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本 ・本 (781ページ) / ISBN・EAN: 9784903532448
作品紹介・あらすじ
本書はシュンペーターの数少ないが特異な伝記である。狭い意味でのシュンペーターの経済思想を扱うものではなく、波乱に満ちた人生と、様々な分野を統合して資本主義を徹底的に追求し理解しようとするシュンペーターの正にすさまじい生き方を描いている。本書の特徴は、シュンペーターが資本主義の本質を革新(イノベーション)としてとらえ、終生その研究に没頭し多くの大著を著したその過程と、その間に彼を支え続けた女性や同僚達について詳しく書かれていることである。また、著者はシュンペーター自身だけでなく親しかった人達の日記や手紙、写真等を豊富に引用して、シュンペーターが生きた時代をリアリティをもって詳細に描き出している。著者は、たいへんな知日家だった最後の妻のエリザベスが、アメリカによる対日経済制裁は日本の戦線を拡大すること(真珠湾攻撃)を予告し、そのためFBIからスパイとしてつけねらわれたことも取り上げている。シュンペーターの資本主義の捉え方は、戦後の日本の経済発展、今日のアメリカ資本主義の停滞と没落、中国など新興国の発展、そして今後の日本の方向を考える上で役立つだろう。著者のトーマス K.マクロウは1985年に歴史部門でピューリツアー賞を受賞している。また原著書はヘイグリー経営史最優秀出版賞、ジョセフ・J・シュペングラー経済学史賞、国際シュンペーター学会賞を受賞した好著である。
感想・レビュー・書評
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331.72||Mc
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イノベーションの元祖シュンペーター。
本書の中でも言及されているように彼は同時代の経済学者であるケインズに比べ死後ほとんど評価されていなかった。
それが世界的に長引く不況と政治の混乱とが相まって彼がしきりに唱えていた「企業家精神」や「創造的破壊」といった概念が注目を浴びている。
彼の言う企業家とはただの経営者ではなく、古い常識を破壊し革新を起こす存在だった。どんな大企業や資本家であっても未来永劫存続するということは歴史的にもありえず、常に新しい理念を持った企業家が現れ続けるという資本主義の力を信じていた。
彼は不況の短期的な回復の為に政府の公共投資を推奨し、政治家に人気を獲得する為の口実を与えたのは重い功罪であるとしてケインズを強く批判している。
実際、戦後ケインズ政策は各国に強い影響を及ぼしこれによって政府は巨額の財政赤字に陥った。これは日本において特に顕著である。
本書は彼の経済学的な概念だけにとどまらず人間関係に関しても記述しているが、特に印象的だったのは最後の妻エリザベスの存在である。
彼女自身も経済学者であり日本を研究対象にしていた。
彼女は日本の満州侵攻は日本が課されている厳しい貿易条件によるエネルギーの不足や日本人の移民受け入れ拒否などの理由から一定の正当性があるとし、そのような政策の一端を担っているアメリカに対しても疑問を呈している。驚くべきことは、もし日本が戦争において降伏か玉砕覚悟の一斉攻撃かの選択を迫られた場合、その国民性から後者を選択するだろうと真珠湾攻撃が行われる前の段階で予想していることだ。
その結果は周知のとおりである。 -
シュンペーターに関する大著。
彼が思った以上に偉大で、経済学者から崇拝されていた事は分かったけど、ちょっと長過ぎて飽きた。
でも彼が、無類の女好きだったことは注目に値する。