ダーウィン『種の起源』を漫画で読む

制作 : マイケル・ケラー 
  • いそっぷ社
3.85
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本棚登録 : 260
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784900963894

作品紹介・あらすじ

誰もが知る名著『種の起源』。本書はオールカラーでそのマンガ化に挑んだ作品である。特筆すべきは、ダーウィンの原文を忠実に引用しながら、原典に登場するハトやキリン、鳥、ミツバチなどの生物にまるで「図鑑」を見るような繊細なタッチのイラストをつけていること。それによって難解で読みにくいと言われる『種の起源』がエッセイを読むような味わいに成功している。



それに加え、原典の出版の前後に何が起きたのかを、ダーウィンと当時の科学者たちとの書簡を引用しながら解説。さらに『種の起源』の刊行をきっかけにして、その後、進化生物学がどのように発展してきたかを年表とマンガ形式で簡単にわかるような工夫も凝らしている。今に続く進化生物学の起点に『種の起源』が立っているからこそ、この本は現在にいたるまで世界に大きな影響を与え続けているのだとわかる仕組みだ。



監修に当たった佐倉統さんの解説文はこのように締められている。



 本編第2部の終わりに、『種の起源』の最後の一節を書き終えたダーウィンが、大きく伸びをして屋外に出て自然を満喫する場面がある。この一節は、人類がものした文章のうちでも最も美しいもののひとつだとぼくは思うのだが、このコマにはその雰囲気がとても良く、しかし控えめに描かれている。すばらしい絵だと思う。

「この生命観は壮大なものである。(中略)重力の普遍の法則に従ってこの惑星が回転している間に単純なものから始まり、極めて美しく素晴らしい生物が際限なく生まれ、進化してきたが、今もなおそれは続いているのである」

 そう、それは、ダーウィンが『種の起源』を出版してから161年経った今でも、そしてこれからも続いていく。そしてみなさんひとりひとりも、このプロセスの中の一員なのである。

感想・レビュー・書評

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  • ダーウィン『種の起源』の原著には、図が1枚しかないらしい。
    あとがきによると、ダーウィンの理論は「膨大な証拠と論理的な推論によってひとつの仮説を提出する作業」なのであり、生物は個別に創造された、と信じている人が多かった時代では、ありとあらゆる証拠をつきつけて読者を納得させなければならなかった。
    そのため、原著は非常に難解なのだそうで、一度は原著を読んでみたい、と思いながらも、手に取る勇気がなかなかなかったところ、本書を目にし、読んでみることにした。

    「漫画」とはいっても、迫力あるイラストに原文を添えてエッセンスを伝えてくれている、といった感じで、日本の漫画のように、かわいらしいキャラクターが語りかけるように内容を説明してくれるわけではない。それでもやはり、多様な生物をイラストで見ながら読むことができるのは、このような内容の本にとってかなり理解の助けとなってくれる。また、本編の前後に、ダーウィンが本を執筆するにいたった時代背景や、本の発刊以降の遺伝子学の発展などについて、イラストを多用しながら簡潔に説明されていて、初心者にも理解しやすい内容となっている。

    進化論自体は高校の生物でも習うため、現代人にとっては特別目新しい内容でもないのだが、論説がガラパゴス諸島での調査の内容ではなく、伝書鳩の人為的交配から始まっていたのは少し驚いた。イメージできる身近な話題から論理を組み立てていこう、という意図だったのだろうか。
    また、ダーウィンがなかなか論説をまとめられずに煮詰まっていた時、全く独自に進化論にたどり着いたアルフレッド・ウォレスという人物がいたことも初めて知った。ウォレスはダーウィンに自分の論文を送り、それがダーウィンの論説の欠けていたピースを埋める役割となって、『種の起源』が発刊されることになったという。ダーウィンがウォレスの論を横取りした?と思われそうだが、そのあたりはすでに研究により、ダーウィンのほうが20年以上も先に進化論を着想したことがわかっているそうだ。

    『種の起源』では、生物の変異がどのような仕組みで子孫に伝えられるのか、といったところまでは解明できなかったが、後世の研究で遺伝の仕組みが発見され、今ではゲノム配列情報まで解読されている。ダーウィンが知ったらびっくり、の発展スピードだが、神がすべての生物を創造した、と信じられていた1800年代半ばに、進化論の最初の一石を投じたダーウィンの苦労と功績は、現代の私たちには計り知れないほど大きい。

  • 面白かった!西洋の漫画感あふれる人物画だが、人物以外のイラストは美麗で、とてもわかりやすい。人物も、気になるのは前半だけで、だんだん慣れて、味にすら感じられてくる。
    ただ、小学校で出てくるレベル以上の漢字や語句が多く、振り仮名もついていないので、小学低学年の児童や自然科学系の読み物を読み慣れていない学童には難しいかもしれない。が、適切な画や図があり、ある程度は文章のコンテキストから理解できるし、辞書やウェブブラウザで調べれば読めると思う。
    大人には良い漫画ですな。おすすめです。
    Charles Darwin's on THE ORIGIN OF SPECIES
    Michael Keller, ills by Nicolle Rager Fuller 2009

