鬼降る森

著者 :
  • 幻戯書房
3.60
  • (2)
  • (3)
  • (4)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 33
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901998079

作品紹介・あらすじ

山や川の掟を破り「鬼八」の伝説を奪ったのは誰だ。大宅賞作家のはるかなる故郷への旅。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ただその雰囲気に惹かれて、いつかは行きたいと思っていた高千穂だったけれど、その前にこの本が読めて良かったと思った。
    故郷、そこに帰る意味とか、あまり場所に執着しない私には馴染みのない感覚だったけれど、本当は皆持って生まれた故郷への思い、どこかは分からないけれど帰りたいと思っている場所があって、私はもしかしたら高千穂を、そのような場所の象徴として捉えているのかもしれない。

    日本神話からそこはかとなく漂う血生臭さというか…人間の醜さが浮き彫りになる純粋さが、この本を読んで感じられました。

    鬼、神楽、祭り子。
    来たるべきときに、必ず高千穂に行こうと思う。

  • 天孫降臨の地、神話の里として知られる高千穂出身の著者が、天孫族の視点ではなく彼らに敗れた者たちとその末裔の視点から、神話やこの地に伝わる鬼伝説を読み解いていくエッセー。

    第二章までの、すっかり呆けてしまった祖母が「わたしを高千穂に連れてってくれんね」と高千穂にいながら高千穂を求めるところは涙を流しっぱなしだった。高い山と深い谷に囲まれた高千穂も時代の流れには逆らえず、山を切り開かれ道路を通され結果湧き水も枯れ「高千穂」ではなくなってしまったのである。
    実際に高千穂に行ってみると、旅行者から見ればまだまだ山深い自然の地なのだが、この本を読むと一昔前の高千穂はそんなものではなかったことがよくわかる。
    山と谷と川にすっかり隔絶され、「失われた世界」を彷彿とさせるような独特な世界だったのである。

    さて、高千穂は神話の里であり神々に由来する様々な場所や物が多くあるのだが、それにもかかわらずこの本では日本神話の神々、天孫族は端的に言えばワルモノである。その代わり天孫族に退治されたとして伝わる鬼、鬼八が先住者で後からやってきた天孫族と争って負けた哀れな敗者として好意的に描かれている。
    これは意外な解釈であり感心した。少々こじつけ感があるし、至る所に出現する「恨」の概念は首を傾げたくなるものだったが、それにしてもあの高千穂で反天孫族視点の物語が語られるのは面白い。

    ちなみにこの本は、以前高千穂に旅行した際に出会った人々に本が好きだと話したところ、皆口を揃えて「それなら高山文彦さん知っているだろう、鬼降る森の」と言われたことをきっかけに買い求めた。不勉強な私は著者のこともこの本のこともその時まで知らなかったのだが、この作品と出会えたのが現地の人々の薦めだというのはなんだかあたたかい心持がする。

  • 宮崎高千穂岩戸神話は、実は地元の鬼伝説を住民による創作であったとして現代を生きる者へのメッセージを感じ取る本です。
    貧しく虐げられた生活から脱出することもできない人々の苦心が感じられます。

  • 2010/5/22購入

  • 鬼八!

  • 作者は、本当の高千穂を探し、山や谷を歩き、過去を歩き、鬼八に出遭う。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

1958年、宮崎県高千穂町生まれ。法政大学文学部中退。2000年、『火花―北条民雄の生涯』(飛鳥新社、2000年)で、第22回講談社ノンフィクション賞、第31回大宅壮一ノンフィクション賞を同時受賞。著書に『水平記―松本治一郎と部落解放運動の100年』(新潮社、2005年)、『父を葬(おく)る』(幻戯書房、2009年)、『どん底―部落差別自作自演事件』(小学館、2012年)、『宿命の子―笹川一族の神話』(小学館、2014年)、『ふたり―皇后美智子と石牟礼道子』(講談社、2015年)など。

「2016年 『生き抜け、その日のために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高山文彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×