万物の理論-ビジネス・政治・科学からスピリチュアリティまで-

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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901510080

作品紹介・あらすじ

物質・生命・心を含む宇宙と人間の階層構造を、あらゆる思想・哲学・宗教を含んで統合的に明らかにし、我々のいる位置と進むべき未来を鮮やかに指し示す。
 トランスパーソナル心理学の旗手として注目され、インテグラル理論を体系づけた、ケン・ウィルバー哲学の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • 人類は誕生し、古層から呪術、神話、理性、そして統合的段階へ。そこからさらにトランスパーソナルな領域へと移行する意識の螺旋を通して進化する。

    ヒューマンコンシャスネスプロジェクトの螺旋ダイナミクス(人間の意識の状態、構造、ミーム、タイプ、レベル、段階および全ての文化横断的なマッピング。)の8段階。
    1.ベージュ:成人人口の0.1%。勢力は0%。
    古層的、本能的。基本的な生存のレベル。生まれた瞬間は全員ここから始まる。食物、水、温度、性、安全性に優先性がある。習慣や本能がただ生き延びる為だけに使われる。最初の人間社会、新生児、痴ほう老人、アルツハイマー、飢えた大衆、戦争神経症。
    2.パープル:人口の10%。勢力は1%。
    呪術的、アニミズム。民族的な部族を形成する。精神は先祖の中にあり、部族に結びついている。親族と血族が政治的な結びつきを形成している。「ホリスティック」に響くが、実際には原始的。つまり、「川の湾曲部それぞれには名前があるが、川そのものには名前がない」状態。古層的な怨恨、幸運のお守り、家族のしきたり、ギャング、運動チーム。
    3.レッド:人口の20%。勢力は5%。
    力の神々。部族から区別された最初の創発。力に満ち、衝動的、エゴ中心的、英雄的、神話的精神、竜、野獣。服従と労働の引き換えに家来を守る封建領主。封建的な帝国の基礎である力と栄光。征服、策略、支配。後悔や良心のとがめなしに自己を最高に楽しむ。反抗的な若者、ギャングのリーダー、叙事詩の英雄達、ワイルドなロックスター。
    4.ブルー:人口の40%。勢力は30%。
    神話的秩序。人生には意味、方向、そして目的がある。絶対主義的で変更不能な「正しい」と「間違っている」の原理に基づいた行為の規範を強要する。規範または規則への違反は過酷。規範に従う人々には報いる。古代的国家の基礎。固定的な社会階層、父権主義。法律と秩序、罪悪感によってコントロールされる衝動性。因習的で画一的。ピューリタン時代のアメリカ、儒教時代の中国、シンガポールの規律、全体主義、騎士道、慈悲深い善行、宗教的原理主義。
    5.オレンジ:人口の30%。勢力は50%。
    科学的達成。自己はブルーの「群集心理」から逃れ、個別的、仮説的、帰納的、実験的、客観的、機械的、操作的、つまり典型的な意味での「科学的」な角度から真理と意味を探求する。高度に達成指向で物質的な獲得に向かう。科学の法則が政治、経済、その他の人間の出来事を支配している。世界は勝者が敗者に対する優位と特権を得るゲームが演じられるチェス盤のようなもの。法人型国家の基礎。ウォール街、中産階級、化粧品産業、トロフィー獲得合戦、植民地主義、ファッション産業、物質主義、世俗的ヒューマニズム、自由主義的な自己への関心。
    6.グリーン:人口の10%。勢力は15%。
    感受性豊かな自己。共同体主義、人間の絆、エコロジカル、ネットワーキング、人間精神はどん欲さやドグマや分離から自由にならなければならないとする。フィーリングや優しさが冷たい合理性にとって代わる。地球、ガイア、生命への慈しみ、階層制への反対。横の結びつきやつながりを形成していく。透過性のある自己、関係的自己。対話、関係の強調。調停と合意によって決定に到達するが、手続きが際限なく、決定に至れない事がある。この30年ほど、文化の研究を取り仕切ってきた。強度の平等主義、多元主義的価値観、多様性、相対的価値システム、多元的相対主義。主体的で非単線的思考。地球とそこに住むもの全てへの暖かい愛情、感受性、気遣いを示す。ポストモダニズム、ディープエコロジー、カナダのヘルスケア、人間性心理学、世界教会会議、グリーンピース、動物の権利保護運動、ポスト植民地主義、環境心理学。ここまでが第一層の思考。
    7.イエロー:人口の1%。勢力は5%。ここから第二層。集合的進化の最先端。
    統合的。生命は自然な階層、システムおよび形式の万華鏡である。流動性、自発性および機能性に最高度の重要性がある。差異性や多元性は相互依存的で自然な流れへと統合する事ができる。平等主義は、自然なランク付けと洗練性の等級によって補われる。知識と遂行能力が権力、地位あるいは集団的な感性にとって代わる。広く行き渡っている世界の秩序はリアリティの異なったレベルの存在(ミーム)の結果であり、ダイナミックな螺旋の上下運動のパターン。よい政治はますます高まる複雑性のレベルを通して現れてくるものを促進する。トランスパーソナル心理学、カオス、複雑性理論、ホリスティックな思考システム、ガンディーやマンデラのような多元的統合。
    8.ターコイズ:人口の0.1%。勢力は1%。
    全体論的。普遍的なホリスティックシステム、統合的なエネルギーのホロン、波、知識と感情など、互いに織り込まれた多面的なレベルを一つの意識システムに結びつける。普遍的な秩序があるが、それは生きた意識的な形のもので、外面的な法則に基づく(ブルー)や集団に固着した(グリーン)ものではない。壮大な統合は理論的にも現実的にも可能であるとする。螺旋の全体を使い、相互作用の多面的なレベルを見る。ハーモニー、神秘的な力、どんな組織にも行き渡っている浸透する流れの状態を見抜く。

