14歳からの哲学 考えるための教科書

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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901510141

作品紹介・あらすじ

 人には14歳以後、一度は考えておかなければならないことがある。

 言葉、自分とは何か、死、心、他人、家族、社会、理想と現実、友情と愛情、恋愛と性、仕事と生活、本物と偽物、メディアと書物、人生、善悪、自由など、30のテーマを取り上げる。

感想・レビュー・書評

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  • 仕事とはなんだ、生活のため?いや、そうすると専業主婦の説明がつかない、では、生きるための価値?そうすると、生きるとはなんだ、

    と、いったようなことを転職活動しながらぐるぐると考えていた時に、Google先生がこの作品を抜粋してくれました。それが以下の部分。

    「生きるためには食べなければならない、食べるためには稼がなければならない、そのためには仕事をしなければならない、この「しなければ」の繰り返しが、大人の言うところの「生活」だ。しなければならなくてする生活、生きなければならなくて生きる生活なんかが、どうして楽しいものであるだろう」
    ※「くもりのち晴れメディア」より

    そう、生活のため、とはつまりその生活に価値を見いだせていれば生活のために仕事は必要だけれど、その生活に価値を見いだせていなければ、生活とはただ単に死ぬまでの暇つぶしとなり、暇つぶしのために心身を疲弊させて働く、ということになるわけで、というか、だったらただ死ぬのを待つのが生活なのか?じゃあなんで生きてんの?

    と、またぐるぐる考える。
    そして、そもそもこの、「考える」というのはどういうことか、というところから、思春期のボーイズアンドガールズに生きることの不思議について教えてくれる。

    決して答えを求めて読むものではなくて、自分で考えて答えを出すためのヒントを与えてくれます。
    読み始めた時は、今まで自分の中でもやもや考えていたことをわかりやすく文章にしてくれてるので、盲信して読み進めていました。けれど、アラサーともなると、生きてく中でいろんなことがあって、ある程度自分のことは自分で守らないといけなくなる。わたしは、この点においては、ある程度、人はずる賢くあっても仕方がないと思っている。
    ただ、14歳のボーイズアンドガールズにとっては、そんなものは生きてく中で見につければいいのであって、今は「人は、卑怯なことだけはするべきではない。卑怯は精神の死だからだ。卑怯によって生き延びるよりは、時には、人は死ぬことの方を選ぶべきかもしれないんだ」という価値を根付かせることにはとても大きな意味があると思う。

    もしも自分が学校の先生であったのなら、この作品は道徳の教科書に使いたい。
    わたしは14歳の時に、こんなふうに内面と向き合う余裕なんてなかったし、きっと、この作品を読み切る頭もなかったと思う。今この作品に出会って、自分の心はこんなにもティーンエイジャーで、大人になったら心は大人になるんだろうなってなんとなく思っていたけれど、きっとそうではなくて、心はずっと生の感情を持ち続けていて、それは乳児期から発達して思春期くらいでピークを迎えて、それは大人になっても変わることなんてなくって、脆くて純粋で素直で、つまりはティーンエイジャーで、俗にいう大人になるっていうのは精神の確立のことなんだ、って、そこに気づけた。これからは、自分の大切な精神を築き上げてゆくこと、それがわたしの当面の、生きること。

  • まさに、考えるための教科書。14歳からとうに過ぎてしまった私でも、ものごとへの問い、その答えを考える、自分の大切さを学んだ。あの日、あの時、どことなく自分の存在が、不確かで、自分の周りの他人はなぜ他人と思うのか、生きる、死ぬとはどういう事なのか、ふわっと感じていた事に、考えることを植え付けてもらった感じがした。何度も再読するたびに、新たな自分の思いが発見できそう。

  • 読むのにものすごく時間がかかりました。
    なんせ"考えるための教科書"です。
    一文読んでは前に戻り、一章読んではページを閉じて思案する。
    哲学に馴染みのない人にもわかりやすいように平易な言葉で書かれているけれど、それでもやっぱり難しい…。
    わかった部分は自分でもう一度考えてみる。
    わからない部分(たくさんあった!)は、少しでも自分の言葉に置き換えて、書いてある内容を咀嚼してみる。
    行ったり来たり、立ち止まったり、頭を使う読書となりました。

    自分とは何なのか。
    死とは、善悪とは、心とは。
    大人でも自分の答えをもっている人は少ないのではないでしょうか。
    日常や仕事に追われて流れていく日々の中、立ち止まってきちんと考える時間を持ちたいと思いました。
    まずは「言葉を大事にするということが、自分を大事にするということなんだ」という一文を胸に、毎日を暮らすことにします。
    自分の中でほどよく熟成されたころ、もう一度、二度、三度…と読み返してみたい1冊です。

  • 14歳向けの平易な言葉で、わずか200ページ強の本であるにもかかわらず、同じところを何度も読み直したり、途中考えるために止まったりし、読了には時間を要した。

    読みながら、本書の狙いである「知る」ことは自分で考える事でしか達成できない。を体験。

    各テーマについて、何も答えは書いてない。
    あなたが当たり前だと思ってる事って、本当のこと?と問い続けてくる。
    言われてみれば……となり、いつの間にか考え始めている自分がいる。

