- Amazon.co.jp ・本 (601ページ)
- / ISBN・EAN: 9784901221344
作品紹介・あらすじ
開国の雷鳴、黒船来航す!大西洋を横断し、喜望峰をまわる大航海の末、ペリーが到着した日本は、激動する国際情勢の情報を着々と収集しつつあった…。日本は武力で対抗してくるのか、それとも交渉のテーブルに着くのか。水深が不明の江戸湾内に入ることはできず、艦砲射撃は封じられたまま。十分な食料もなく、長期の交渉は不利であることを熟知していたペリーがとった方策は、そして日本の交渉戦術は…。新しい国際政治のうねりが高まる幕末、現代日本の姿を決定した大事件のドキュメンタリーが新しい翻訳で登場。
感想・レビュー・書評
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開港150年を期して、最新訳の「ぺりー艦隊日本遠征記」が出版された。上下2巻、合計6,300円
函館の開港は1859年、その開港の端緒となったのがその5年前に来航したペリー艦隊との間で結ばれた「日米和親条約」(下田・箱館)であったことは有名な史実。
通商上の開港はさらに5年後に結ばれた「日米通商航海条約」による。
そのペリーは2回目の来航時、54年春に、新たに開港場に指定された下田に次いで、箱館にも町の検分に訪れている。
ペリー艦隊の出発から帰国までの全てを記録した大部の報告書は、米国議会の予算で1856年には刊行され、世界中の反響をよんだ。全3巻、うち航海の記録は1巻、他2巻はは星座や動植物の記録、図版、地図などを収める。
歴史著述家Hawksに編集を一切任せたことで、報告書特有の官僚臭があまりなく、客観的でありながら結構読みやすいものに仕上がったといえる。かなりの反響があって、急遽増刷したといわれるが、当時の欧米諸国での日本への関心の高さもうかがえる。
なにしろ版型も大きく、膨大な書物なので、その全体像が邦訳の形で日本で刊行されることは久しくなかった。それでも第一巻のみの邦訳は、全訳が,雄松堂版,岩波【文庫)版などで刊行されている他に簡約版が多数出ている。
1997年にはオフィス宮崎の編・訳(今回と同じ)が、原著と同じ版型で、全三巻の「完全版」を発行。学術的には大変貴重なものだが、なにしろ価格が高く(セットで15万円)、個人での購入には躊躇せざるをえなかった。
今回発行された「ペリー艦隊日本遠征記」は、この「完全版」のうちの第一巻の報告部分を版型を縮小(4X6版)して2巻構成としたもの。図版・地図はサイズこそ縮小だが全部収録しているという。価格も2冊で6,300円とかなり買いやすくなった。
既刊の短所を補いつつ本格的にして親しみやすい、普及版。
箱館は下巻の23章から出てくる。函館港、函館山、寺院(称名寺?)、弁天の坂(船見坂?)など、市内随所の描画も多数収録されている。
パンフレットに「横浜開港150周年を記念して」出版とあるのは、函館市民としてはちと悔しいところだが、この機会に函館におけるぺりー艦隊の活動を知ることも意義があるだろう。
150年前の箱館でぺりー一行が何を感じ、どう行動したか、読み物としてみ一級の出来。