歌集 食卓の音楽

  • 六花書林 (2011年9月1日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784903480589

感想・レビュー・書評

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  • ブクログの皆さまこんにちは!
    今年も1年間ありがとうございました。
    年の最後に杉崎恒夫さんの第一歌集『食卓の音楽』からとびきり抒情溢れる歌をお届けします。

    昨年の歳の瀬もやはり杉崎さんの『パン屋のパンセ』でしたが今年はこちらにしました。

    短歌を読み始めてまだ間もない私ですが、杉崎さんの歌は明るくてロマンに溢れるものが多いと感じています。
    歌人の中でも異色な存在であられる気がします。

    杉崎さん御自身も、この歌集で御自身の歌を
    ○毒のないぼくの短歌とよくなじむ信仰心のうすいマシュマロ

    と詠ってらっしゃいます。
    三鷹の天文台にお勤めだったという杉崎さんの歌を私のセレクトで申し訳ありませんが厳選してお届けさせてください。

    それでは、皆さまよい新年をお迎え下さい。




    ○風かげの岬を覆う水仙の香はたちのぼる歓声となる

    ○簡潔なるあしたの図形 食パンに前方後円墳の切り口

    ○ほどほどに仕合せと見ゆる夫婦いて展望台この行き止まり

    ○街頭に雨光るとき喚声を抑えて並ぶ夏の果実ら

    ○膨れゆく硝子の火玉 ラプソディ・イン・ブルー吹く硝子工

    ○うしろでに図書館の扉しめるとき冷んやりと昏き八月の森

    ○くだものの皮ほぐれつつくだものの芯にサティのオルゴール鳴り

    ○山荘のあしたの卓の葡萄酒にフランスの地名ひとつ覚えぬ

    ○晩夏(おそなつ)の西日さし入る店頭にどれも発熱の黄なるオレンジ

    ○どどと吹く風の又三郎むさし野の雑木林にどんぐりこぼす

    ○山宿に夕餉喰みつつものがなし西脇順三郎こんにゃくの詩

    ○立ち読みしサン=テグジュペリのひと言が心に残り本屋をいずる

    ○ケンタッキー・フライドチキンの風見鶏冬づく山が遠く澄みゆく

    ○<雨だけが崇高である>とうたうとき二月の雨はきんいろに降る

    ○まだ硬き柿の青実に跳ねかえる音は<革命>のクレッシェンド

    ○少しさむい春の夜だからワグナーのトランペット群ぎんいろがよい

    ○星空へ紛れこませるわが神話チェロ座・ピアノ座・ヴァイオリン座

    ○かなしみよりもっとも無縁のところにてりんごの芯が蜜を貯めいる

    ○画多き鬱という字はどこからも付きくずせない 花どきの雨

    ○わが生の終わりにちかく挿しはさむカデンツァのごとき淡き仕合せ

    ○舞う雪のみずからたのし平均律クラヴィーアソナタ空に満ちみち

    • まことさん
      アールグレイさん。こんばんは♪

      アールグレイさんのところは、武蔵野ですね。

      私のところは、サン=テグジュベリでもなく、西脇順三郎でもなく...
      アールグレイさん。こんばんは♪

      アールグレイさんのところは、武蔵野ですね。

      私のところは、サン=テグジュベリでもなく、西脇順三郎でもなく、三好達治です。
      「太郎を眠らせ
      太郎の屋根に雪降りつむ
      次郎を眠らせ
      次郎の屋根に雪降りつむ」
      (だったっけ)
      今日、午前中生協さんが、最後の配達に来てくれたあとから、雪になりました。
      三好達治、まだレビューしてなかった。来年したいけど、本棚のどこに眠っているかわからない、岩波文庫。

      今年はコメントたくさんありがとう!
      こちらこそ、来年もよろしくお願いします。
      2022/12/29
    • 5552さん
      まことさん、こんにちは。

      わー、杉崎さんの短歌、好きなんです!
      『パン屋のパンセ』をあまり行かない図書館で借りて、返して…。
      こち...
      まことさん、こんにちは。

      わー、杉崎さんの短歌、好きなんです!
      『パン屋のパンセ』をあまり行かない図書館で借りて、返して…。
      こちらの歌集も読みたいと思っていたので、まことさんのレビューはありがたい!!
      『食卓の音楽』というタイトル通り、音楽の歌が多いですね。
      楽しげな音、悲しい音、色とりどりの音が歌から聴こえてくるようです。

      まことさん、今年はお世話になりました。
      来年もよろしくお願いします。
      それでは、よいお年を☆彡
      2022/12/30
    • まことさん
      5552さん。こんばんは♪

      昨年も、年末に、5552さんからも、コメントいただいたのは、よく覚えています。
      今年もありがとうございます。
      ...
      5552さん。こんばんは♪

      昨年も、年末に、5552さんからも、コメントいただいたのは、よく覚えています。
      今年もありがとうございます。
      嬉しいです。
      この歌集は、音楽に関する歌も多いけれど、天文関係の歌が「星の食卓」の章にまとめて収録されているのが、特色みたいです。
      章が、全部○○の食卓という食卓で、まとめられています。
      5552さんも、短歌を詠まれているのですよね。
      素敵な短歌が、できるといいですね。
      私は読むのがやっとです。