    第一層のミームはどれもそれ自身では、他のミームの存在を十分に認める事ができない。誰もが自分の世界観が正しく最高の視点だと思っている。挑戦を受けると否定的に反応する。脅かされた時は必ず自らの手段を使って激しく打ちのめそうとする。

    ブルーの秩序にとって、レッドの衝動性もオレンジの個人主義も極めて不愉快に感じる。オレンジの個人主義にとって、ブルーの秩序は乳ばなれの出来ない赤ん坊であり、グリーンの平等主義は弱虫だと見なす。グリーンの平等主義は、優秀さや価値のランクづけ、大きな見取り図、ヒエラルキー、権威的に見えるものを受け入れず、グリーン以外のものには何でも強力に反対する。

    第二層の思考は、相対主義からホーリズムへ、多元主義から統合主義へ移行する。

    多くの議論は実際にはよりよい客観的な証拠の問題ではなく、議論している人々の主観的なレベルの問題となってしまう。第二層の思考なしには、人類は様々なミームが互いに覇権を握ろうとして攻撃しあう。

    オレンジの科学的な証拠がどんなに多くあってもブルーの神話の信奉者が説得される事はなく、グリーンの結びつきがどんなに多くあってもオレンジの攻撃性を感動させる事はない。

    第一層のミームは第二層のミームの創発に抵抗する。科学的な物質主義(オレンジ)は第二層の構成体に対して攻撃的なまでに還元主義的。神話的な原理主義(ブルー)は規制の秩序を退けようとする試みに見えるものに対して激怒する。エゴ中心主義(レッド)は第二層を全く無視する。呪術主義(パープル)はそれを呪う。グリーンは第二層の意識を権威主義者で階層的で父権的で抑圧的で人種差別主義者、性差別主義者だと非難する。

