思想としての仏教入門

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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901510417

作品紹介・あらすじ

インド・中国・日本の広範多岐な仏教の全体像をコンパクトに解説。仏教思想の全貌をわかりやすく説きながら、仏教の現代的な意味も考える。
 好評を博した放送大学講座のテキストを大幅に改稿。懇切な脚注、解説索引、読書ガイダンスを付す。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の放送大学での講義テキストをもとにしたほんで、仏教学の基礎知識をわかりやすく解説するとともに、さらにくわしく学んでいくための手引きをおこなっている本です。

    本書における著者の立場は、特定の宗学に依拠することのない自由な立場であるとともに、またたんに実証的・歴史的な立場にとどまることなく、仏教の「思想」が現代においてどのような問題を投げかけているのかという観点から、議論を展開しています。とりわけ、『法華経』に哲学的他者論に通じる問題を見いだしているところなどは、入門書としてはやや立ち入った考察が展開されているように思います。また、仏教における差別の問題など、現代的な観点からの検討もおこなわれており、幅広い観点から仏教について学ぶことのできる内容になっていると感じました。

    著者の『日本仏教史』(新潮文庫)とならんで、仏教を学びたいと考える読者への考慮がゆきとどいた、優れた入門書だと思います。

  • もともと放送大学のテキストとして書かれたもの。それを一般向けに編集しなおしている。大学講義のテキストなので入門といえば入門だけど、超初心者向けでは決してない。ある程度、事前の知識は必要です。

    その前提の上で言えば、わかりやすいのに奥が深い本。
    日本で仏教を学ぼうとすると、日本仏教だけ、しかも場合によっては自分が関わる宗派だけを学んでわかった気になりがちだが、本書はインドから中国、南伝仏教と仏教伝播の歴史を踏まえ、仏教の全体像を俯瞰できるようになっている。

    大学のテキストということで、15章立てで分かりやすい反面、端折ってしまったり省略せざるを得なかったであろう部分もあり本格的に学ぶには不十分な面もある。しかし、一般人ならこれで十分でしょう。また、最後に「進んで仏教を学ぶ人のために」という章を設けて、書籍や学ぶ場を紹介してくれているので、本格的に学びたい人はその章を参考にすればいいと思う。

    https://amzn.to/2JZwoA2

  • 2015.8.6仏教に関する入門書。その成り立ち、思想、宗派など、仏教というひとつの思想、宗教の枠の中にある様々な概念や、その仏教と他の宗教との関係性、仏教と社会との関係性などを広く紹介している。仏教の根本には、覚りや空など、初期の仏教では無記と言われ言葉では説明できないというものがあり、故に仏教は様々な解釈を展開しながら複雑化、多様化している。本質が曖昧だからこそ、その周辺にはいろんなものを作ってくっつけることができるわけであり、本質が曖昧だからこそ、常に批判的に、よりよきものを求める。絶対の教義がないのが仏教なので、あらゆる主張が繰り広げられる。そしてそれらに対し常に批判的な思考が求められ、そのような仏教の構造的な背景によって今に至る多様で複雑な仏教が生まれたと解釈する。個人的には、私の人生に対する実践的な概念や思想が知りたかったので、特に四法印、即ち諸法無我:すべての存在には絶対の本質などなくあらゆるものは様々な要素による関係によって作られている、諸行無常:あらゆるものが様々な関係のうちに構成されている以上、要素が変われば関係が変わるわけで、よってすべてのものは変わりゆく、一切皆苦:この世は苦しみに満ちていて、生老病死など、生きることはすべて苦しみである、それはこの無常によるもので、あらゆるものは変わっていくから、永遠などないから、にも関わらず執着してしまうから、涅槃寂静:その執着を取り払うことで、幸福に至り、悟りの境地に至る、という考えは、参考にできる。一切は関係性であり、無我つまり空であり、故に無常、変化であり、それは即ち常に現実と理想のギャップが生まれるということであり、それによる欲望が我々を苦しめる、よってこの変化そのものを受け入れる、常に理想と現実はギャップが生まれるんだということを受け入れることで、安定した状態になれる、のだと思う。諸法無我、故に諸行無常、囚われて一切皆苦、受け入れて涅槃寂静だろう。前書きにもあったが限られた紙面での仏教紹介なため、内容はやや詰め込み感がある。が、仏教についての概要を広く知れる良い入門書であると思う。

  • 著者:末木文美士
    装幀:高麗隆彦

    出版社
    http://www.transview.co.jp/books/490151041X/top.htm

    【簡易目次】
    はじめに  [i-iii]
    目次 [v-xi]