      こちらこそ、今年もお世話になりありがとうございました。
      来年も、よろしくお願いいたします。
      よい、新年をお迎えください。
      2022/12/30
  • 杉崎恒夫さんの歌は、読んでいて心地よいなぁ。
    好きなのだろう言葉たちを組み合わせて作られる美しい世界観が好き。
    杉崎さんには、こんな風に世界が優しく見えていたのかな。読むと、澄んだ空気を感じて、清らかな気持ちになる。
    いつまでも読んでいたくなってしまう、魅力的な歌ばかりだった。

    以下、お気に入りの歌を。
    ○星空へ紛れこませるわが神話チェロ座・ピアノ座・ヴァイオリン座
    ○立ち読みしサン=テグジュペリのひと言が心に残り本屋をいずる
    ○街路樹の木の葉ふるときソラシドレ鳥刺の笛がきこえませんか
    ○彗星のマップ述べつつ超楕円軌道に朝のパン屑こぼす
    ○つつかれてヨーグルトに沈む苺 やさしき死などあるはずもなく

  • ティ・カップに内接円をなすレモン
            占星術をかつて信ぜず

    予告なく耳に入りきし
       〈悲しみの三重奏曲〉
           ラフマニノフのきずぐち

    垂直にひばりの声をふらしくる
           空はガラスの天球儀 青

    夏蝉も終りて候う月の国
           静かの海へあてたる手紙

    かなしみは生命の錐子午線を
           越えて傾くオリオン星座

    かなしみよりもっとも無縁のところにて
         りんごの芯が蜜を貯めている


    わたしにはとても好きな現代歌人が2人いる。
    2人とも、もうこの世にはいない。
    歌だけが残ってる。


              
           

    • 地球っこさん
      しずくさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます♪
      わたしの好きな現代歌人は、
      杉崎恒夫さんと笹井宏之さんです(*^^*)
      しずくさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます♪
      わたしの好きな現代歌人は、
      杉崎恒夫さんと笹井宏之さんです(*^^*)
      2018/11/28
    • しずくさん
      笹井さんの歌集「てんとろり」「ひとさらい」も良いですよね。彼の夭折は何とも言えないものがありました。
      笹井さんの歌集「てんとろり」「ひとさらい」も良いですよね。彼の夭折は何とも言えないものがありました。
      2018/11/30
    • 地球っこさん
      しずくさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます(*^^*)
      私は杉崎さんも笹井さんも、亡くなられ
      てからお二人のことを知りまし...
      しずくさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます(*^^*)
      私は杉崎さんも笹井さんも、亡くなられ
      てからお二人のことを知りました。
      もうこれ以上、新しい歌が生まれないん
      だ……と、何だか悔しいような悲しいよう
      なそんな気持ちになったのを憶えてます。
      それでも、この世に残った素晴らしい歌
      は人から人へ伝わっていくことで、いつ
      までも生き続けていくのでしょう。
      それって、すごいことですよね。
      2018/11/30
  • 【内容】神様に愛されたゆえに長生きできないはずだった少年が老成できたら、という感じの歌集。
    【感想】好きです。この人の世界。気に入ったのを書き抜いていくとえらい数になったんで、著作権とか考えて自分しか見えないことになってるらしい「メモ」の方に入れました。

  • やっぱりこの人の短歌すきだなあ、もっと読みたかったなあ、と思いながら読んだ。パン屋のパンセに比べて、一首のなかに情景の切り替わりがあるものが多く散文的なものもあった。うまく言えないのだけど、どこか日記的というか、事実に忠実に表現しているから余計な要素もある感じ??がする。いや好きなんだけど...

    少し長めに生きたることも葡萄パンにまじる葡萄のごとき確率

    くだものの皮ほぐれつつくだものの芯にサティのオルゴール鳴り

    ほんとうに、なんだか冬の星空みたいなツンとする爽やかな綺麗さがあって、綺麗な世界観だな〜と思う。誰かが寄せていた解説のなかに、この人は「短歌は明るくつくれ」という言葉に忠実につくっている、と書いてあったけど、たしかに、灯りのような言葉だと思う。

  • 図書館より。

    表紙がかわいくて、若い方なのかと思ったら、
    もう亡くなられた高齢の方で、しかも初版は20年以上前だった!
    二重にびっくり。

    ***

    手写本の楽譜のような町並に珈琲としるせし扉ありたり

    うしろでに図書庫の扉しめるとき冷んやりと昏き八月の森

    予告なく耳に入りきし<悲しみの三重奏曲(トリオ)>ラフマニノフのきずぐち

    たんぽぽの絮が着地をするように旅先の珈琲店に這入る

    わがうちに不意に傷みを喚びおこす人間不信いっぽんの針

    海月など砂に打ちあげそくそくと膨れくる潮、海の心臓

  • 短歌は、まだまだ読み解くのが私には難しく、??と思うものもあったが、理解できるものに出逢うと、思わず笑ってしまったりしていた。

  • 杉崎恒夫氏の詩集。新装版です。
    以前読んだ『パン屋のパンセ』が「いい匂い」のする詩集だったので、こちらの本も買ってみました。恒ちゃまの御本やっぱり可愛いです。

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