父が子に語る近現代史

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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901510776

作品紹介・あらすじ

アジアの一国として、日本は尊厳をもって存在できるのか。
司馬遼太郎らに象徴される「単純でわかりやすい」歴史観を脱し、「今」の問題につながる歴史を捉えるために。
世界と繋がる日本の「歴史」が良くわかるユーモア溢れる歴史読本・近現代篇。

感想・レビュー・書評

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  • 「歴史」は
    科学ではなく文学だと思う。
    と著者の小島毅さんのお言葉。

    その伝でいけば

    「歴史」は
    「覚える」ものではなく「考える」もの

    「歴史」は
    「見せたいもの」を鵜呑みするのではなく
    「見せたくないもの」を探り出すもの

    「歴史」は
    近視眼的になるのではなく
    俯瞰的に見定めていくもの

    いろんな「見方」「考え方」を
    学ばせてもらえる良書の一冊です

  • 2009年発刊の本書を今この時(2020年)に読んでみて、「近現代史」のただ中に自分は確かに生きているのだと実感。歴史とは「常民」が求め、その流れを形作るものであるという著者の指摘には、読み手を歴史の主体へと転換する力がある。そして、アジア諸国に対して日本が行ってきた「見たくないもの」に向き合うことこそが、真の友好関係を築くことになると熱く語る最終章が印象的だった。

  • 「誰かが主体的に全体のグランドデザインを描いて遂行した計画ではなく、なんとなくそうなってしまった…、日露戦争以降の恐ろしさ…。」
    「歴史とは善か悪かを単純には判断できない、複雑微妙なものです。」

  • 歴史は繰り返す?

    父から子に語りかけるという形式により、読み手であるこちら側は、子供の立場と大人の立場の両方で考えることになりました。

    読中は、日本が歩んできた道について、正しかったか、間違っていたかということに、著者は何かこだわりを持っているように思えましたが、あとがきで『本書は決して「唯一の正しい近現代史」を主張するものではない』と述べられています。反論したかったこともいくつかあったのですが、こう書かれていると何かうまく逃げられた感じがしなくもないです。

    しっかりした自分の歴史認識を言えるようには、本を数冊読むくらいではダメで、いろんな考え方があるという前提で消化しながら、多読することにより、自分の中で湧き出てくるのでしょうね。

    一般国民にはTVを中心としたマスコミの影響力はまだまだ大きく、真実を流さないことによって、国民感情を操作する時代は続いていくでしょう。
    もっと他の歴史本も読まないと、と感じました。

  • 著者がいうように歴史は「唯一絶対のものではない」。
    だからこそ本書だけで日本の近代史が理解できるわけではない。ただし、歴史を学ぶ上での入口になるような気がする。自虐的な歴史観ではなく、著者の定義する自慰的な歴史観も学びその上で自分の頭で考えなければならない。

  • 図書館
    挫折

  • 近現代史(江戸~現代)までを様々な視点から書いている。
    今までの日本史の復讐になった。

  • 著者の専門は中国思想史。日本史が専門でないためか、肩ひじ張らない文体でわかりやすく書かれている。過去の歴史を自虐史観として批判する人たちは、自分たちの先祖が悪人ではなかったという証拠を集めて精神的に安心したいだけであるとの主張はもっともだと思う。日露戦争までの近代の前半期を良い時代とする司馬遼太郎の歴史観を誤りだとする主張にも同感できる。ただ、当時の世界情勢や日本人が置かれていた立場(があったからこそ、日本人はそう行動したはずだという意味で)が伝わってくるほどの内容ではないので、歴史の流れを理解するには物足りなかった。

    明治維新の後、清を中心とした国際秩序を守ろうとした朝鮮王国は日本との通交を拒絶した。征韓論を主張する西郷などは下野したが、2年後の明治8(1875)年には朝鮮に軍艦を派遣して挑発し、日朝修好条規を締結させた。1894年に朝鮮国内で東学(甲午)農民戦争が発生し、これを鎮めるために清が軍隊を投入すると、日本も対抗して出兵したために日清戦争となり、戦闘は朝鮮国内で行われた。明治28(1895)年の下関条約によって清は朝鮮の独立を認め、朝鮮王国は大韓帝国に改められた。