    次は、各テーマごと丁寧に読み直し、もっと深く考えてみたいと思った。
    学校の授業で討論するのも面白いだろうし、子どもと話し合って見るのも面白そう。もちろん、大人同士で考えを深めていくのも大変いい。

    これは、教科書のように時々引っ張りだしては、読み返し、都度考えていくための本。
    考えを深めることで、自分にとっての善悪が見えてくるだろう。それはつまり、自分のしたいことが明らかになっていくということ。
    人の教えではなく、自分の考えによって、人生を変えていくためのキッカケを作ってくれる本に出会えた。
    この奇跡に有り難う。

  • 考えるとは、自分とは、恋愛とは、人生とはー。どれも青春期に一度は考えたことがありそうなことを、語りかける口調で、ともに考えを深めようとする一冊。
    大人になってから読むと、まどろっこしさがあって完全には読みきれない。ただ、10代の頃、一緒に回り道をしてくれるような本に出会えたら、心のもやもやを言語化する手助けになるかも。

    印象に残った言葉
    「他人から見られて恥ずかしいことは、自分にとって恥ずかしいこと」

  • とにかく人が素手で考え始められる…哲学とは何かを14歳に向けて書かれていますが、大人でも読み応えのある内容でした。文章は平易ながらも各テーマはそこそこ重いです。

    特に15友情と愛情、18品格と名誉は、10年くらい前に読んでおきたかったくらい、個人的に刺さります。

    読み終えて殆どの方が、分かった分からないというよりは、分かったような分からないような…そんな感覚に陥ってしまい、スッキリしないかもしれません。けど個人的にはこういう感覚は好きです。

  • この著書は答えを指し示すものではなく、
    ましてや答えなどはない。
    普段あたりまえとして考えてこなかったことを、
    14歳の読者に向けて語りかけているが、
    何歳であろうとと万人=人類にとって共通の謎を
    改めて考える機会を与えてくれる。
    そして「わからない」ということを改めて「わからせて」くれる。

    著書の中で特に個人的に留めておきたい内容の抜粋は以下。

    ・あたりまえのことを考えるほど面白いことはない。
    ・思うのではなく、考えるとこが大事
    ・言葉とはなにか、自分とは、死とは
    ・自分の体は、自分の意思とは関係なく呼吸をし、消化をし、排泄をする。
    ・最も身近な自然は自分の体。この体や生命は自分でつくったものではない。
    ・心とは何か。もし自分=自分の性格であったら、そんな観察や分析はできない。他人の性格は分かるが、自分の性格が分かるとすれば、自分の中に自分でない部分、自分の事を他人みたいにみる部分があるということ。
    ・性格や感情が心で、その心が自分だとしたら、しょっちゅう変わる感情や性格のように移ろい変わるものが、自分が変わらずに同じ自分だとわかるのはなぜだろう。
    もともとの自分というのは、性格や感情とは別のもの、決して動いたり変わったりすることのない何かではないだろうか。
    ・「自分である」ということは目に見える体からみても、目に見えない心からみても考えれば考えるほど奥が深くて底が知れないもの
    ・わけがわからなくなれば大成功。わからなくなるからこそ、これから考えていける。
    ・社会というものも、目には見えない観念である。観念が現実をつくっている。
    ・規則や社会が決める法律自体は正しいとは限らない。善悪の判断の基準は自分にある。
    ・自分で自分の価値を知っているなら、他人の評価は気にならない。もしそうでないなら、他人の評価を価値としている。
    ・人は個に徹するほど天に通じることになる。ちっぽけな自分を捨てて無私の人になるほど個性的な人になる。
    ・物資は変化するが精神は変わらない
    ・精神の自由とは「怖れがない」こと。死への怖れが人を不自由にさせる。
    ・人は思い込むことで自分で自分を不自由にする。これが思い込みだという事は考えなければ気づかない。徹底的に考え抜けば自由になる。
    ・死ぬということは全てが無に帰すか
    →無は「ない」のだから死はない。だから死を前提にして生きることはできない真実。
    ・死がないのだから、生の時間は死に向かって直線的に流れていくものではない。
    ・時間とは本来流れるものではない。過去から未来に流れるものではなく、ただ「今」があるだけ。 なぜなら過去を嘆いたり未来を憂いたりしているのは、今の自分以外の何ものでもないから。
    ・今があるだけ、今しかないのだから、今やりたいことをやるのは、正しい。
    ・人生は自分が思ったとおりの人生になる。人生はつまらないものだと思えばつまらない人生だし、人生は素晴らしいものだと思えば素晴らしい人生になる
    ・人生が存在することには意味も理由もない。存在すること自体が意味も理由もない奇跡的な出来事だからだ。