    男性性の傾向は、主体的、自律的、抽象的、正当性や正義を基礎にする。女性性の傾向は、浸透的、関係的、感情豊かで、思いやりと責任を基礎にする。

    男性も女性も同じ一般的な発達の波を進んでいくが、男性は主体性に、女性は交流性に力点を置きながら進む。

    左上象限を見ただけでも、より統合的な意識の地図が可能であり、それは様々な波、流れ、状態、タイプを含み、その全てがこの意識のスペクトルの重要な構成要素である。

    多元的相対主義から、普遍的統合主義へ移行する際の地図は、
    ・認知的、道徳的、霊性的、美的、イメージ的、人間関係的などの無数の異なった流れ、構成単位、発達の道筋がある。(例えばある人が認知的にはオレンジで、心情的にはパープルで、道徳的にはブルーといった事がある。)
    ・覚醒、夢見、睡眠、変性状態、非日常的状態、瞑想状態を含む意識の多様な状態。
    ・ジェンダー、人格を含む無数の異なった意識のタイプ。
    ・多様な器官の要素及び脳の状態。
    ・多様な文化の存在、背景となる文脈、多元的な把握、言語学的な意味論を含む無数の文化的な要素の重要なインパクト。それらのどれもが周縁化されずに、広大な織物の中に統合される。
    ・技術、経済基盤等全てのレベルにおける社会的システムの重要な影響力。
    が含まれる。

    自己とは重心をもった複数の自己の集合体。

    身体、心、魂、自己の霊性、文化、自然を鍛錬する事。

    宗教のない科学は不十分であり、科学のない宗教は盲目である。-アインシュタイン


    人類の苦しみの原因について、リベラルは外面的な原因を信じ、保守主義者は内面的な原因を信じる。つまり、リベラルは社会制度を批判しがちで、保守主義者は「あなたが貧しいのは怠け者だからだ」と内面的な要素を批判する。

    様々なモノの見方の各々は、次元は違ってもそれぞれリアリティのレベルの正確な見方である。多様性を認識する事は高貴な努力だが、それは本質的には断片化、疎外、分離を促進し、寄せ集め主義に寄与するだけ。我々は多元的相対主義によって提供された豊かな多様性に基づきながら、それらの多くの糸をつなげて一体にするホロニックな螺旋へと、相互に連結する編み込まれたコスモスへと織り込む必要がある。普遍的統合主義。

    人口の10%以上がグリーンの波に存在するようになるまでは、文化的な重心はグリーン以前に強くかかっている。従い、多元主義や多文化主義を無理強いしても失敗する。

    例えば、グリーンがよかれとブルーを解体すると、パープルとレッドが発達するのを不可能にする、つまり発達の螺旋の為に低次元の色でも解体してはならない。人は生まれた時は全員ベージュだから。

    グリーンの人間が増えるほど、より多くの人々に世界的な問題に対する真に総合的なアプローチを構想し、実行しうる、第二層の意識の超空間へ跳躍する準備ができた事になる。

    右側の発達と並んで左側の発達がなければ、つまり、物質的な技術の発達に払うのと同じほどの注意を意識の発達にも払わなければ、我々は集団的狂気の範囲を拡張するだけになる。

    世界がフラットランドだと誤認しているアナリストは、パープル、レッド、ブルーの人々にオレンジの技術やグリーンの人権を押し付け、結果的にブルーの聖戦やレッドの暴動を創ってしまう。現在はパープル、レッド、ブルーで世界人口の70%を占めている。従い、アナリストはより統合的な全スペクトル分析を採用する事。

    第二層(イエロー、ターコイズ)の能力は、統合的な地図に関わる事で訓練され、促進される。何故ならそうした地図は、より広範な、包括的な、慈愛に満ちた、そして統合的なコスモスとそこに住むもの全ての抱擁へと我々のマインドを開き、それに伴ってハートを開くから。大きな見取り図、地図は統合的な変容に向けてマインドとハートを開く事を助ける。

