あたりまえなことばかり

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レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901510134

作品紹介・あらすじ

言葉は命である!幸福、癒し、老いの意味から哲学と笑いのツボまで、疾駆する思考が世の常識を徹底的に覆す。
 雑誌連載の「幸福はどこにあるのか−わが幸福論」を中心に、ときにギリシャ哲学、ときに時事問題にも及ぶ14のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • このひとの文体は、この事実を与へるだけではない。詩人や物語は、この事実を放ち、ひとを揺さぶる。ことばが響く。ところが、このひとはことばが響くのではなく、読みながら思考が動く。このひとの情熱的な部分である。
    このひとにしろ詩人にしろ、読んで考へるかは、受けとつた人間次第である。いいか悪いかは、そんなの知らないといふだらう。ただ、このひとはこうするより他なかつた。こう伝へるより他はなかつたはずだ。
    事象そのものを問ふといふこと。考へるとはそのことを考へなければ一体何を考へたことになるのだらう。
    知らず知らず、「なぜ○○なのか」とか「○○とは何か」と問いをたて、ひとのことばを聞き、自分で考へたつもりになつてゐる。けれど、この問いといふものは、当のその「○○」を前提にしてしまつてゐる以上、本当の意味で確かな問いではない。その「○○」が在るといふことを疑つてゐないからだ。
    では、その「○○」が「在る」とはどういふことなのか。この時、ことばの存在の驚異に出くわす。「ない」といふことばが「ある」。存在しないものは、語りえない。裏返せば、あらゆることばが「存在してゐる」
    自分といふ存在について同じ様に考へれば、他人といふ存在を思ふ「自分」がゐる。どんなにあがいても、この「自分」以外であることはあり得ない。裏返せば、「自分」以外であり得る他人は存在しない。
    時間といふことについて考へれば、未来や過去といふものは、「現在」といふ一点を離れることができない。過去を語る「現在」があり、未来を望む「現在」がある。現在の視点を離れて、過去を語ることも未来を望むこともできない。直線的水平的時間から、垂直に立ち上がる。
    この様に考へていくと、なんだか生きていくことが盛大な茶番に見えて笑へてくる。この一点を一度掴んでしまへば、あらゆる事象が澄み渡る。だからこそ、逆説的に真面目になつていく。真面目に茶番に向つていける。
    当り前に驚き、その本質を考へていくと、「なあんだ。当り前なことではないか」とその事象をその事象として受け容れることができる。他人をどうにか変へやうとか、存在しない未来に怯えることも、過去に振り回されることもない。この「自分」以上になりえないといふ、不自由な自由を得てしまつた以上、これ以上の自由などあり得ない。これは悲しいことでもあり、喜ばしいことでもある。それを含めて「生命」だから。

  • 18/04/04。若松英輔さんが、池田晶子さんの作品の中で一番好きだといってた。

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    インタビュー記事
    外来講師オススメの本

  • 平易な言葉を用いているようでも、内容は奥が深く、決して読みやすいわけではありません。

    しかし、真に思考しながら書くということがどういうことかを見せてくれる本です。
    著者が一言一言を大事にしながら言葉を紡ぎ出していることがよく分かります。

    著者は割と若くして亡くなったようですが、晩年の頃の著作も読んでみたいと思いました。

  • 池田晶子『あたりまえなことばかり』。死は“無”、つまり存在しない。あるのは“存在”。それでは私とはなにか。全てはいまここに存在しており、区分けできない全体。かつそれを認識している“これ”も確実に存在する。おかしなこと、存在とは絶対不可解。ではなぜ存在はそのように存在するか。それには存在するから存在するとしか言えない。絶対不可解。無知の知。わからないから考える、あくなき欲求。それが希哲学。

  • これも分かりやすい。

  • 表題のとおり、当たり前のことかもしれませんが、普通は指摘されるまで気づきません。しかし、そのことに気づいたときに、著者の思索の深さに少し触れた気分になります。

  • この本の第三章は秀逸です。
    丁寧な言葉でひとつひとつ順番に歩みを進める文章に引き込まれました。
    著者と一緒に思考できるように工夫した跡が読み取れます。
    普段はもっと速く一気に進んでいたところをあえてスローモーションのようにしているので、とりあえずついて行ける読者も増えるのではないでしょうか。
    あとがきにも笑いを封印したため苦労した旨が書かれていました。
    池田さんの本は、多数読んだけれど、読むたびに驚きがあります。

  • 哲学の世界をわかりやすく解説してくれる一冊。
    倫理/理性/死/宇宙の果て/人を殺すこと などについて考えさせられます。
    哲学とは考え続けることで、自分がいかに知らないかということを知ることだそうです。う~ん。たしかに終わりがないですね。

  • 2011.09
    あたりまえなことばかり 池田晶子
    人生の目的とは魂の世話をすることである。ソクラテス
    知るということは思い出すということである。プラトン
    生死 宇宙 善悪
    外なる規範としての道徳 内なる規範としての倫理
    自身の行為の動因が善にあることを自覚しつつ行為すること自立的であることそれだけが倫理的であること
    人は不思議に目覚めることによって自ら矩(のり)を知る
    死体はあるが死はない
    理性とは事象一般すなわち常識についての洞察力である
    宗教の教祖は必ず語る
    相応しい魂にのみこの言葉を植え付けるのだ パイドロス
    いかに人を信じさせずに考えさせるか
    ソクラテスはイデアによるロゴスがどうしてかそうなるからそのような成り行きで死んだ
    人生の目的とは魂を善くすること
    知ることはイデアを想起すること
    認識によって存在は認識できない
    死後の生命とは魂
    あなたの内なる神を信ぜよ キリスト
    宗教で信仰することは知性を放棄することに科学は知性を駆使すること
    わからなさを前にしたときの謙虚さということ以外には倫理性というのは発生しない
    私とは何かではなくて私が何という名前で呼ばれているか
    われわれが現在を生きるとは存在の記憶を生きることである

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著者プロフィール

池田晶子(いけだ・あきこ)
1960年、東京生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科卒。文筆家。
専門用語による「哲学」ではなく、考えるとはどういうことかを日常の言葉で語る「哲学エッセイ」を確立して、多くの読者を得る。とくに若い人々に、本質を考えることの切実さと面白さ、生死の大切さを語り続けた。2007年2月23日、没。
著書に、『14歳からの哲学―考えるための教科書』『14歳の君へ どう考えどう生きるか』『新・考えるヒント』『41歳からの哲学』『暮らしの哲学』『人生は愉快だ』『魂とは何か さて死んだのは誰なのか』『私とは何か さて死んだのは誰なのか』『死とは何か さて死んだのは誰なのか』『無敵のソクラテス』『幸福に死ぬための哲学ー池田晶子の言葉』など多数。

「2017年 『絶望を生きる哲学 池田晶子の言葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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