  • 「地動説」「無意識の発見」とともに「人類の革命的理論」とも言われている「ダーウィンの進化論」を、マンガで分かりやすく解説した本である。
    進化論は今や常識となっており、そのエッセンスは高校生物の教科書にも記載されているが、内容をきちんと読んだことのある人は少ないと思う。それもそのはず、「種の起源」の原典は挿絵の全くない論理本であり、自身の主張を膨大なデータを使って証明するために執筆された本であった。数学の証明問題のように難解で、生物学の基礎知識の無い人にはかなり読みづらかったと聞く。(おまけに間違った記述も多かった)
    そのため、その難読書をイラストの付いた本で解説することは、この偉大な理論への敷居を下げるためにもとてもいい試みだと思う。巻末には、原典には付随していなかったダーウィン後から21世紀までの科学の発展についての年表が記載されており、進化論の影響を受けた科学の進歩を俯瞰的に把握するための嬉しい気遣いがなされている。

    注意点の1つとして、タイトルは「『種の起源』を漫画で読む」とされているが、「マンガで学ぶ世界の偉人シリーズ」に使われているような、いわゆる日本的漫画表現は少ない。ストーリーの起伏は少なく、あくまでも進化論の理論に沿って挿絵をつけた解説書という立ち位置である。とは言っても文字のみよりも格段に読みやすくなっているので、理解に関してそこまでの心配はいらないと思う。

  • 進化論を拒否する教育が未だにある、という話を聞きます。反知性主義は反科学主義でもあり、それが多様性のもとに容認されていることに戸惑いと怖れを感じたりします。しかし、そういう自分だってちゃんと進化論を読んだとこないな、教科書で教えられただけだったよな、と立ち位置の不安定さに気づいたりもします。本書の解説は「ダーウィンの『種の起源』の原著には、図が一枚しかない」と書き出されていて、この本でダーウィンが行ったことは、膨大な証拠論理的な推論によってひとつの仮説を提出する作業だったと言っています。いわく『種の起源』は論理の本であると。つまり難解である。そのことこそが、進化論を知ろうとしない人を作っているのだとしたら、この漫画化は、とても価値のあることだと思います。漫画になっても難しいところ、あるけど…証拠のビジュアル化とダーウィンの論理過程の物語化は『種の起源』を近しい本にしてくれました。大学の時に相対性理論、教科書では、なんとなくわからなくて漫画で描かれたアインシュタインの本読んだら、わかったこと、思い出しました。

  • チャールズ・ダーウィン著「種の起源」って歴史や生物の授業で聞いた事はあるけど読んだ事が無いという人が殆どだと思うのですが、この本は「種の起源」のエッセンスを漫画で読めますので、凄くお勧めです。絵についてはニコル・レージャー・フラーという方が描いているのですが、動植物の特徴を凄く上手に描写されています。

  • 興味があって『種の起源』を完読したいと思っていましたが、難しくて過去断念し続けていました。漫画なら理解できるかと思ったのに....やはり難しかったです。  日々進化し続ける私達生物。 何万年先、人の姿はどうなっていくのか.... 可愛いイヌ・ネコはどんな進化を遂げるのか....  もし生まれ変わりがあるとしたら、その時代を生きてみたいです(^o^)♪

  • 漫画とはいえ結構難しかった気がするけど、ダーウィンの軌跡を知ることができて満足。

  • 漫画で分かりやすいかと思いきや、それでも難解だった。しかし、進化は自然選択の累積の結果であるという概念や、生存に有利な特性は保存されるという概念は種の起源という論文の主張の一つとして理解できたかと思う。第3部おわりにて、種の起源が刊行されてからの世界でどのような発見があったかが時系列に解説されていて分かりやすかった。
    今ではこのような概念は受け入れられているが、当時、ヒトや生物は神が創りたもうたと信じていた人たちが多かった時代にこれを唱えたのはかなり勇気がいることだし大変なことだったと思う。そういった創刊までの経緯なども序章で描かれていて分かりやすかった。

  • 本書で言っていることは、今は当たり前の内容だが、世界旅行など稀有な時代に、世界中から集めた膨大なサンプルから生物の進化について説いたことは画期的。人間は神の子と思っていただろう、当時の人たちにとって、猿と祖先が同じという仮説は、衝撃的で、物議を醸し出したことであろう。
    思えば、人類みな兄弟、ならぬ、この世の森羅万象みな兄弟で、それが今この時も進化していると考えると、ドキドキする。





  •  自然選択
     生物は自然や他の生物との戦いの中で適応したものだけが生き残り選別されていく。環境、オス同士、他の生き物
     
     

     絶滅はある意味進化
     選別されていく中で適応した生き物とそうでないものが出てくる。

     羽があるのに飛べない甲虫
     ある風の強い島では羽があるのに何故か飛べない甲虫がいた。その虫は飛べないのではなく飛ぶと危険だから飛ばなくなった。飛んでいる時に強風で海に落ち死んでしまう甲虫が多かったため飛ぶ能力が低い個体が生き残っていった
     

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著者プロフィール

イングランド西部のシュルーズベリー生まれ。エディンバラ大学で医学を学んだのち、ケンブリッジ大学に転学。卒業後、英国海軍の帆船ビーグル号に乗り込み、4年半にわたって世界各地をめぐり、ガラパゴス諸島での調査などに従事。帰国後は在野の自然史学者として研究を重ね、1859年に『種の起源』を出版。他の著書に『ビーグル号航海記』『人間の由来』『ミミズと土』など。

「2020年 『ダーウィン『種の起源』を漫画で読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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