LLブックを届ける―やさしく読める本を知的障害・自閉症のある読者へ

  • 読書工房
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902666205

感想・レビュー・書評

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  • 今、本が届いていない子どもたちに、本を届けるために
    出版社にできること。の、ヒントがたくさん書かれている本だった。

    「わかりやすい文章の書き方」という章を新聞記者の野沢和弘さんが書かれているが、知的障害を持つ方とのやりとりについても丁寧に紹介されていた。
    少し本の趣旨とは離れるが、知的障害を持つ方が犯罪被害にあった場合にお話を聴く際の注意にもつながると感じた。大切な視点だ。

  • YAへのLLブックの必要性 児童書からの橋渡し
    オランダのやさしく読める基準 一ページあたりの行数が多すぎない 文字が大きく、余計な装飾がない 文章が明瞭、単純、直接的 テーマは読者に関心のあるもの ストーリーがわかりやすい 登場人物は二三人以内 時系列にそって展開
    わかりやすく情報提供すること=本人が自分で決められるようになること

    わかりやすいお知らせを作る 文字を12〜14ポイントに 具体的な日常語を使う 一文を短く 漢字にはルビ イラストや写真を入れる 情報量を盛り込みすぎない レイアウトをみやすく、空間のゆとりを持って ゴシック体

  • LLブックやマルチメディアデイジーのほか、知的障害者や学習障害者の有効な資料について詳しく述べられていて、ぶっくるの巡回や配本に役立つ話が多い。

  • 本書は、「LLブック(やさしく読める本)」を、
    知的障害や自閉症のある人へ届けたいと
    考えて活動している人たち(15名)の
    思いと実践をまとめたものである。

    「LLブックという考え方」「LLブックを作り提供する活動」について、
    さまざまな事例を紹介し、それらを基に今できること、
    これからすべきことを提唱している。

    LLは、スウェーデン語のLattlast(aにはウムラウトがつく。)の
    略である。

    LLブックは、わかりやすく書かれた本であるが、
    幼児や子供向けのものではなく、
    青年、成人という生活年齢に合った内容が、
    読むことが苦手な人のために読みやすく書かれた本である。

    この「生活年齢に合った内容」というところがポイントである。

    なぜなら、知的障害や自閉症のある人たちが
    平等に読書の機会を得ることができない状態にある原因のひとつは、
    「生活年齢と知的年齢の差が歳を重ねるとともに大きくなるため、
    読める本と読みたい本が一致しなくなる」からである。

      生活で身につけてきたことは多く、
      恋愛への興味も当然あるでしょうし、
      テレビで見たスポーツや歌、旅行などにも関心があるでしょう。

      恋愛小説、スポーツ選手や試合の情報、
      旅行記などが読みたいとしても、
      彼らが自分で読んで理解できるように書かれた本が
      見つからないという問題が起こります。

      (p.9)

    そして、もう一つの理由は、
    「読書する機会や環境が貧困であること」である。

      私たちは、図書館や書店、インターネットなどから好きな本や
      必要な本、雑誌を選び、借りたり買ったりして読みますが、

      知的障害や自閉症の人の中には、
      図書館や書店へ一人では行けない人や、
      行ってもどうすればいいのか分からない人、
      本を選べない人がいます。

      また、コンピュータの操作ができない人も多くいます。

      彼らには、わかりやすい本を薦めたり、
      内容を理解するために助言してくれる人、読んでくれる人、
      図書館や書店へ行って利用の仕方、
      本の買い方を援助してくれる人が必要です。

      (p.9)

    知的障害や自閉症のある人たちには、LLブックと、
    そのLLブックに結び付けてくれる人の存在が必要ということである。

    本書は、次の5章と巻末資料から構成されている。

    1 はじめに
    ・本書を出版した目的やその背景にある課題、
     表題にあるLLブックという図書の解説

    2 ヨーロッパから世界へ
      -やさしく読める本の出版と図書館サービスの潮流
    ・海外で取り組まれているLLブックや読書権の保障のための活動の報告
    ・スウェーデンのやさしく読める図書センター、
     オランダの公共図書館の事例、
     「世界のバリアフリー絵本展」

