざまな詩人たちの宝石のような作品を、江國さんが拾い集めたのだが、それらは日常に散りばめられた風景の一コマのような心地良さなのだ。中でも特に印象に残ったのは、恋する娘を見守る父の目線の「娘とアップルパイ」。おそらく訳ありの恋をしている娘。そしてそんな娘が、冬の朝にアップルパイを焼いている。その姿を見て父は、「いいではないか、娘が彼を愛するのなら」と自分に言い聞かせる。私は父の気持ちにも娘の気持ちにもなって、深い愛を感じるのだ。他には疲弊した恋を描いた「朝の食事」も強く印象に残った。

  • 「暗闇を恐れなくていい、と教えてくれたのは書物でした。」江國香織さんが選んだ、詩のアンソロジー。林芙美子の「女王様のおかえり」がお気に入り。

  • 江國香織さんの選んだ詩を,いろんなテーマに沿って何編かずつ集めたもの.ミルンの「窓辺で待っている」やロビンソンの「フラッドさんのパーティ」など江國さん自身が訳されたのが面白かった.

  • お天気の日の海の沖では
    子供が大勢遊んでゐるやうです
    お天気の日の海をみてると
    女が恋しくなつて来ます

    女が恋しくなるともう浜辺に立つてはゐられません
    女が恋しくなると人は日蔭に帰つて来ます
    日蔭に帰つて来ると案外又つまらないものです
    それで人はまた浜辺に出て行きます

    それなのに人は大部分日蔭に暮します
    何かしようと毎日々々
    人は希望や企画に燃えます

    さうして働いた幾年かの後に、
    人は死んでゆくんですけれど、
    死ぬ時思ひ出すことは、多分はお天気の日の海のことです

    『お天気の日の海の沖では/中原中也』

  • 江國香織セレクトの詩集。海外のも日本のも。
    昔好きで何度も読んだ、室生犀星の『昨日、いらしつてください』が入っていて、つながりを感じた。

    江國香織が書いているわけではないのに、江國香織の世界も感じられる。

    短い言葉の中に世界があって、詩はすごい。

  • レイモンド・カーヴァー、リチャード・ブローティガン、高橋睦郎など、江國香織さんが“無秩序”に選んだ詩集。季節感のある作品が多いように感じた。1人で静かに、どっぷり世界観に浸かりながら読みたい本。
    表紙のデザインはまるで美術本。装丁もきれいです。

  • 再読

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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