何も共有していない者たちの共同体

制作 : 野谷 啓二 
  • 洛北出版 (2006年2月発売)
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  • レビュー :11
  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903127026

作品紹介・あらすじ

 
すべての「クズ共」のために

どこから来たかではない
なにができるかでもない

私たちと何も共有するもののない――人種的つながりも、言語も、宗教も、経済的な利害関係もない――人びとの死が、私たちと関係しているのではないか?

何かが一人の官能の共犯者から
別の共犯者へと伝わる。
何かが理解されたのである。
共犯者の間で使われるパスワードが
認識されたのだ。
あなたを同じ仲間の
一人の共犯者に仕立てる何かが
語られたのだ。
ケツァール鳥、野蛮人、原住民、
ゲリラ、遊牧民、モンゴル人、アステカ人、
スフィンクスの。

 「侵入者」では、他者性――私たちと対面するときに、私たちに訴えかけ、私たちに異議を申し立ててくるもの――の輪郭を描いている。
 「顔、偶像、フェティッシュ」では、真の価値はなぜ、私たちが共有しているものではなくて、個々人を個別化し、彼または彼女を互いに他者にするものの方にあるのかを説明する。
 「世界のざわめき」が示そうとしているのは、言語とはたんに、私たちの経験を同等で交換可能なものとして扱えるように平準化する、人間の約束によって制定された一つのコードではなく、むしろ、自然のざわめき――動物の、最終的には、存在し反響するすべての物のざわめき――から生じるものと考えられるべきだ、ということである。言語というコードを鳴り響かせるとき、私たちは、人間の解読者とだけではなく、自然界が奏でる歌、不平、雑音とも意思を疎通させているのである。
 「対面する根源的なもの」では、語られる内容よりも、私がその場に存在して語ることの方が本質的となるような状況を検討する。
 「腐肉の身体・腐肉の発話」は、ある特殊な言語状況で生まれる拷問を扱っている。その犠牲者は、彼または彼女が語り、信じたことのすべてが嘘であり、自分は真実を語ることができないと無理矢理に自白させられてしまう。
 最後に、「死の共同体」は、人が死にゆく人と形づくる共同体を考察している。

何も共有していない者たちの共同体の感想・レビュー・書評

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  • 松岡正剛×武田隆の対談で、武田氏が引用していた。

    「自分の感受性のなかにだけある力、他の誰にでもできないように愛し、笑い、涙を流す力への関心は、世界中の裏道や小路に、自分のキスと抱擁を待っている人びとがいるという確信、そして自分の笑いと涙を待ち望んでいる湿地や砂漠があるという確信においてのみ可能となるのである」という一節のように、インターネットの世界には、このロマンが大事だと思うんです。

    ジョーゼフ・キャンベルなら「そして、孤独だと思いこんでいたのに、実は全世界が自分と共にあることを知るだろう。」

    読んでみたい(20130726)。

    読み終わった(20130824)

    ・クロード・レヴィ=ストロースは『野生の思考」のなかで、アマゾンの先住アメリカ人が自分たちの環境に関する厳密に経験的な表象を精巧に作り上げていたことを明らかにした。彼らは、風聞やおおよその知識と、有効な知識とを周到に区別する方法をとった。環境に存在する自然物質や生物の種、その特性や用途に関する彼らの識別眼のほうが、現代の私たちの生物学や動物学、薬学のデータがもつものよりも、往々にして、ずっと包括的だった。アマゾンの先住民が作り上げた表象は、観察し検証する際に経験的精密さを厳しく追及するという点で、私たちのものと同等であった。彼らの手にした実際の表象はただ、認識の面で立ち入ることのできた領域が限られていたことと、調査と実験に使う道具が技術的に限られていたことによって制限されていただけである。

    ・古代ギリシアの通商港湾都市に異邦人がやってきて、ギリシア人に「どうしてそのようなやり方をするのか?」と尋ねたとしよう。人間の集団が独自性を築き上げた社会であればどこであれ、この問いにたいする答えは、昔も今も変わらず、「私たちの父祖がそうしなさいと教えたからだ。私たちの神々がそうあるべきだと命じたからだ」というものである。ところが、ギリシア人が、そうした先祖や神々を共有しない異邦人にも受け入れられる理由―明晰な精神の持ち主であれば誰でも受け入れられる理由―を与え始めたとき、何か新しい事態が誕生したのである。こうした理由を与える言語行為は制約である。このように回答する者は、自分の発言に縛られ、発言の理由を与える約束をし、さらにその理由にたいする理由を与える約束をしていることになる。彼は自分の発言の責を負うのだ。

    ・西洋で合理的な倫理学について最初の論文を書いたアリストテレスは、勇気をすべての美徳の最初にあげた。それはたんに、等しい価値をもつ様々な美徳のリストの最初に来るというだけではない。勇気は超越的な美徳なのであり、すべての美徳の可能性の条件なのである。というのも、勇気が無ければ、正直であることも、寛大であることも、友人であることも、あるいは愛想よく会話することすらできないからだ。そして、あらゆる勇気は、評判、仕事、財産、命を失う危険を覚悟して行われる行為なのである。

    ・何を語るかは、結局のところ、ほとんど重要ではない。きみはどんなことでも口走ってしまうだろう。たとえば、「大丈夫だよ、お母さん」と。きみはこんなふうに言うことは愚かなことだと知っている。母親の知性に対する侮辱ですらあることも分かっている。母親は自分が死ぬということを承知しているし、きみよりも勇敢なのだから。母親はきみが言ったことを責めたりはしない。結局、何を言うかは大して重要なことではないのだ。要請されていたのは、何かを語るということだけであり、それは何であっても良かったのである。きみの手と声が、彼女が今しも漂いゆく、何処とも知れぬ場所に付き添って伸ばされること。きみの声の暖かさとその抑揚が、彼女の息が絶えようとするまさにその時に、彼女のもとに届くこと。そしてきみの目が、何も見るものがない場所に向けられている彼女の目と出会うこと。このことだけが重要なのである。
    語ることと語られた内容のあいだに裂け目が開いてしまうような、こうした状況を知らない者はいない。語るということ―これが本質的で絶対に必要なことだ―が、語られたことから切り離されてしまう状況、語られたことの方は、もはや要求されておらず、ほとんど必要とされてもいない状況を。

    ・トマス・クーンは、新しい科学革命はすべて、同じ自然と空の配置を見る新しい概念上の方眼なのではなく、新しい地球と新しい空が目に見えるようになるゲシュタルト変化だと述べている。

  • 難しかった、のでほとんど理解できてないけど、すごく興味深い内容。また再読(リベンジ)したい。

  • 同一性、均一化を目指す現代に対する疑問。個性や地域らしさを出せる雑音はあってもいい。それによって他者性を感じられる。

    その人の役割やポジションによって語られるべき何かが存在する。既に文献にそのようなことは語られているにもかかわらず。結局、話の内容ではなく、誰が話すか。

  • ノイズの中からあなたの顔が弁別される。

  • コミュニケーション成り立たせるの成立するノイズが、
    共同体。

  • タイトルが気になる一冊。

  • 見知らぬ誰かが目の前にいて、たとえ何も共有していなくても、いのちといのちとして共鳴を感じることがある。
    「生きることは共鳴することである」という一節が、僕の暮らしの深層で、いつも響いてます。

  • 再読

  • 『信頼』ですっかり虜になってしまった作家、
    アルフォンソ・リンギスの作品。読後、また書きます

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