    3 どうなっている? 知的障害や自閉症の人にとっての読書環境
    ・日本における知的障害や自閉症のある人の読書環境の実態
    ・本人たちの読書へのニーズ
    ・公共図書館における障害者サービスの変遷

    4 読書環境を改善するための取り組み
    ・日本で始まっているLLブックの制作やわかりやすい情報提供、
     読書を推進するための活動の報告
    ・サポートセンター、施設、特別支援学校、公共図書館の取り組み

    5 わかりやすさを支援する方法
    ・読みやすくわかりやすい本や新聞を制作するための具体的な方法
    ・マルチメディアDAISYの学習障害や知的障害のある人たちによる活用事例
    ・読みやすい文章とはどのようなものか、その書き方、
     写真・絵・シンボルの利用のしかた

    巻末資料
    ・おすすめの本
    ・LLブック・マルチメディアDAISY図書リスト

    特に興味深かったのは、
    読書経験や本についての本人たちへのインタビュー(p.90~p.99)と
    通所施設における絵本の読み聞かせや紙芝居の実演の実践
    (p.158~p.173)と
    知的障害のある人への図書館サービス(p.196~p.214)である。

    私は、マルチメディアDAISYの普及に関わっているのだが、
    利用する人の前ではなく、パソコンの前で仕事をしてることが多い。

    旅立たせたDAISY図書たちが、
    実際どのように読まれているのかは大いに気になる。

    ひとりの本の虫として、DAISYにこだわらず、
    どんな本が愛されるのか、どうしたら届くのかもまた大いに気になる。

    本に対する各人の好みには個性があり、その反応の仕方もそれぞれ。

    障害のない人なら当たり前のこのことが、
    相手が障害のある人と言うだけで、一瞬、忘れそうになる。

    でも、ねっこは、おんなじなんだということを
    この本は思い出させてくれる。

    椅子をそろえた客席には座らなくて
    自分の世界に入って聞いていないようでも、
    好きなお話には、自分なりの方法で好きを表現する。

    読み聞かせの途中でやってきて、
    はじまりの合図に使うコンガを鳴らしに来ちゃうのだって、
    彼女が、今日何度目かの『まゆとおに』を気に入っている証拠だったりする。

    『はらぺこあおむし』が好きという子も、何人も登場する。

    『はらぺこあおむし』の本を見せると個別学習の時間だと分かって、
    自分で図書館に行くようになり、好きな本がどんどん増えた子もいる。

    『赤いハイヒール~ある愛のものがたり~』は、
    スウェーデンで出版されたLLブックで、
    知的障害者をおもな対象としてつくられた
    ヤングアダルト向けの写真絵本である。

    この本のマルチメディアDAISY版は、
    32画面あり、再生に20分近くかかる作品なのだが、
    墨田区立図書館でこのDAISYを見た知的障害の方は
    みんな最後まで見てくれたそうで、
    半数以上の方は真剣にパソコンに見入って
    物語を楽しんでくださったそうである。

    繰り返すが、知的障害や自閉症のある人たちには、
    LLブックと、そのLLブックに結び付けてくれる人の存在が必要である。

    これは車軸の両輪なのである。

  • 知りたい情報が具体的に得られた。

  • 学習障がいや知的障がいなど、読むことにハンデのある人のためにわかりやすく書かれた本についての紹介や、実際の支援方法などについて書かれている。

    わたし自身、知的障がいの人と関わりのある仕事に就いたので、興味深く読んだ。

    難しい話題を難しくいうよりも、簡単にわかるようにいう方が創造的だ、きっと。
    オリジナルの小説作品とか、もっと出版されたらいいなぁと思う。

  • Lättlästについてそれこそ分かりやすく書かれた本。
    知的障害・自閉症のある読者を視点に書かれているが、
    ヨーロッパの現状(特にスウェーデン)がよくわかる。

    研究に必要なところだけを拾い読みしていったが、
    時間ができたら、他の部分も読みたい。

  • 知的障害や自閉症の人などが読みやすくわかりやすい本の紹介やどういった文章、絵、写真が知的障がい・自閉症の人達にわかりやすいかなど
    参考になることが多い。
    他にも個別の読み聞かせ、知的障害者への図書館サービス、移動図書館を実行する方法など。

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著者プロフィール

びわこ学院大学教育福祉学部教授,博士(教育学)

「2023年 『仲間と いっしょに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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