- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784901477888
作品紹介・あらすじ
仏語圏スイスを飛び出し、欧米各地を渡り歩いたブレーズ・サンドラールは、フランスの首都を突き抜けて、どこでもない場所、すなわち"郊外"へと身を投げた。無個性の灰のうちに熱い熾火の生を読み、呪詛の詩法で時空を超える詩人の呼吸が、いま新しい日本語でよみがえる。写真家ロベール・ドアノーとの共作『パリ郊外』(1949年刊)の序文として書かれながら独自の価値をもつ、ルポルタージュ文学の傑作。
感想・レビュー・書評
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その土地らしさ、の誇らしさ、について考える。
たぶんぼくはそういうものが(他とくらべても)多くあるところ(の近く、と言いよどみたくなるのはこのあと書く)に生まれ育った、と言えると思う。
ただもしかすると、ぼくのいた場所は、ぼくがいまもいる場所は、そんなものなどない場所、なのかもしれない、ということに、世の中を眺め通りすぎてきた回数が重ねられてゆくにつれ、思うようになってきた部分もある。
さて、ぼくはどちらにいるのだろう、そこに連綿と受け継がれてきたものを吸い上げ養分とし心身をかたちづくってきたのか、それともそういうふうに擬態しているだけで、ぼくの本質はもっとべつのところにあるのか。はっきりとどちらだと言い切れないところにたゆたうことそれそのものがぼく自身であるような気もしてくるのだ、許す許さないというふたつの選択肢など存在しない、とそれだけは言い切ってしまえるところにその理由を見いだしてしまうあたり。
堀江敏幸の『郊外へ』を読んでから読みたいと思っていた1冊。『郊外へ』で感じた「そうではないもの」が「なんでもないもの」であるのとは違うということと同時に「だからこそ見いだされなければならないもの」というどこからきたのかわからないみょうな責任感とも距離を置くような感覚をこの本からも得ることができた。その感覚はぼくにとってとても大事なものである気が、する。詳細をみるコメント0件をすべて表示