    統合的な変容の実践は、人という存在の全ての基本的な波(物質的、情動的、心理的、霊性的)を自己、文化、自然において訓練する事。現在のステージがどこであれ、そこで単純に最大限に健全になる事。

  • インテグラル理論の4象現について
    理解したくて読んでみました。
    人の発達は自己中心性の減少という
    ことが印象に残っています。
    とても難しく理解にはほど遠いのですが、
    4象現のレベルの深さを意識して
    物事を俯瞰していきたいと
    思います。

  • ティールの組織の発達のベース担っているウィルバーの理論の本人による入門書。

    入門とはいえ、結構、難しいというか、相当、色々な分野を横断しながら、早いスピードで結構色々な話に展開する。

    が、メッセージは結構明確で、私がここ数年間悩んでいたことの解決の糸口がある気がした。

    つまり、多元的、多様な価値観を大切にするのはいいが、決定不能になっていること。

    これは、ポストモダーンな思想の袋小路感というのもあるけど、日常のリアルな状況でも大きな問題。

    多様性を認めない人をどう受け止めるのか。そのまま、受け止めれば、その人の多様性を認めない言動を止められなくなる。が、その言動を禁止すれば、その人の価値観を否定したことになる。

    ここをどう乗り越えるか?

    横の多元性だけでなく、縦(発達)の多元性を認めること。

    そして、発達、進化の方向性、全体性に沿って支援すること。

    グリーンとティールの違いがなんだかクリアになった気がする。

  • あらゆるものがホロン構造(大は小を含み、小は大を含みな、相互依存の入れ子構造)という視点でもって、あたらしい思想のあり方を模索する。その肝心のホロン構造というアイデアがどこから来たのかが全然わからなくて、土台がわかないまま上の建物部分のアイデアばっかりを読まされている感。なぜホロン構造なのか?、ここの問いから始める必要があるし、それを示す前作があるなら、ちゃんと明記しておいてほしい。

  • 最後らへんの、文明の衝突について垂直な視点と水平な視点の両方で説明しているのが新鮮だった。

  • 読了

  • 何で、こんな難しい本を選択し、図書館で予約までしてしまったのだろうか。難しい専門用語の羅列で、知っている言葉を見つけるほうが大変である。ベビーブーム世代は、ミームの大きな蓄積であり、それを著者が危惧している事はわかる。指図は無用とばかりのナルシズム世代は、統合的ヴィジョンの創発の最大の障害になっているそうだ。要するに、著者は、反ミームなのである。ん〜、マインドマップにまとめなければ、ちんぷんかんぷんだ。すみません。

  • シンプルに言えば、まずコスモス(これは、「神」や「空」とほぼ同義語)がホラーキー構造をなして四象限にわたて自己を展開・進化・自己超越しつつあること、そして私たち人間はそういうコスモスの進化の一部であり、ある意味で先端である(物・生命・心全てを含み、霊性spiritをも実現するよ可能性を含んでいるから)ことを再発見することである。

    それはまず頭でわかること(認識)から始まり、全身心で獲得すること(意識の変容)に至る課題である。そして次にというか、同時にというか、コスモスの四象限すべてにわたる進化の開花に自覚的・能動的に参加することである。

    我々はコスモスの進化の先端を担わされたものとして、意味も、権利も、責任も与えられている。

    そして、その進化を自分自身において開花させる権利と責任、それらからコスモスのほかの部分−例えば、全人類や全生態系−の全面的な開花(ビッグブルーム)にも協力する権利と責任が与えられている。

     

    そこに人間が人間として生きる意味がある。

  • 分類=統合心理学・ウィルバー。02年9月。

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著者プロフィール

1949年、米国オクラホマ州生まれ。トランスパーソナルの代表的な理論家。著書に「万物の歴史」(春秋社)「ワンテイスト」(コスモスライブラリー)「意識のスペクトル」「アートマン・プロジェクト」「構造としての神」など.

「2002年 『万物の理論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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