- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784901330428
作品紹介・あらすじ
「正しいことは正しい」と信じることは正しいか?
「正義」がこれほど求められ、問われているにもかかわらず、だれもが答えを出せないでいる(出すことが正義を悪へと転換させかねない)時代。それでも、わたしたちが正義について考え続ける意味とは何か? 特撮番組の名プロデューサーとして、正義とはなにかを問い続け、正義の具現としての〈正義の味方〉ヒーローを創造し続けてきたからこそ書けた、究極の〈正義の見方〉論。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
著者は平成仮面ライダーシリーズや戦隊シリーズ、セーラームーンを手掛けたプロデューサーです。大変興味深く読むことができました。私にはなかなか難解な本でしたが。
仮面ライダーV3をはじめ、多くのヒーロー番組に出演してきた宮内洋の持論は、「ヒーロー番組は教育番組だ」です。正義が悪を倒すのがヒーロー番組ですから、宮内の言うこともわかります。でも著者は、物語のそうした表面的な進行から奥へ踏み込んで、多くのヒーロー番組、怪獣映画、童話、ナチス、ベルリンの壁、携帯電話のマナー、援助交際などを縦横無尽に取り上げながら、正義や悪について考察します。
いろいろ興味深い見解が述べられますが、著者の思考の土台にあるのは二元論です。私たちは明と暗、善と悪、「あちら」と「こちら」のように、2つのものを対立させ、そこに境界を設けたがる、それは人間の原始的な生理であり、私たちの生活や思考を支配している、私たちはこの境界がぼやけると不安になり、怒りさえ覚え、その原因を悪とみなすようになる、私は著者の主張をそのように解釈しました。
例えば、怪獣は動物を発展させたものですが、彼らが「悪」なのは、動物園の檻などで「あちら」にいるべきものが、領土を侵犯して「こちら」に入ってくるからです。だから、例えばウルトラマンコスモスでは、怪獣は退治せず保護して、本来の生息地=「あちら」へ帰してやり、物語の決着を図ります。
一方、仮面ライダーの怪人は、何か悪いことをするから「悪」なのではなく、存在自体がすでに「悪」です。蜘蛛男のように、人間の近縁である怪人は、人間とそうでないものの境界を曖昧にします。彼らが侵犯する境界は領土ではなく、人間という存在そのものなのです。だから、怪人が行う悪行は単に「悪」を際立たせるため、或いは、ある存在に対し、それがいるだけで不快感を持ってしまう私たちの罪悪感を軽減するための後づけの行為、ということになるでしょうか。
こんな興味深いエピソードも紹介されていました。著者が制作した仮面ライダー龍騎には13人のライダーが登場します。最後に生き残った者の願いが叶えられるという設定で、不治の病を抱えた者、重い病気の恋人を救いたい者等、それぞれ過酷な運命を背負ったライダーが闘い、子供よりむしろ、私も含め、大人が夢中になった番組でした。実は番組に、13人もヒーローが出るのだから、車椅子のヒーローを出してほしいという要望が、視聴者から寄せられたそうです。検討はされましたが、結局これは取り入れられませんでした。
何か悪いことをさせると「車椅子の人を悪く描いている」となり、大したことをさせないと「登場人物を無意味に車椅子に載せている」となる。物語の中で足が治れば、足が治らない人を傷つける、また、治らなければ、治りたがっている人の希望を奪う。結局、「いい子が足の状態と関係なく、明るく生きていく姿を、重要性を持って描く物語」以外の選択肢がないわけですが、そのように記号的、類型的に描くこと自体が、人を傷つけることになるからです。
視聴者からすれば、手抜きだとか、あれはない、だとか思うことも多々あるヒーロー番組ですが、様々な制約の中で真剣に作ったものであり、何事にも、表面だけなぞっていては見えない深さがあることを実感させられた本でした。 -
「何を今更」な内容であるが、それを正義のヒーローを題材にわかりやすく書いたところに、本書の意味があるのかもしれない。さっと1時時間程度で読めるレベルのもの。
-
「リトルピープルの時代」に導かれて。平成ライダーシリーズが、こんなディープな世界観の上に構築されているとは。従来の勧善懲悪が揺らぎ始めている現代の〈正義〉を見直す作業。善悪の二元論を超えた境界線を巡る論考を経て、一元化を求める世界に対する危機感の表明に至ります。筆者はその流れからの解放者こそヒーローと再定義。曰く、〈わたしたち〉化された混沌がヒーローであり、〈あいつら〉のままでいる混沌が悪なのだ、と。単純な善悪から始まった日本の特撮ヒーローシリーズの独自の進化に感慨を覚えます。さて、アギト、555、電王を見て育ったジェネレーションはどんなヒーロー像を作り出すのでしょうか?
-
【読書ノート】
・ニーモシネ1-12
【要約】
・
【ノート】
・学生の卒論っぽい印象
・でも再読してみたい
・「帰ってきた」の「天使と悪魔の間に」についての言及は、この本だったっけ? -
世界とは、境界線そのものなのだ。
-
平成仮面ライダーの番組プロデューサーが書いているとはいえ、
『特撮』カテゴリに分類してしまうのは、少し申し訳ない気がする。
それぐらい真面目な、ヒーローと正義に関する議論、考察。 -
読んで結構おもしろかったのに、部屋探しても何処にも無〜い!!!
-
シラタロスの本
-
正義というキーワードは今の時代で、しっかりと僕らが
考えなくてはいけない言葉だと思う。この本に関しては
特撮番組のプロデューサーが書いた本ということで
基本的に読みやすい番組の裏話的な本かと思って読み始めたんだけど…
いや、難しかった。途中、混乱したりもしたけれど、
いくつかのキーワードが自分の中に残りました。
デカレンジャーとか仮面ライダーとか、今も見ている自分にとっては
今後、また新しい目線で番組を見られるかな。(これは善し悪しですが…)
最後にふれられていた「正義」と「ジャスティス」の違い、
面白かった! この章だけでも読む価値はあるんじゃないでしょうか。