日本二千六百年史

著者 :
  • 毎日ワンズ
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901622349

感想・レビュー・書評

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  • 右翼思想家として知られる大川周明が日本史を解説している本。本書は、昭和14年にベストセラーとなったものの復刻版。大川周明は日本精神の復興を唱えていた思想家である。曰く、日本精神の特徴で、最も著しいのは、外来の思想や文明に正しい方向を与えることであり、それが出来るのは、日本民族が正しき理想を抱くが故である。この理想を把持してきたからこそ今日がある。改革が叫ばれる時、国民的精神が衰弱し頽廃すると、善なるものの力が弱まって、悪なるものが跋扈する。この悪を打ち破るには、日本の本来あるべき理想を認識することが必要になる。なぜならば、各々の国は、国家の成り立ちが異なるので、外国を真似しても、木に竹を接ぐような改革に終わってしまうからだ。つまり、自国の善を以てしか自国の悪を打ち破ることはできない。だからこそ、真の改革のために、日本精神を復興させなければならない。大川はこのような認識の基に日本の歴史を体系的に解説している。古今東西の宗教や思想に造詣が深かった著者の視点は、平成の現代でも簡単に切り捨てることはできないと思った。いま一度読まれるべき書であろう。

  • 日本の通史書としては価値を認めるが、現代で積極的に薦めるべき理由もないような気がする。私も含め戦前のアジア主義に興味のある人間向けだと思う。

  •  本書は昭和14年に著された国史である。序で大川氏は国史の意味、国史を学ぶ意義を以下(一部抜粋)のように述べられています。
     
     「さて日本歴史は、日本の国民的生命の発現である。この生命は、肇国このかた一貫不断の発展を続け、日本国民に周流充実して今日に及んでいる。故に日本に生まれし一切の国民は、皆なこの生命を自己の衷に宿している。吾らの生命の奥深く探り入ればそこに溌刺として躍動する生命がある。この現実の生命を、時間秩序に従って認識せるものが取りも直さず歴史である。かくて歴史とは、自我の生命を、時間秩序に従って組織せる体系に他ならぬが故に、日本歴史を学ぶことは、日本人の真個の面目を知ることである。」

     本書全体がこの精神に則り、単なる事実乃至は事実と考えられる事柄の羅列に留まらず記述された歴史全体が生命を与えられた壮大な物語として完結しています。

     尚、本書は初版出版(昭和14年7月)後に国体明徴運動盛んなりし時代背景にあって「国体違反」や「不敬」等の批判があり一部削除改訂された後改訂版(昭和15年9月)が発行されています。本書の内容はその初版の文章が原則そのまま載せられており(2008年出版に際し初版と比較し一部表現の改訂があると明示されていますが、その改訂箇所部分は明示されていません)、昭和15年の改訂版により削除・訂正された文章の部分は傍線を引いて明示されています。

     この昭和15年改訂版における削除改訂部分はそのほとんどが皇室に関わる描写(主に、例え事実であったかもしれない事柄と判断するに足る事象であっても、威厳を損ないかねない描写に対する部分)、皇室に対し敵対したと判断しても致し方ない歴史的人物に対するプラス面の評価を与える描写部分に集中しています。ただ、本書最終章の30章(当時における現代史とでもいうべき位置づけ)における削除改訂箇所はややその方向性が違っており、厭戦気分を助長しかねない表現が削除改訂されていると思います。

     大川周明氏はイコール右翼として位置づけられている方も少なからずいるかもしれませんが、本書を読むと寧ろ、愛国を大前提にした左翼ではないかとさえ考えても違和感がありません。日本のカタチ、国体に対する肯定感は揺ぎ無いものを感じますが、一つ一つの事柄に対する科学的(合理性・客観性)視座には確固としたものが感じられるからです。また著者が日本で始めてコーランの全邦訳を出版した事跡等からも伺われますが、日本人と宗教との関わりに関する部分の描写にも多くが割かれており、歴史的に各時代において日本人にどのような宗教や道徳がどのような影響を与えてきたか、それによってどのように変遷してきたか、その方面からの分析も見所です。

     本書全体としては、現代人の目から観ても差ほど眉間に皺を寄せるような突飛な歴史解釈は目に付きません。概ね史実として定着している事柄で占められています。寧ろ現代巷に流布している歴史書のほうが眉間に皺を寄せるべき書が少なからずあるという事実に気づかせてくれる方向性にあります。

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著者プロフィール

1886年、山形県生まれ。戦前の代表的な思想家。1911年、東京帝国大学文科大学(印度哲学専攻)卒業。1915年、日本へ亡命してきたインド人ヘーラムバ・グプタと出会い、インド独立運動に従事。19年に満鉄入社、同社の東亜経済調査局、満鉄調査部に勤務。同年、北一輝、満川亀太郎らと猶存社を結成する。20年に拓殖大学教授に就任。25年、北、満川、西田税、安岡正篤らと行地社を結成。1932年、五・一五事件に関与したとして禁固5年の判決を受ける。37年に出所すると、日中戦争から日米戦争へと向かう時代のなかで、アジア主義、日本精神の復興を訴え、世論に大きな影響を与えた。日本思想界の象徴であり、その影響力の大きさから、戦後、その著作の多くがGHQによって発禁とされた。また、東条英機らとともにA級戦犯として起訴されるが、精神疾患を理由に不起訴となる。晩年はコーランの全文翻訳を成し遂げ、日本のイスラム研究に大いに貢献した。1957年に死去。著書に『宗教の本質』『日本文明史』『日本二千六百年史』など多数。

「2018年 『大東亜秩序建設/新亜細亜小論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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