    1 いまなぜ仏教か
    1 多様な仏教 003
    2 さまざまな視座 009
    3 方法としての仏教 011

    2 歴史的概観
    インド 015
    中国 021
    日本 026

    3 テキストの森 
    仏典の言語 029
    仏典の成立 030
    訳経 034
    仏典の整理 038

    4 解釈のパラダイム 
    教相判釈 041
    総合か選択か 046
    大乗非仏説論 050

    5 苦悩としての存在 
    ブッダの出現 053
    苦・無常・無我 055
    縁起 060
    涅槃 063
    四諦 065

    6 言語と存在 
    存在の分析 066
    ナーガールジュナの論法 069
    言語と存在の議論 074

    7 象徴としての世界 
    神話的世界 079
    密教の世界 083
    密教の体系 086

    8 心の深層 
    三界唯心 093
    唯識説 096
    天台の止観 100

    9 他者と関わる 
    菩薩の精神 105
    『法華経』の場合 110
    『法華経』の展開 116

    10 コミュニティの形成 
    在家と出家 119
    出家者の教団 121
    大乗仏教と戒律 125

    11 超脱の道 
    禅と三昧 132
    修行の段階と即の概念 134
    頓悟と即身成仏 138

    12 来世と救済 
    世界の構造 145
    阿弥陀仏と極楽世界 148
    浄土教の展開 152

    13 楽観論の陥穽 
    仏身論の展開 158
    如来蔵と仏性 161
    日本における展開 166

    14 差別と平等 
    仏教の平等観 171
    業と輪廻 174
    一乗と三乗 180

    15 思想史の中の仏教 
    思想史の中の仏教 185
    インドの場合 187
    中国の場合 190
    日本の場合 193


    進んで仏教を学ぶ人のために 197
      何を学ぶか
      どこで学ぶか
      何を読むか
      いかに学ぶか

    あとがき(二〇〇六年四月 著者) [205-206]
    事項索引 [XII-XV]
    書名解説索引 [VII-XI]
    人名解説索引 [I-VI]


    【目次】
    はじめに  [i-iii]
    目次 [v-xi]

    1 いまなぜ仏教か
    1 多様な仏教 003
      三つの大きな流れ
      東アジア仏教の多様性
      共通了解はあるか
    2 さまざまな視座 009
      思想の視点から
      統一理念の終わり
    3 方法としての仏教 011
      伝統批判の意味
      外来思想としての仏教
      常識の解体


    2 歴史的概観 
    1 インド 015
      ブッダの生涯
      教団の分裂
      大乗仏教の展開
      インドでの滅亡とチベットへの伝来
    2 中国 021
      経典の翻訳
      隋・唐時代の発展
      浄土教と禅
      朝鮮の仏教
    3 日本 026
      伝来と展開
      実践思想としての鎌倉仏教


    3 テキストの森 
    1 仏典の言語 029
      なぜ多様化したか
    2 仏典の成立 030
      三蔵成立の経緯
      大乗経典の系統
    3 訳経 034
      漢訳の三つの時期
      漢訳仏典の特徴
      チベットと日本の場合
    4 仏典の整理 038
      整理と体系化
      大蔵経の編纂


    4 解釈のパラダイム 
    1 教相判釈 041
      矛盾をどう解消するか
      天台智顗【ちぎ、538- 597年】の教判
      華厳宗と禅の場合
    2 総合か選択か 046
      空海の総合性
      最澄の二者択一
      専修という方向
    3 大乗非仏説論 050
      今日の方法の先取り
      学問対信仰


    5 苦悩としての存在 
    1 ブッダの出現 053
      ウパニシャッドと異端の自由思想家
    2 苦・無常・無我 055
      四苦と無常
      不変の実体はない
      ドグマとしての無我説の問題
    3 縁起 060
      十二縁起の考え方
      輪廻は含まれるか
    4 涅槃 063
      涅槃とはどのような状態か
      理想の境地の曖昧さ
    5 四諦 065
      迷いと悟りの四つの真理


    6 言語と存在 
    1 存在の分析 066
      アビダルマ仏教の形成
      時間の連続性をどう説明するか
    2 ナーガールジュナの論法 069
      『中論』の過激な論法
      無自性の立場と実践主義
      ニ諦説をめぐる議論
    3 言語と存在の議論 074
      言語と体験
      禅の言葉
      二元論を崩す意味