  • 生きるとは、美しいとは、死とは、宗教とは、家族とは、友達とは等、自分の思い込みはいったん捨て、自分の頭でよく考えてみよう、宇宙や自然は誰かがつくったわけではなく、そこに「ある」という事の意味を考えよう。すべて、自分のなかにあり、つながらないものはない、わからなくていいんだよ。あたりまえの事を書いてあると思うかもしれないが、深く考えてみよう、と語りかける。
    中学生くらいの人には難しくても、投げ出さず少しずつでも読んで欲しい。大人にとっても大事な事が書いてある。生きることがつらい人には特に読んで欲しい。
    言葉を大切に使おう、古典を読もう、と思える。
    “精神が豊かであるということだけが、人生が豊かであるということの意味だ“(148頁)
    “自分を愛するということが、そのまま、世界を愛するということなんだ。だから、もしも君が世のため人のために何かをしたいと願うのなら、一番最初にしなければならないことは何か、もうわかるはずだ“(104頁)
    などが心に残った。
    考えたくない、向き合いたくない事がある人には厳しい言葉が並んでいるかも。

  • 子供の頃は大人は何でも知っていると思っていた。大人になっても実は知らないことばかり。物事を固定観念で捉えてしまうことも多く、我ながら情けないと思う。
    この本からヒントを貰えたらと期待しつつ読み始めたが、難解な言い回しに正直、戸惑いを覚えてしまった。
    これまで哲学的な物の見方や考え方をしていなかったのだから仕方がない。
    もう一度、14歳に戻ったつもりで読んでみようとページをめくった。

    〈20〉メディアと書物 
    この章は比較的理解しやすかった。
    メディアによって簡単に情報を受け取ることが出来る現代、例えば戦争の映像は日々流れていて「知りたい」という欲求を直ぐに満たしてくれる。何のために知りたいのかを考えもせずに。
    情報は変化するもので、常に追いかけていないと不安だから見ることを止められない。
    このような情報は決して「知識」ではない。"自らが考えて知ること"こそが大事なことだ。
    時代を通して変わることのない知識は古典という書物の言葉の中にある。だから、言葉を大事に生きることが、人生を大事に生きることに他ならないのだ。

    「わからないということがわかっただけでも構わない。これから自分で考えて知っていけば良いのだから」と、筆者の言葉は続く。
    確かな答えはないが、物事の捉え方を意識することで、生き方を変えてゆくことは出来ると思えた。

  • 飲茶氏の『14歳からの哲学入門』のあとがきに本書のことが触れられており、飲茶氏が池田晶子氏をリスペクトしているということから購入。
    また、10代になった2人の子供がいることから、ネットを中心に情報の渦に巻き込まれながら過ごすであろう思春期に、時には立ち止まって考えるための哲学的思考を持つきっかけを得られる本を探していたという理由もあった(副題が「考えるための教科書」と銘打ってあるので)。

    本書は14歳からの哲学パートが2つと、17歳からの哲学パート1つという3部構成となっており、14歳からの哲学パートの前半はざっくりいうと「自分と他者」、後半は「自分と社会」というテーマから成っている。
    17歳からの哲学パートは、さらに広い範囲を扱い、宇宙、人類の歴史、善悪、自由、宗教、人生の意味、存在など、答えのない抽象的なテーマにも踏み込んでいる。

    著者の池田晶子氏は、哲学者というよりも文筆家と紹介されることがあるように、その文体には専門的な哲学用語や哲学的言い回しなどは一切なく、終始語り掛け口調で書かれている。
    特に本書は(活字離れが進んでいる)中高生向けに書かれていることから、"思春期あるある"なネタを取り上げながら、読者を飽きさせない気遣いが感じられる。
    ただその根底には、ソクラテス的対話の重要性や、心身問題、存在論など長い時間をかけて語られてきた哲学的課題を取り入れながら、理解しやすい表現で読者に考えさせている。

    自分にも他者にも社会にも嫌悪感を抱きやすい多感な時期だからこそ、また複雑かつ多様で答えの見えない時代だからこそ、モヤモヤを抱えながらも「考える」ことが生きていく上でますます必要不可欠となることを、本書は改めて教えてくれる。
    2020年代の言葉でいえば、考え抜くことで「ネガティブ・ケイパビリティ」が強化され、先行き不透明な現代を生きるための力と自由意志を得られる可能性が高まる、といったところだろうか。

    本書に挙げられているテーマに関しては、著者は万人受けするような答えは何も書いていない。
    だからこそ、答えのない漠然とした、モヤモヤしたテーマに対して向き合うきっかけを与えてくれるのが本書の価値なのではないかといえる。

    中高生だけではなく、中高生を持つ親にとっても、自分の思春期に抱いた感情やモヤモヤを本書を読んで思い起こすことで、子供との建設的なコミュニケーションを実現するための一助となるかもしれない。

    読後にどう感じ、行動するかは本人次第だが、自分の子供が中学3年前後になった頃に読ませたいと改めて思えた一冊であった。

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著者プロフィール

1960年東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業。文筆家。専門用語による「哲学」ではなく、考えるとはどういうことかを日常の言葉で語る「哲学エッセイ」を確立して多くの読者を得る。とくに若い人々に、本質を考えることの切実さと面白さ、存在の謎としての生死の大切さを語り続けた。著書多数。2007年2月23日没。

「2022年 『言葉を生きる 考えるってどういうこと?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池田晶子の作品

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