    日露戦争後のポーツマス条約によって日本は朝鮮を保護国とし、統監府を置いて長官に伊藤博文が就いた。伊藤が韓国人によって暗殺されると、明治43(1910)年に韓国を併合した。

    第一次世界大戦(1914〜1918年)の終結後、アメリカのウイルソン大統領は民族自決を提唱した一方で、ドイツが持っていた山東省の権益は日本が21カ条の要求に基づいて引き継いだ。1917年にはソビエト連邦が誕生したため、日本は革命政府をつぶすためにシベリアに出兵し、ソ連も日本国内の共産主義者を増やす工作をして大正11(1922)年に日本共産党が組織された。大正14(1925)年に成立した治安維持法は、共産主義者の運動を取り締まるためのものだった。蒋介石による中国統一の機運が高まると、関東軍は昭和6(1931)年に満州事変を起して十五年戦争が始まった。

  • 高校生に対して話しかけている設定の近現代史だけど、大人が読むにも差支えない。
    教科書のような歴史の単なる記述ではなくて、筆者の考えがきちんと表現されている。
    非常にわかりやすくて、歴史が苦手で前提知識も危うい私でも楽しく読めました。

    日本が起こした戦争についての日本に対する厳しい見方は賛否両論あると思うが、あとがきでしっかりと、これは無数に存在する歴史観の一つで正しい近現代史を主張したものではない。と書かれているところには好感を持てる。

  •  日本の近代はいつから始まったのか?東アジアへの侵略を行った責任は誰にあるのか?という問いに基づき、父が娘に語るという体裁で、1トピックにつき5~6ページで書かれている。この分量から分かるように、それぞれに詳細が語られるわけではない。だから、日本の近代史を詳しく知る役には立たないかもしれないが、大まかな流れは知ることができる。

     1つめの問いに対し、著者は寛政の改革からと答える。一般的にはペリー来航からという解釈がなされると思うのだが、明治維新が比較的すんなりと進んだ背景には、寛政の改革で実施された教育政策があると説くのだ。
     忠義という概念を定着させることにより、表面的には諸侯や直参が将軍に対して仕える構造を強固にした一方で、将軍ですら天皇に仕える構造を持っているのだということを衆目に明らかにしたという。それにより、大政奉還という制度の素地を意識にしみこませていったらしい。

     2つ目の問いに対しては、途中まで著者の意図を誤解していた。明治維新の元勲たちや高等遊民のような知的エリートたちが主導する歴史という視点で語ろうとしているかのように感じ、違和感を覚えていたのだが、結論はその逆だった。
     柳田國男の"常民"という概念を利用し、普通に生きる人々が作り出す流れを読み取って、彼らの民意を反映してエリートたちが政権運営をしていったことを、吉野朝を正統とする政府見解などが決定されていく様を事例に挙げながら説いていく。

     歴史というものは自分たちだけで紡ぐものではなく、自分たち以外の国との関係を考慮する上で初めて意味があるものになる。その際には、見たくない事実でも直視しなければならない。そして、歴史は普通の人々が積み上げていくものなので、誰かに責任を押し付けることはできない。
     まさにこれは、著者が娘に伝えたいことなのだろう。そして、いまの国会運営や国民へのアピールの仕方を見るにつけ、類似点を感じずにはいられないことでもある。

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著者プロフィール

1962年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科教授。中国思想史。『儒教の歴史』(山川出版社、2017年)、『近代日本の陽明学』(講談社、2006年)、『宋学の形成と展開』(創文社、1999年)、『中国近世における礼の言説』(東京大学出版会、1996年)、『中国思想史』(共著、東京大学出版会、2007年)、ほか。

「2021年 『東アジアの尊厳概念』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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