    7 象徴としての世界 
    1 神話的世界 079
      大乗経典の神話的言語
      ブッダの神話化
      多数のブッダと三昧体験
    2 密教の世界 083
      金剛乗の立場
      チベット密教のシンボル言語
    3 密教の体系 086
      『即身成仏義』の体系
      曼荼羅の宇宙観
      三密と密教の意義


    8 心の深層 
    1 三界唯心 093
      出発点としての『華厳経』
      心を見る二つの方向
    2 唯識説 096
      ヨーガから生まれる
      認識なくして実在なし
      アーラヤ識とマナ識
      悟りへの道
    3 天台の止観 100
      『摩訶止観』の体系
      一念三千の理論
      悟りの実現


    9 他者と関わる 
    1 菩薩の精神 105
      ストゥーパ崇拝と在家信者
      平川彰説の検討
      「死せるブッダ」から「生けるブッダ」へ
      菩薩における利他の精神
    2 『法華経』の場合 110
      迹門〔しゃくもん〕と本門
      『法華経』成立の三段階
      第一類の読み解き
      第二類の実践思想
    3 『法華経』の展開 116
      日本での圧倒的信仰
      日蓮による革新


    10 コミュニティの形成 
    1 在家と出家 119
      原始仏教以来の教団組織
      守るべき戒律
    2 出家者の教団 121
      サンガの構成
      入門儀礼
      サンガの生活
    3 大乗仏教と戒律 125
      部派の戒律
      梵網戒と『四分律』
      国家仏教の時代
      最澄の真俗一貫の主張
      薄れる戒律の意味


    11 超脱の道 
    1 禅と三昧 132
      禅定の修行
      般舟三昧〔はんじゅざんまい〕
    2 修行の段階と即の概念 134
      悟りの段階
      現世における悟り
      即と不二〔ふに〕の危険性
    3 頓悟と即身成仏 138
      南宗禅の考え方
      ラサの宗論
      漸悟と頓悟の違い
      即身成仏の発想
      成仏の思想と葬式仏教


    12 来世と救済 
    1 世界の構造 145
      地獄・餓鬼・畜生
      修羅・人・天
      仏国土の構造
    2 阿弥陀仏と極楽世界 148
      さまざまな浄土
      阿弥陀の誓願
      称名〔しょうみょう〕念仏の起源
    3 浄土教の展開 152
      観想念仏と心の中の浄土
      悪人往生と絵解き
      法然と親鸞
      阿弥陀という他者


    13 楽観論の陥穽 
    1 仏身論の展開 158
      法身〔ほっしん〕とは
      真如のとらえかた
      三身〔さんじん〕説への展開
    2 如来蔵と仏性 161
      だれでもブッダになれる
      東アジアの現実主義
      『起信論』の体系
    3 日本における展開 166
      現実肯定の思想
      本覚思想の問題
      仏性論の見方


    14 差別と平等 
    1 仏教の平等観 171
      ラディカルな階級批判
      アンベードカルの仏教復興
    2 業と輪廻 174
      差別の思想
      仏教の「業‐輪廻」説
      中国における神滅不滅論争
      業‐輪廻説をどう見るか
    3 一乗と三乗 180
      最澄と徳一〔とくいつ〕の論争
      『法華経』における差別と平等
      仏教の女性観


    15 思想史の中の仏教 
    1 思想史の中の仏教 185
      インドと中国における過渡期の思想
      日本の独自性
    2 インドの場合 187
      シャンカラの不二一元論
      なぜ過渡期の思想なのか
    3 中国の場合 190
      仏教と道教
      朱子学と陽明学への影響
    4 日本の場合 193
      受容から神仏習合へ
      神道の優越
      保持された影響力


    進んで仏教を学ぶ人のために 197
      何を学ぶか
      どこで学ぶか
      何を読むか
      いかに学ぶか


    あとがき(二〇〇六年四月 著者) [205-206]
    事項索引 [XII-XV]
    書名解説索引 [VII-XI]
    人名解説索引 [I-VI]

  • 10/04/02。もと、放送大学のテキスト。『入門』とあり、はしがきにもそのように書いてあるが、末木さんの著書らしく、奥が深い。

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著者プロフィール

1949年山梨県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学、博士(文学)、東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。専門は仏教学、日本思想史。著書に『日本仏教史−思想史としてのアプローチ』(新潮文庫)『日本宗教史』(岩波新書)『日本思想史』(岩波新書)などがある。

「2021年 『近代日本宗教史 第六巻 模索する現代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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